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騰落レシオの研究

2012/3/12
騰落レシオ過熱は1ヶ月後に要注意

相場の上昇と共に話題となっている「騰落(とうらく)レシオ」。騰落レシオで130から140くらいに到達すると、相場に過熱感があり、売りタイミングと言われることがあります。しかしこれは本当でしょうか? 早速確かめてみましょう。

まず騰落レシオの計算方法ですが、東証一部の銘柄についての「○○日騰落レシオ」の場合、以下の数式となります。一般に「騰落レシオ」といわれているものについて、○○には25が入ります。

(○○営業日間、毎日の値上がり銘柄数の総計)÷(○○営業日間、毎日の値下がり銘柄数の総計)×100

もし値上がり銘柄数と値下がり銘柄数が同じなら値は100になります。値上がり銘柄数の方が多いと値は100を以上になります。値下がり銘柄数の方が多いと値は100を切ります。

ここから早速調査...といきたい所ですが、騰落レシオを研究対象にしようとすると、騰落レシオ自体の欠陥にぶつかります。それは何かと言えば、大きい方の値は無限大の値まで取りえて、一方で小さい方の値は0で止まることです。

これで何が困るかと言えば、100を境に数値の重みが異なるのです。

たとえば値が"140"と、値が"60"。どちらも100から40離れていますが、100以下で140(=14/10*100)に相当するのは、"60"ではなくて"71"(=10/14*100) です

論より証拠といいましょうか、1997年2月3日から、2012年3月9日までの約15年分について、ヒストグラム(度数分布)をご覧下さい。山が左側に歪んでいます。これは値が0までしか取りえないためです。



この歪みを気にせずに、値が100以上だけを対象にして調査してしまうのも一つの手です。しかしどうせなら騰落レシオの値全部を対象に調べる方が効率的で便利です。

そこで、騰落レシオに対して以下の調整を加えてみます。

(1) 100より小さい値の場合は、分母と分子を入れ替えて、マイナスの値を取るようにする。
(2) 値上がり銘柄数と値下がり銘柄数が同じなら値は0とする。

この調整により、今までの騰落レシオの数値がそのまま使えて、かつ0を基点として値が左右同じ意味を持ちます。ちょっと違う点は100を超えた場合の騰落レシオは100を引いています。つまり、騰落レシオ140は40と表記されます。

調整後のヒストグラムをご覧ください。かなりまともになりました。まだ左に偏っていますが、これは調査期間中(約15年分)は「騰落レシオが100より小さい時が多い」という日本市場の姿そのものです。この値を使って調査を始めます。



まずは試しとして、対象期間中5日間の騰落レシオとその翌日の1日の株価の値動きの関係を見てみます。



グラフの表題に"5R1"と記載しています。この"5R1"の意味は「5日間の騰落レシオと翌1日分の株価の上昇率(翌日終値/翌日始値)との関係を散布図にしたもの」です。

もしグラフの表題が、"25R10"と記載している場合は「25日間の騰落レシオと翌10営業日分の株価の上昇率(10営業日後終値/翌日始値)とのとの関係を散布図にした」という意味です。

話が横道にそれました。"5R1"の上記グラフに話を戻します。

左上オレンジの枠の中を見ると、R2の数値が0.001とあります。これは5日騰落レシオが翌日の日経平均上昇率に影響する割合は0.001=0.1%であるという意味です。

これは「日々の5日間の騰落レシオで、翌日の日経平均の上昇率を予想しようとしても無駄です。全く関係ない(0.1%だけの影響)のですから」という意味です。

では一般的に使われる25日の騰落レシオと日経平均の上昇率との関係を見てみましょう。10営業日後と25営業日後の上昇率の両方を見てみます。




やっぱりダメですね。日々の騰落レシオとの関連はありません

それなら騰落レシオが130や140を超える時のような、極端な場合だけならどうでしょうか。確かめてみます。




少々面白い傾向が見えてきました。上昇する場合(0より上)は、その上昇率は限られている。下落する場合(0より下)は、その下落率は大きいのです。その点を注意しながら、もう一度見てみましょう。



更に詳しく見るため、株価上昇率のヒストグラムを掲載します。更にエクセルで自動的に算出してくれる基本統計量の値も掲載します。



25R25(130超)の上昇率 基本統計量
平均 -0.009920493
標準誤差 0.004823857
中央値 (メジアン) 0.004692519
最頻値 (モード) #N/A
標準偏差 0.056048154
分散 0.003141396
尖度 -0.198742036
歪度 -0.706670118
範囲 0.249568091
最小 -0.163586963
最大 0.085981128
合計 -1.339266504
標本数 135

これは一体何を意味しているのでしょうか? 基本統計量の数値から見えるのは以下の通りです。

平均 1回あたりの上昇率を平均すると-0.0099。つまり平均で1%程度の下落である。
中央値 小さい方から数えて、ちょうど真ん中の番号の数値は、0.004である。つまり上昇 or 下落 の2択の場合、上昇する方が多い。
最小 今までの最大の下落は、-16%である。
最大 今までの最大の上昇は、8.5%である。

要約すると、「25日騰落レシオが130を超えた場合、その25日営業日後の株価は、上昇していることが多い。ただし、下落した場合はその幅が大きくなる。その結果、平均すると-1%のマイナスである」。

つまりは、25日騰落レシオが130を超えた場合、翌日の始値に日経平均の売りを行い、25営業日後の終値で買い戻した場合、勝率は50%を切るが、1回あたりの勝ちが大きく、1回あたり 1%ずつ利益が出る。ということです。

結論:
騰落レシオが130を超えた場合「過熱感が出ている」というのは当たっている。上昇しにくく、下げる時は一気である。

もうズバリ、株価推移グラフを掲載します。25日騰落レシオが130または140を超えた翌日の始値を基点とした日々のグラフです。



グラフを単純に解釈すれば、25日騰落レシオが130または140を記録した後、その後1ヵ月間に再び130または140を超えることがなければ、その後の下落に気をつける必要があります。

Special Thaks:
・岡田さん

・山下さん

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編集後記(From the Editor)

騰落レシオは調べればすぐに何かが分かる... と気軽に調査を始めてみたら、その計算方法のクセ(0から無限大の値を取りうる)に引っかかって、対応策を考えるのに時間を費やしてしまいました。

2012年3月9日段階での25日騰落レシオは140を超えています。すぐに株価が下がるというわけではありませんが、この値を維持できなければ、その1ヶ月後あたりは気を付ける必要がありっそうです。

今回、騰落レシオが極端に低い(徹底的に売り込まれた)場合を調べていないのですが、データがあるので、近いうちにでも発表したいと考えています。

P.S.
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くれぐれも、自己責任の上で判断してくださいね!
GOOD LUCK!

おまけ:
25R25が140超の場合です。平均-1.7%と130超よりも更に売りの効率いいですが、なかなか出現しません。ただ2012/3/9日段階で143ですから、まさしく今がその時期です ^^)。ただ、上昇と下落の確率は5分5分です。



25R25(140超)の上昇率基本統計量
平均 -0.017341763
標準誤差 0.006686742
中央値 (メジアン) -0.000143052
最頻値 (モード) #N/A
標準偏差 0.04775289
分散 0.002280338
尖度 0.21910433
歪度 -1.004213781
範囲 0.201483283
最小 -0.152073856
最大 0.049409427
合計 -0.884429924
標本数 51


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