2005/6/12
公募・売出しなら貸借銘柄を狙え!
前々回
、
前回
と、立会外分売の投資戦略について、貸借銘柄を狙うのが良いことが分かりました。それならば、立会外分売の親分ともいえる、
公募・売出し銘柄についても、同じような戦略が成り立つのではないのでしょうか。
そんな単純な理由から、公募・売出し銘柄についても調べてみることにしました。立会外分売と違う点として、公募価格が決まった後に、2-3日間の応募期間があります。そして応募締め切り後、実際に株券が渡されるまでに、また数日間必要です。
(注意: 以上は松井証券の場合です。E*Trade の場合は、先に応募するため、ここで言う所の「応募期間」は、「購入意思決定期間」となります)
では立会外分売と同様に、公募で購入し、実際に株を売買可能な日(交付日)の始値で売った場合、一体どれくらいお得なのかを調査してみます。
調査範囲は、昨年、今年と、
「松井証券」で公募・売出しが行われた全39銘柄
を対象にしています。立会外分売と同様に、公募当時の「信用外」「信用」「貸借」の各銘柄に分けて、調査してみました。
パーセント表示は、公募価格と比べたものです。マイナス表示は、公募価格割れになります。
コード
銘柄名
当時
応募最終日
交付日始値
交付日終値
8962
日本レジデンシャル投資法人
信用
1.72%
#N/A
#N/A
2389
オプト
信用
0.80%
-2.63%
-6.64%
2775
日本レストランシステム
信用
2.94%
1.43%
1.27%
8473
ソフトバンク・インベストメント
貸借
3.24%
5.92%
6.32%
7873
アーク
貸借
8.22%
5.26%
7.95%
4970
東洋合成工業
-
7.12%
4.15%
4.15%
8963
東京グロースリート投資法人
信用
1.78%
0.22%
-0.04%
9760
進学会
貸借
4.12%
4.73%
3.03%
2400
メッセージ
-
0.91%
-4.82%
-6.08%
6670
MCJ
-
0.93%
-15.97%
-14.23%
9757
船井総合研究所
-
2.42%
1.45%
-3.38%
2392
セキュアード・キャピタル・ジャパン
-
0.20%
-6.37%
-6.59%
8960
ユナイテッド・アーバン投資法人
信用
6.27%
-0.75%
-0.75%
2337
アセット・マネジャーズ
貸借
20.01%
22.77%
33.00%
3730
マクロミル
-
0.35%
-6.96%
-3.00%
8924
リサ・パートナーズ
-
0.24%
-5.47%
-9.39%
2766
日本風力開発
信用
4.68%
1.10%
0.08%
8910
サンシティ
-
0.48%
-13.00%
-9.52%
2762
三光マーケティングフーズ
-
1.04%
-4.81%
-3.64%
7619
田中商事
-
4.32%
2.09%
1.94%
9650
テクモ
貸借
0.09%
-3.56%
-3.13%
8902
パシフィックマネジメント
信用
4.60%
2.02%
4.81%
6594
日本電産
貸借
0.26%
0.90%
-0.46%
2309
シミック
信用
7.54%
6.83%
6.83%
2914
日本たばこ産業
貸借
0.12%
0.00%
0.00%
2788
アップルインターナショナル
-
0.78%
-6.25%
-0.94%
2388
ブレインナビ
信用
3.87%
3.09%
0.95%
6305
日立建機
貸借
-9.27%
-5.34%
-9.27%
1766
東建コーポレーション
信用
0.01%
-2.73%
-4.36%
8907
フージャースコーポレーション
-
2.95%
1.39%
0.97%
7447
ナガイレーベン
信用
1.22%
-0.74%
-2.13%
4753
ライブドア
信用
2.52%
1.58%
1.90%
4355
日本ロングライフ
信用
7.83%
4.18%
9.11%
9021
西日本旅客鉄道
貸借
0.00%
0.49%
-0.97%
8830
住友不動産
貸借
8.19%
5.80%
7.64%
7873
アーク
-
11.21%
5.71%
7.88%
6877
OBARA
-
1.69%
2.18%
-0.79%
8953
日本リテールファンド投資法人
貸借
5.97%
5.36%
5.97%
2353
日本駐車場開発
信用
1.21%
-0.41%
-3.91%
9843
ニトリ
貸借
5.41%
4.84%
9.69%
応募最終日
交付日始値
交付日終値
交付日翌日始値
信用外(14銘柄)
2.47%
