2011/1/10
真夜中は別な顔 - オーバーナイトファクター
土屋賢三さんのブログ
を読んでいる方や、
そのセミナー
に参加した方であればお聞きになった事があるかと思いますが
「オーバーナイトファクター」
つまり
「夜越しに利益の源泉」
が存在するとの指摘がありました。
それなら早速ということで、TOPIXについて
「寄付に買い、大引で売却」
した場合」と
、「大引に買って、翌日の寄付に売却」
した場合の利益の累積額について調べてみました。
ちょっと注意が必要なのは、TOPIXの寄付は気配値でも値が出てしまうため、実際の売買とずれが出てしまう可能性があるということです。また、配当落ちについても考慮していません。それは誤差の範囲ということで気にせずにグラフにしてみます。
しかし見事なまでに昼と夜とでは真逆ですね。とても偶然とは思えません。相場を見始めて10年にもなりますが、こんな単純な現象を全く知りませんでした(苦笑)。
実際に個別株も同じ状況なのかを見てみます。日本を代表するような銘柄選択として、トヨタ自動車、ソニー、三菱UFJFG(2001/4/2〜)をピックアップし、それぞれについてみてみます。
素晴らしい...。TOPIX以上に明確に出ています。真夜中は別な顔ですね。
トヨタ自動車における1回の利益率は約0.07〜0.10%で、100万円あたり1000円程度。証券会社の手数料を考えると利益はほとんど出ません。
もしかしてCFDをうまく利用できれば利益が出せるかも。ただ、儲けが出ない停滞期も長いので、ずっと続けることは困難な気がします。
ところで一体なぜこんな現象が起きるのでしょうか? これは日本だけの現象なのでしょうか? ちょっと寄り道でアメリカ市場と中国市場に調べてみました。
アメリカ市場はS&P500(SPY)と、マイクロソフト(MSFT)、アップル(AAPL)です。株式分割は考慮していますが、配当落ち分は考慮していません。また測定開始時期もそれぞれ違う事にご留意下さい。
(注: 本当は指数そのものでやりたかったのですが、S&P500やFTSE100は、基本前日終値=翌日始値のようで、オーバーナイトファクターの計測ができなかったのです)
S&P500を見る限り、多少日本と同じ傾向があるようです。個別ではマイクロソフトは全くだめ。アップルは不安定ですが、株価がうなぎ上りになってからは、ほぼオーバーナイトファクターのみで上昇分の説明できてしまいます。
次に中国市場です。こちらは最近は逆ですね。
再び国内に目を向けてみます。現在TOPIX100に採用されている銘柄全てについて個別に調べてみます。
ここから先はエクセルで扱えるデータ量を超えてしまうので、評価用に頂いている斉藤正章さんが作成したシステムトレードツール「
システムの達人
」を使って調査してみます。調査範囲は1990年3月1日から2011年1月7日までです。
「寄付に売って、大引けで買い戻しした場合(デイトレード売り)」と「大引けに買って、翌日の寄付に売却(オーバーナイト買い)」
した場合の、1トレードあたりの平均損益上位10銘柄について掲載します。合計損益は毎回100万円を投資した場合(単元株価は無視-手数料も無視) です。(自分で設定条件をちょっとミスりまして、株価が100円未満の場合はトレードしていませんのでご承知下さい(汗))
20年間デイトレード売り結果
コード
銘柄名
合計損益
平均損益
8002
丸紅
5755369
1155
8001
伊藤忠商事
5318311
1050
5201
旭硝子
4853493
959
1605
国際石油開発帝石
1070753
918
9437
エヌ・ティ・ティ・ドコモ
2651033
898
6902
デンソー
4376099
877
9531
東京ガス
4305383
845
6326
クボタ
4104281
823
8306
三菱UFJフィナンシャル・グループ
1921802
811
3382
セブン&アイ・ホールディングス
1034375
804
20年間オーバーナイト買い結果
コード
銘柄名
合計損益
平均損益
9984
ソフトバンク
6300432
1577
8411
みずほフィナンシャルグループ
2901980
1531
8002
丸紅
7373958
1480
8001
伊藤忠商事
7098533
1401
6902
デンソー
6125655
1228
6301
小松製作所
5781689
1145
6326
クボタ
5674866
1138
9437
エヌ・ティ・ティ・ドコモ
3251576
1101
5201
旭硝子
5553041
1097
5713
住友金属鉱山
5413662
1062
