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投資手法VIX

2008/9/20
VIX(恐怖指数)から日経平均先物でひと儲け!?

最近、投資家の注目を集めているVIX(恐怖指数)。これは、米国S&P500において将来予想される株価変動の激しさ(ボラティリティ)を数値化し、取引対象にしたものです。相場が急落すると予想された時に数値が上昇するため、投資家心理を表す「恐怖指数」とも呼ばれています。計算式は大証のページで解説されています。

これほど注目されている指数であれば、この数値変動を利用して日経平均先物で利益を出す事ができないものかと調査してみました。調査対象期間は1996年から2008年9月12日までの約12年半です。

まず最初に、VIX数値の前日比変動割合を利用して、翌日の日経平均先物の値動きに影響を与えているのかを調べてみました。

これは以前に投資戦略でご紹介しました「米国相場逆張り法」は使えるか?「米国相場逆張り法」は今年も健在か? のように、始値で行き過ぎが出現し、終値で修正される現象が発生し、日計り逆張り投資が有効なのではないかと予想したためです。

それでは横軸をVIXの前日比変動、縦軸を翌日の日経平均先物の当日比変動(終値/始値)とした場合の散布図を見てみましょう。もし逆張りもしくは順張りが有効であれば、近似線が左右どちらかに傾くはずです。



残念ながら全然ダメでした。グラフ右上のR2の値を見て頂くと、VIXの前日比変動は、翌日の日経平均先物の当日比変動(終値/始値)に与える影響として、9E-5、つまり、0.009% しか説明力を持たないことを意味しています。

因みに、ダウの前日比変動と翌日の日経平均先物の当日比変動(終値/始値)の散布図をご覧ください。左上から右下へ近似線が傾き、逆張り可能であることが示されています。グラフ右上のR2の値は0.0054 、つまり 0.54% の説明力を持っています。



それでも、たった0.54%か... と感じる方が多いかも知れませんが、投資の世界では1%近くもあれば、全然悪くない数値だそうです(土屋賢三さんのエンジュクセミナーより)。確かにこの方式で十分な利益が出せる事が分かっています。更にフィルター等を加えると効率も上がります。今回はダウとの関連のお話ではありませんので、ここまでにしておきます。

次に行ったのは、VIXの数値が急激に上昇/下落した時だけに仕掛けるアウトライヤー狙いです。過去20日間で、前日比変動が標準偏差から大きく外れた時にだけ仕掛けるようにしました。

結果、当日決済、5日後決済、20日後決済 と見てみたのですが、プラスとマイナスが打ち消し合い、順張りでも逆張りでも全く利益が出ませんでした。もうグラフにするのも無残なだけなので、省略します。

そして次に行ったのは、VIXの平均移動を利用するパターンです。VIXが上昇トレンド中は株価が下落、下降トレンド中は株価が上昇の傾向にあるように思えたからです。

そこで VIX のトレンドが転換(平均移動の傾きがスイッチ)するときに売りと買いを逆転させるドテン売買を行った場合に利益率はどうなるのかを調べてみました。VIXが上昇トレンドに入った場合は買いを決済し、売りを仕掛けます。下落トレンドに入った場合はその逆です。

横軸を「何日の平均移動を採用したか」、縦軸を「ドテン売買した時の総利益」としたグラフです。



平均移動の日数が少ない場合は成績が安定していません。ぴょこんと跳ねて成績が良い15日平均移動を利用したい所ですが、オーバフィッティングのように思えますので、成績が安定していそうな110日の平均移動を採用することにしましょう。

今度のグラフは、110日の平均移動のトレンド変換で仕掛けた場合の、日々の利益を表したものです。途中の価格変動(ドローダウン)にも耐えられるかを見たいため、含み益の推移も含めています。



一応右肩上がりです。しかしドローダウンがきついですね。これを利用するにはかなりの勇気が必要です。あまりお勧めではありません。

最後は、もう単純にVIXがある値を超えたら、黙って買う作戦が有効か調べてみました。掲示板で線香さんがコメントされていたのですが、VIXが35を超えると政治的な動きがあり、それを期待するというものです。

そこでVIXの高値が35を超えたら、翌日の日経平均先物を寄付で買い、1週間後(正確には5営業日後)の終値で売った場合どうなるかを見てみました。サンデーポールソンよろしく、1週間内に何らか動きがあることを期待しています。

また、条件として以下を設定しました。VIXが恒常的に高値状態にある時に再度ポジションは組まないようにするためです。(9/27追記: 9/17日分の結果が出ましたので、それに合わせて修正しました。結論自体は変更していません)
  • 1度ポジションを取ったらそのポジションが解消するまで新規のポジションを取らない。
  • ポジション解消後、VIXが30を切らない限りは、2回めの新規ポジションを取らない。
VIX35超日 先物仕掛け日 5日後の利益
1997/10/30 1997/10/31 -2.54%
1998/8/27 1998/8/28 1.23%
2001/9/17 2001/9/18 -1.33%
2002/7/15 2002/7/16 -0.78%
2002/9/3 2002/9/4 3.19%
2007/8/16 2007/8/17 1.63%
2008/1/22 2008/1/23 2.99%
2008/3/17 2008/3/18 8.40%
2008/9/17 2008/9/18 5.93%
合計 18.72%

成績は6勝3敗でトータル18.72%の利益と出ました。 試行回数もかなり少ないですし、今年3月の成績が全体を引き上げている感じがありますので安定度は今一歩です。

しなしながら、今年は3回機会が訪れ、1月と3月時にはFF金利を0.75%の大幅下げ、今月は、不良債権の処理機関設立発表と、株式市場が動揺すると、1週間以内になんらかの政策が発動され、それに見合った成績が期待できそうです。

結論:
VIXが35を超えたら黙って買い。政治的な動きを期待して1週間後に売却する方法で利益が見込める。

こんな投資法をすると、政治やFRBの支援を期待に依存した「投資家のモラルハザード」だとも言われなくもないですが(笑)。

Special Thaks:
・線香さん
・eijiさん
・相楽さん


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編集後記(From the Editor)

調べ始める前は、日経平均先物の逆張りで利益が簡単に出せるのではないかと期待していました。しかし、結果を見て、そんなに上手く事は運ばないことを思い知らされました。

今回は通常利用できる投資法を生み出せませんでした。しかしながら、VIXは投資に使えないと結論するには早く、別の指数と組み合わせる事によって有効に働く可能性は大いにあると思います。

もしかしたら、オプションやFXで利益を上げる手法に利用した方が良かったのかも知れませんね。

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くれぐれも、自己責任の上で判断してくださいね!
GOOD LUCK!

参考: VIX(高値)と日経平均株価:

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