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2008/2/3
3分でわかるリバモア投資法
- 大トレンドに乗る! -

1900年代の前半、4度の破産を経験しながら、その都度復活して大成功を収めた伝説の投資家「ジェシー・リバモア」。唯一彼自身の著書である「How To TradeIn Stocks by Jesse Livermore」が約70年の時を経て「リバモア流投機術」として日本語訳が発売されました。

私はこの本を読むまでは「リバモアは無謀ともいえる大賭けで成功を収めた人物」と思っていました。しかし、全く違っていました。最終的にはシステムトレード的な手法を用いていたのです。

この書籍、および彼の伝記的な小説「欲望と幻想の市場」は、多くの「マーケットの魔術師」と呼ばれる投資家から愛されています。そこで過去の偉大なる投資家リバモアの投資法から、今もなお何か学ぶ事ができるのではないかと思い、この本の内容を解析することにしました。

いきなり核心に突っ込みます。リバモア投資法について簡略化すると以下の通りです。
  1. 先導株に銘柄を絞る(相場をリードする業種の代表銘柄)
  2. その銘柄の状況判断(企業の業績、相場環境、需給)を行う
  3. 市場が動くまでじっと待ち続け、価格変動が本格的に始まる値段に達したら、順張りエントリーのトレンド狙いを行う。
  4. 自律的な反発・反落は気にせず、トレンドの最後まで粘って持ち続ける。
1.について、リバモアが書籍を書いていた時期の先導株とは、鉄鋼、自動車、飛行機、通信販売 との事でした。今の日本株だったらどれでしょうかね。取引高が大きい、銀行、電気機器、自動車、商社 が考えられますが、相場全体を先に引っ張るという意味では、不動産、海運、鉄鋼、機械 あたりなのかも知れません。

次に2.の状況判断ですが、意外とファンダメンタルズを重要視していたようです。また「欲望と幻想の市場」も読む限り、相場全体の雰囲気も見ていたようです。ここに関しては明確な記述はありません。我々には「四季報」がありますので、これと、相場全体の雰囲気を参考にするようなイメージで良いのかも知れません。

そして3.については、リバモア投資法の中核となる部分ですので、後でご紹介します。

4.については、ノーマルリアクションと呼ぶ小さな下落(出来高がしぼむ)は、正常であり、恐れてはいけない旨の記載があります。注意すべきは、それまでになかった「異常な値動き」があった場合とあります。システム的な記述としては「同一日取引における最高値から6ポイントの下落」(買いの場合)とありますが、このノーマルと異常の違いは、裁量に任されている面があります。

さて、3.の内容に入ります。売買ポイントを特定するには「リバモアメソッド」と呼ばれる手法で、株価を記録していきます。「チャート」ではなく「表」に株価を書き込んでいきます。

そして「ピポットポイント」というものを特定していきます。このピポットポイントとは、ざっくり言ってしまえば、チャート上短期の支持線、抵抗線にあたります(実際にはリバモアメソッドに沿ってピポットポイントを決定します)。

そして買いエントリーは、下記の図にあるように、2度の下落で作られた支持線(高い方の安値)から3ポイント以上上昇した場合に発動されます。つまり、底割れをしないことを確認してから買いに入ります。売りポイントはこの逆です




この逆の「支持線を3ポイント以上割ったら(底割れ)売り」「抵抗線を3ポイント以上突き抜けたら買い」といったボックス離れについても狙う記載もあるのですが、ルール化はされていません。こちらを狙うのはあまり本筋ではないようです。

仕掛けたにも関わらず、トレンドにうまく入らず、狙いが外れた場合のエグジットの判断ですが、「損切りポイントを明確に決めよう」とだけあり、具体的な数値には触れていません。

また、賭け金については「含み損状態でのナンピンは厳禁」「分散して掛け金を積み上げる」といった旨の記載だけがあります。

ここまで説明せずに何度か使ってきた「ポイント」とは一体何でしょうか? 書籍では30ドル以上の株価の銘柄であれば、1ドル=1ポイントとしているようです。

日経平均先物や日本の株価で。ポイントをどのように当てはめれば良いか? についてですが、日経平均先物では100円を1ポイント、最低売買単位が30万円を超える株については、1万円分が1ポイントとして良いのではないかと思います。こればかりは「決め」です。

ちょっと長くなりましたね。ここで買いの場合を例にして、手法をまとめてみましょう。
  • 先導株に狙いを定める
  • ファンダメンタルズ、相場環境を見極める
  • 買いピポットポイントが作成されるまでじっくりと待つ
  • ピポットポイントが作成された後、3ポイント上昇したらすぐにエントリー
  • 損切りポイントは事前に決めておく
  • 利が乗ってきたら賭け金を積む
  • ノーマルリアクションによる下落は気にしない。トレンドの最後に起こる異常な値動きが発生するまで粘る。
  • 異常な値動きが発生したら、利益確定
これだけだと実際の売買を行うには具体性に欠けるので、システム化しやすいように私が勝手にルール化します。以下は買いの場合のルールです。売りはこの逆になります。
  • 売買高の大きい大型株のみ狙う(ランキング上位の常連株)
  • ファンダメンタルズ、相場環境はとりあえず気にしない(値動きだけを捉える)
  • 買いピポットポイントが作成されるまでじっくりと待つ
  • ピポットポイントが作成された後、3ポイント上昇したらすぐにエントリー
  • 途中で賭け金を積み増すことはしない
  • 以下のどれかの条件に合致した場合、手じまいする
    - エントリーからマイナス3ポイント(損切り)
    - リマモアメソッドの上昇トレンド中にあって、高値-終値の値幅が、過去21日間(約1ヶ月)の標準偏差から3偏差を超える下落があった場合(※)、その翌日の始値で反対売買
    - リバモアメソッドの下降トレンドに入った場合
    - 売り側のエントリーの条件に合致した場合(ドテン)

