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2005/9/25
外国人買いは上昇トレンドのサイン?

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郵政法案否決の時点から猛然と買い進まれ、今もなお日本株市場は上昇トレンドの中にあります。一体どこまでこのトレンドが続くのか、誰しもが注目しています。
この上昇の主役として注目されているのは「外国人投資家」です。2003年5月の「りそな」国有化決定からの上昇、2004年3月の猛烈な上昇、そして今回と、いずれも「外国人投資家」から始まったと言われています。
そこで今回は、この「外国人投資家」の買いが本当に株価上昇と密接に関っているのか、関っているのであれば、「外国人投資家」の動向を見ながら、どういった投資タイミングでの「売買」が考えられるか、そして今回の上昇トレンドがどこまで続くのか、といったことを考察してみましょう。
今回注目した指標は、東証が毎週発表している「投資部門別売買状況」です。東証、大証、名証の三市場合計の売買を発表しており、市場外取引も含まれるため、かなり正確に把握している数値です。毎週木曜日に前週の集計を発表しています。
この指標中の「外国人」による「買い越し、売り越し額」と、株価の関係をグラフにして、関連を確かめてみましょう。
グラフを作成するにあたり、「買い越し、売り越し額」について、絶対額で算出するのではなく、株価へのインパクトを考慮し「東証一部の時価総額の何パーセントに該当するのか」で数値化します。
つまり、東証一部の時価総額が100兆円の段階での1兆円の買い越し額と、400兆の段階での4兆円の買い越し額は、同じ1%
として数値化します。
では、外国人投資家が活躍を始めた 2003年以降からについて見てみましょう。右軸は%表示になっていますが、実際はベーシス(bps
= 0.01%)です。1% を 0.01% と読み替えて下さい。右軸の1% は、東証一部時価総額の
0.01% を「外国人が買った」ことを意味しています。
なんとなく傾向がつかめますが、週単位では細か過ぎるようです。そこで、株価の「週足」のトレンドを表すのによく利用される、13週と26週の平均移動を、外国人買い越し割合に適用し、グラフ化してみます。
かなり状況がはっきりとしてきました。グラフからいろいろと傾向が分かります。特に13週と23週の平均移動がクロスしている部分に注目し、超ベーシックな戦略である、「ゴールデンクロス買い」、「デットクロス売り」が結構当たっています(下図参照)。
また、2003年の大幅買い越し時から、買いは継続していたものの、実は下降トレンドに入っていて、今年の8月にようやく、13週平均移動が下降トレンドを抜け出したことが分かります。それと同調するかのように、TOPIXも上抜けしました(下図参照)。
こんなにも「外国人買い越し割合」と「株価」が密接に関っていると、この指標を無視するわけにはいかない気がします。
事実: |
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外国人買い越し割合について、13週と26週平均移動のゴールデンクロス、デットクロスとTOPIXの上昇傾向、下降傾向がある程度一致する。 |
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今年の8月に、13週平均移動の外国人買い越し割合は、下降トレンドを抜け出した。それと同期するように、TOPIXの株価も上抜けした。 |
しかしながら、ここで問題となるのは、東証から発表される「投資部門別売買状況」が、タイムラグとして約1週間遅れてしまうことです。グラフ上を見る限り、1週間程度はあまり問題ないようにも思えますが、できるだけ早く知りたいのが心情です。
そこで、毎朝に発表され、市場に大きな影響を与えている「寄付前の外国証券の注文動向」からある程度推測できないのか、探ってみることにします。
ここで問題となるのは、「寄付前の外国証券の注文動向」は、正式なものではなく、更に株数であるため、金額でどれだけなのかは分かりません。そこで本当に関連があるのか、ここ6ヶ月間の週別「寄付前の外国証券の注文動向」と「外国人買い越し額」について対比してみましょう。
週 |
寄付前の外国証券の
注文動向(万株) |
外国人買い越し額(百万円) |
2005年3月1週 |
-560 |
313,220 |
2005年3月2週 |
2,020 |
487,273 |
2005年3月3週 |
1,710 |
50,313 |
2005年3月4週 |
-2,270 |
4,488 |
2005年3月5週 |
-2,200 |
-4,544 |
2005年4月1週 |
-1,610 |
258,758 |
2005年4月2週 |
-5,860 |
-114,591 |
2005年4月3週 |
-6,590 |
-35,921 |
2005年4月4週 |
-1,190 |
-16,089 |
2005年5月1週 |
-2,720 |
39,911 |
2005年5月2週 |
-4,420 |
-32,178 |
2005年5月3週 |
-4,290 |
178,232 |
2005年5月4週 |
-3,710 |
-53,544 |
2005年6月1週 |
-280 |
14,332 |
2005年6月2週 |
60 |
-349,014 |
2005年6月3週 |
4,710 |
259,236 |
2005年6月4週 |