どちらの上位にも丸紅、伊藤忠商事、デンソー、エヌ・ティ・ティ・ドコモ といった銘柄が登場します。しかしながら正直言って共通点が良く分かりません。
もう少し詳しく、過去約10年間と過去約5年間の上位ランクについても調べてみました。掲載します。
10年間デイトレード売り結果
コード
銘柄名
合計損益
平均損益
9437
エヌ・ティ・ティ・ドコモ
2757015
1035
5201
旭硝子
2597065
975
6752
パナソニック
2361919
886
6753
シャープ
2358393
886
8001
伊藤忠商事
2305817
865
6501
日立製作所
2156065
809
6701
日本電気
2094480
786
7203
トヨタ自動車
2020864
758
7731
ニコン
2000112
752
6502
東芝
1985463
745
10年間オーバーナイト買い結果
コード
銘柄名
合計損益
平均損益
8411
みずほフィナンシャルグループ
2901980
1531
5201
旭硝子
3695974
1386
5713
住友金属鉱山
3645526
1368
8001
伊藤忠商事
3643867
1366
5406
神戸製鋼所
2484561
1344
6902
デンソー
3010821
1129
5405
住友金属工業
1962572
1099
6988
日東電工
2799317
1051
6301
小松製作所
2762250
1038
8002
丸紅
2645047
1025
5年間デイトレード売り結果
コード
銘柄名
合計損益
平均損益
6988
日東電工
1751330
1220
8411
みずほフィナンシャルグループ
1581918
1121
8267
イオン
1471045
1026
9022
東海旅客鉄道
1441311
1036
5406
神戸製鋼所
1434398
999
8308
りそなホールディングス
1419363
997
6753
シャープ
1379241
962
8604
野村ホールディングス
1359621
949
6501
日立製作所
1322405
921
9831
ヤマダ電機
1269415
886
5年間オーバーナイト買い結果
コード
銘柄名
合計損益
平均損益
5406
神戸製鋼所
2099443
1461
5713
住友金属鉱山
1985297
1384
6988
日東電工
1879694
1309
9831
ヤマダ電機
1868950
1304
6301
小松製作所
1713119
1196
7011
三菱重工業
1683441
1171
8058
三菱商事
1678626
1169
8031
三井物産
1649965
1151
6326
クボタ
1633541
1139
5401
新日本製鐵
1621453
1128
うーん、ますますもって分かりません(汗)。単なるベータ値が高いものが単純に上に行っているのか? 海外投資家の占める割合が多い銘柄がそう反応しているのか(アップルの上昇も海外投資家??)? どなたかこの暗号を解いた方はこっそり私にメール下さい(笑)。
ところでこの現象を投資にどう利用すればいいのでしょうか? 単純に考えられるのは、日本市場であれば、デイトレードは「売り」を主体にした方が、数日間のスイング投資の場合は、大引で買って寄付で売る方が多少有利ということです。
結論
:
日本市場の昼と夜は全く別な顔を持つ。デイトレードは売りを主体に、短期間スイングについは大引で買い、寄付で売る事にすれば、多少の有利さは出る。
これ以外にもいろいろな付随する投資法が考えられますね。この先は皆様の投資開発の楽しみとして残しておきましょう!?
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編集後記(From the Editor)
最初「
システムの達人
」をお借りした時には、イベント日を基準としたデータを扱えず、市場平均との差分を取ってファルファのみを抜き出すということもできないということで、どうしたものかと思っていました。
それでもいろいろといじってみると、エクセルでは実現が難しい「大量のデータの中から使えそうなものをピックアップする」や、ちょっとした予備調査として「自分のアイデアが通用するかとりあえず試してみる」ということに超威力を発揮することが分かりました。
今後も「エクセル+システムトレードの達人」でより面白い研究成果を公表できたらと考えています。
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くれぐれも、自己責任の上で判断してくださいね!
GOOD LUCK!
おまけ: 丸紅の昼夜要因。