    (※)標準偏差からの異常な乖離(マイナス側への急なボラティリティの増加)を算出することで、「異常の値動き」を数値化することにします。
このルールを株式分割後2005年1月からのソフトバンク(9984)と、2006年1月下旬からのソニー(6758)に当てはめてみました。

注意事項として、リバモアメソッドのルールが明文化されていない部分があり、その部分を私オリジナルで想定して補完しています。従って、人によって解釈が分かれる部分があると思います。

あまりにもサンプル数が少なくて(手作業なので結構時間がかかる&ケアレスミスしている可能性もあり)有効性を確認できたとはとても言えないのですが、使えそうな感じはします。

ソフトバンク(9984)
種別 エントリー エグジット  損益
日付 価格 日付 価格 理由
買い 2006年9月4日 2,195 2007年3月2日 2,765 急落 570
売り 2007年3月14日 2,830 2007年3月19日 3,030 損切り -200
売り 2007年4月6日 2,960 2007年9月7日 2,165 急騰 795

ソフトバンクは、年に1度程度の売買機会しかありませんでした(株価が3,000を割っているため、3ポイントではなく、2ポイントを利用しています)。トレンドに乗った場合の所有期間は半年程度です。

ソニー(6758)
種別 エントリー エグジット  損益
日付 価格 日付 価格 理由
売り 2006年4月28日 5,730 2006年10月27日 4,940 ドテン 790
買い 2006年10月27日 4,940 2007年3月5日 5,750 急落 810
売り 2007年3月14日 5,920 2007年3月22日 6,250 損切り -330
売り 2007年3月29日 5,920 2007年4月6日 6,220 損切り -300

こちらも売買機会は年に1度程度です。書籍には「そもそもやるべきトレードは年にたったの数回、おそらく四、五回しかないということである」とありますので、この位のエントリ数で構わず、もう少し対象銘柄を多く持てばいいのでしょうね。

この方法を使う場合の弱点は、買いエントリーしても上昇トレンドに入らず、また値が元に戻ってくるパターンです。こうなると損切りを繰り返すことになります。ブレイクアウトのブレイクしたらすぐに戻ってきた場合に似ています。

逆に長所は、トレンドに入ったら大きく値幅が取れることです。これもまた、ブレイクアウトに似ていますね。

更に2003年7月の大底以降の日経平均先物にも適用してみました。プラスはプラスでも、大きなトレンドを捉えている雰囲気が薄いです。まだまだ研究の余地はありますが、個別株の方が有効のような気がします。

日経平均先物
勝ち数 負け数 通算損益 平均利益 Profit Factor 損益レシオ
5 7 1,710 142.5 1.81 2.54

取引回数は少ないけれども、リバモアのように「トレンドを大きく取りたい!」という方は、一度手法を研究してみてはいかがでしょうか。ポイントの値を変更したり、エグジットの定義を変更したりして日本株に最適な場所を見つけるのも楽しいと思います。

結論:
年に数回程度のトレードで構わず、大きくトレンドを取りたい方は、リバモア投資法を研究する価値は十分にあり。

今日現在(2008/2/3)、ソフトバンクはちょうど買いピポット近辺にいます。私の記載表からは、2151円を超えると買いです。逆に1751円を切ると下降トレンドに入り、買いピポットは消滅します。

また、ソニーは、昨年5月以降、長らく上昇トレンドも、下降トレンドもない状態にあり、4750円以下(あとわずか!)になると下降トレンドに入ります。

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本を読まれた方へ:ナチュラルラリー、セカンダリーラリー といった用語が出てきますが、それを図にすると以下の通りです。ナチュラルラリーは自律反発、ナチュラルリアクションは自律反落といった表現に入れ替えると分かりやすいかも知れません。


参考書籍:


Special Thanks:
はぐれ雲さん

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編集後記(From the Editor)

この手法を掲載しようと思ったのは3週間前のことでした。いろいろ調査してみると奥が深く、なかなか結論までたどりつけず、ようやくここで公表できるまでになりました。多分、使った時間が一番長かった投資戦略です。

せっかくなので、ツチヤさんのセミナーで習った「正規化」の手法も使ってみました。こういった使い方はちょっと違うのかもしれませんが、異常値を見つけるのに都合がよかったのでアレンジしてみました。

今までイベント投資は超短期なものばかりでしたので、こういった長期的なものも組み合わせてみると、楽しみが増えていいんじゃないかと思います。

以下、勉強用にどうぞ。監修者の長尾さんのお話では、この当時の正式な株価の記録が、証券取引所にも存在していなないとのことでしたので、私の書き方が正しいのかどうか不安な所もあります。間違い点等見つけましたら、お知らせ頂けたらと思います。

リバモア手法の適用結果

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くれぐれも、自己責任の上で判断してくださいね!
GOOD LUCK!

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