-3.33%
-3.05%
-2.77%
信用(13銘柄)
3.48%
1.01%
0.55%
1.16%
貸借(12銘柄)
3.86%
3.93%
4.98%
4.93%
見事に、立会外分売の傾向と一致しています。
交付日の始値で売却する場合、「貸借銘柄」が抜群の成績を収め、「信用銘柄」はそこそこ、「信用外銘柄」は、応募するだけ損します。
しかしながら、「貸借銘柄」でも公募価格割れを起こしている銘柄が存在します。テクモと日立建機です。これらを避け、更に効率を上げる方法がないものでしょうか。
そこでじっくりと表を見つめていると、ありました、ありました。
応募締切日の終値が、公募価格より 2% を超えているか否かで、その後に大きな差が出ています。
応募最終日
交付日始値
交付日終値
交付日翌日始値
信用外2%以上(5銘柄)
5.60%
2.96%
2.31%
2.56%
信用2%以上(8銘柄)
5.03%
2.43%
3.03%
3.54%
貸借2%以上(7銘柄)
7.88%
7.81%
10.51%
10.18%
「貸借銘柄」は、ずば抜けた成績になります。「信用外銘柄」「信用銘柄」も値下がりはしますが、そこそこ良い結果が出ています。
事実
:
公募・売出し銘柄について、立会外分売同様な傾向が出ている。「貸借銘柄」の成績が良く、「信用銘柄」はそこそこ、「信用外銘柄」は応募するだけ損である。
応募日最終日の終値が公募価格より 2% 以上良い場合、成果が明らかに良くなる。
もうこれで今回の結論に結び付けても良いのですが、前回同様に、公募に外れた場合も考慮し、何か戦略が生まれないか、公募・売出し 近辺での株価の推移をチェックしてみます。
まずは、公募価格決定日近辺からです。公募価格決定日の終値の株価を1とした場合の、株価の推移を見てみます。市場の影響を排除するため、全ての銘柄をTOPIXで差分調整しています。
「貸借銘柄」は、価格決定日に向け、下落が激しくなります。需給悪化の懸念の売りと、信用売りが重なるためだと思われます。価格が決まると、その反動のためか、上昇傾向になります。「信用外銘柄」は、下落が激しいですね。
次に、交付日の終値を1とした場合の株価の終値の推移を見てみます。市場の影響を排除するため、全ての銘柄をTOPIXで差分調整しています。
交付日までは、「貸借銘柄」を除き、下落傾向なのですが、公布日を過ぎてしまえば、そこからは余り変化はありません。逆に「信用銘柄」は徐々に上昇に向かっています。
事実
:
価格決定日に向けて、「貸借銘柄」は、株価が下落傾向にある。但し、逆日歩は考慮していない。
交付日を過ぎれば、全ての銘柄が安定する。「信用銘柄」については徐々に上昇傾向となる。
以上のことから、結論を導き出してみましょう。
結論
:
公募・売り出しでは、立会外分売同様に、貸借銘柄を狙うべし。立会外分売同様に、「信用売り」方による買戻しも期待できる。
信用銘柄を狙っても良いが、あまり期待しない方が良い。信用外銘柄は狙ってはいけない。応募するだけお金が逃げていく。
全ての銘柄について、応募最終日に、公募価格を 2% 上回っている銘柄は、応募しても良い。貸借銘柄であれば、なおさら良い。
貸借銘柄について、公募日に向けた下落を狙って、「信用売り」するのも良い。但し、逆日歩に気をつけるべし。
立会外分売と同様に、とにかく、「貸借銘柄」だけにターゲットを絞り込むのが良いようです。
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編集後記(From the Editor)
今回の公募・売出しのアイデアもまた、山下さんから頂きました。どうもありがとうございます。
多くの方は、「貸借銘柄」の公募・売出しの場合、当選すると、利益確定のため、先に当選株数分の「信用売り」をして、交付日当日は「現渡」することが多いのではないかと思います。
今回の戦略を見る限り、公募価格の2%を上回っている場合、逆日歩覚悟の「信用売り」はしなくても良いことになります。面白いですね。
もうすぐ、貸借銘柄
ネクシーズ(4346)
の公募・売り出しがあります。いい感じで値下がりしていますので、とりあえずは応募してみようと思います。但し、購入単価が低いのが気になります。とりあえずは、応募締切日(購入意思確認最終日) の株価と相談しながら、最終的にどうするか決定しようかと思っています。
今回も利用データを公開します。よろしければ、ご利用下さい。
公募・売出し 調査データ
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くれぐれも、自己責任の上で判断してくださいね!
GOOD LUCK!