3,600 |
107,335 |
2005年6月5週 |
1,100 |
50,604 |
2005年7月1週 |
3,750 |
343,583 |
2005年7月2週 |
4,800 |
330,916 |
2005年7月3週 |
2,430 |
122,564 |
2005年7月4週 |
2,550 |
316,351 |
2005年8月1週 |
4,240 |
452,823 |
2005年8月2週 |
12,880 |
687,768 |
2005年8月3週 |
9,990 |
304,894 |
2005年8月4週 |
4,820 |
298,751 |
2005年8月5週 |
3,720 |
218,248 |
2005年9月1週 |
1,250 |
504,943 |
関係が、あるような、ないような。もう少し数学的に処理したい所ですので、2004年以降の「寄付前の外国証券の注文動向」と「外国人買い越し額」について、各週の値をプロット図にしてみます。
プロット図中のドットが、ある一定傾向にあれば「関連がある」と言えるのですが、残念ながら、ばらばらです。それでも傾向を抜き出してみると、ある直線上の近辺に集中しているとも言えます。
その直線は、下記の計算式で表すことがでます。
外国人買い越し額 (十億円) = 4.5 * 寄付前の外国証券の注文動向(千万株) + 12
つまり、ある週に「寄付前の外国証券の注文動向」が、合計1,000万株の買い越しであった場合、4.5
*1 + 12 = 16.5(十億円) = 165億円 の外国人買い越し額があると推測できます。
しかしながら、何度も確認しますが、プロット図を見る限り、誤差が結構あります。実際に使える数字なのかどうか確かめるため、実際の「外国人買い越し割合」と「寄付前の外国証券の注文動向からの推計値」の13週と26週の平均移動を比較してみます。
意外といい感じです。実際の移動平均(点線)と、推計値からの移動平均(実線)は似た傾向を示しています、ゴールデンクロスとデットクロスの位置もほぼ合っています。
そうとはいえ、1週間待てば正確な数字が出てくるため、長期的には合っていても、短期的には誤差が出る「寄付前の外国証券の注文動向」を利用する必要はなさそうです。
事実: |
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「寄付前の外国証券の注文動向」と「外国人買い越し額」については、短期的に見ればあまり関連がない。
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長期的に見れば、関連を見出すことができ、「外国人買い越し額 (十億円) = 4.5
* 寄付前の外国証券の注文動向(千万株) + 12」で表される。 |
以上の事実から、結論を導いてみましょう。
結論: |
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「外国人買い」と「株価」にははっきりとした関連がある。「外国人買い越し割合」の推移を見るとより理解できる。 |
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「外国人買い越し割合」の13週、26週平均移動のゴールデンクロス、デットクロスはかなり信用できる。
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9月の第一週段階(9/5-9/9)では、まだ上昇基調にあり、しばらく上昇が見込める。
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今後について、「外国人買い越し割合」が26週平均移動の4-4.5bps(約1,600-1,800億円)を上回っている段階では買い安心感がある。これを恒常的に切ってきた場合、逃げ体制に入ると良い。
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26週平均移動は変化することと、bps についても、その時の東証一部の時価総額に対する割合ですので、その金額が変化することをしっかり認識しておいてくださいね。
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編集後記(From the Editor)
今回の調査では、データの収集にはものすごく時間がかかりました。特に「外国人買い越し額」と「東証一部の時価総額」をマッチさせる部分は地道な作業でした。
もしこれで何も結果が出なかったら、「この調査時間と作業は一体何のためにやっているのだろう」と思いながら続けたのですが、結構しっかりした傾向が出て、ほっと一安心です。
ここで作図したグラフから、平均すれば、毎週常に4bpsを外国人が買っていることが分かります。つまり、100週(約2年)で、東証一部の
4% を外国人投資家が手に入れたことが示されています。ここまま行けば、50年で全部の株式が外国人に支配されますね(笑)。
私は前回、前々回とハズして、ほとんど曲がり屋と化していますから、「曲がり屋には向かえ」の言葉通りに、私の結論と反対方向に賭けるのも良いかもしれません(苦笑)。
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くれぐれも、自己責任の上で判断してくださいね!
GOOD LUCK!

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