2005/9/3
日経平均の新規採用、除外銘柄を推測する!
いよいよ9月は、年に一度行われる最も重要なイベント、「日経平均銘柄の定期入れ替え」の季節です。8月に新規採用となった
ファーストリテイリング(9983)
の株価動向を見ても分かるように、その影響力はすさまじいものがあります。
もし事前に
日経平均の採用銘柄と除外銘柄
がある程度分かり、事前に仕込むことができれば、発表当日に
「当たった場合のご褒美」
は、大きいものになります。
そこで今回は、日経平均の採用銘柄と除外銘柄について事前に予測できないか、調査してみることにします。
まずは日経銘柄の「銘柄選定ルール」をざっくり確認しましょう。正確なルールについては、
NIKKEI NET のページ
に記載があります。
選定ルール(ざっくり版):
東証第1部上場銘柄の中から高流動性銘柄群の450銘柄のうちから採用
高流動性銘柄群は以下を指標とする
1. 過去5年間の売買代金
2. 過去5年間の売買高当たりの価格変動率
450銘柄に入らない場合は必ず除外
上位75位以内は必ず採用
銘柄を6つのセクター(技術、金融、消費、素材、資本財・その他、運輸・公共)に分類し、セクター毎の妥当数を求め、不足しているセクターは、高流動性上位から採用し、過剰なセクターは、高流動性下位から除外する。
倒産や企業再編に伴う上場廃止などの「特別の事由による除外」がある場合、基本的に同じセクターから採用する。ただし、定期見直しに近接する時期の場合、定期見直し基準による入れ替え手続きの中に包含して補充銘柄を選定する。
この内容を考慮した上で、調査してみましょう。
まず問題となるのが「高流動性銘柄群の450銘柄」と「セクター毎の妥当数」の絞込みです。ここは以前
J_Coffee さんが調査した内容
に従うことにします。つまり、日経500(日経500種平均株価)で代用するのです。
日経平均と日経500は、多少違うルールで運用されているため、全く同じには扱えないのですが、両方共に出来高や売買代金を参考にしていることから、簡易手法としては優れていると思います。 高流動性銘柄群の450銘柄のほとんどは、この中に入っていると考えてよさそうです。
注意:
日経255採用銘柄にも関らず、日経500に採用されていない銘柄も、7銘柄あります。これらの銘柄は、除外対象になりやすいかも知れません。事実、
「森永(2201)」
や
「平和不(8803)」
を除外候補に挙げている予想者は多いようです。
コード
銘柄
1861
熊谷組
2201
森永
4041
日曹達
5707
東邦鉛
6103
オークマ
8803
平和不
9605
東映
まず最初に高流動性銘柄のうち、
上位75位以内は必ず採用される
ことから、ここを見てみましょう。日経500 について、「過去5年間」を全部調べるのは、今の私の環境では無理があるので、最近の50日間(6/20-8/29)について調べてみました。
上位75位をどう決定するかですが、この期間中の「売買代金」と「売買高当たりの価格変動率」について、それぞれ順位を決定します。その順位を足して2で割ったものを総合順位とします(これが正しい算出方法かどうかは不明です)。
総合順位 = (売買代金順位 + 売買高当たりの価格変動率順位)/2
日経500中での上位75位以内であり、日経平均採用銘柄になっていない銘柄をピックアップします。
コード
銘柄
売買代金順位
価格変動率順位
総合順位
9022
JR東海
26
27
26.5
7741
HOYA
34
34
34
8591
オリックス
47
48
47.5
7974
任天堂
55
55
55
6460
セガサミー
63
63
63
4062
イビデン
66
66
66
8564
武富士
67
68
67.5
6988
日東電
69
70
69.5
1808
長谷工
76
72
74
意外と多いです(笑)。簡易手法であることと、季節柄の動きがあるため、誤差があると思います。従って、これらの銘柄が必ずそのまま採用されるとは限りません。
トップの
JR東海(9902)
は、公募による売買がありましたので、採用候補から除外します。その下位の
HOYA(7741)、オリックス(8591)、任天堂(7974)
は、株価が他の日経平均採用銘柄と比べかなり高く、バランスを考慮すると、採用しずらい面があり、採用候補から外します(※1)。HOYAはこの9月に株式分割するので「ひょっとすると」という気はしています。
(※1) もちろん、そんなことは「採用基準」のどこにも記載されていないのですが、インデックス値の健全化、インデックス運用者への配慮で、採用できないと思うのです。
その他は、75位に近くなりますので、少々データとして怪しくなります。ここでは、75位以内で採用される有力銘柄は
「ない」
という結論にします。
次に、日経平均と日経500と
セクターバランス
を見てみましょう。
J_Coffee さんの手法
に習って、区分けします。
日経平均
日経500
225妥当銘柄数
過不足数
技術
54
115
51.75
-2.25
金融
20
59
26.55
6.55
消費
31
88
39.6
8.6
素材
67
130
58.5
-8.5
資本財・その他
33
71
31.95
-1.05
運輸・公共
20
37
16.65
-3.35
「金融」「消費」セクターが不足し、「素材」「運輸・公共」セクターが過剰であることが分かります。従って、
セクター間で2銘柄、動きが出る
と予想します。
次に、日経平均に既に採用されている銘柄のうち「特別の事由による除外」に該当してしまう銘柄の確認をしましょう。
三共(4501) 第一製薬(4505) 技術セクター 9/21日上場廃止、9/28日再上場
UFJホールディングス(8307) 金融セクター 9/26日上場廃止
(銀行の合併は 1/1に延期されたが、会社の統廃合は予定通り)
2銘柄は追加補充されることになります。
以上のことを考慮すると:
除外:
「素材」- 1銘柄(セクターバランス)
「運輸・公共」 - 1銘柄(セクターバランス)
「技術」- 1銘柄(統廃合)
「金融」- 1銘柄(統廃合)
採用:
「消費」- 1銘柄(セクターバランス)
「技術」- 1銘柄(統廃合補充)
「金融」- 2銘柄(統廃合補充とセクターバランス)
あたりが妥当ではないかと思います。
それでは該当する銘柄について確かめてみましょう。まずセクターバランスから除外される可能性が高い
「素材」
について、下位を見てみましょう。
コード
銘柄
売買代金順位
価格変動率順位
総合順位
3864
三菱製紙(株)
486
486
486
3865
北越製紙(株)
443
445
444
4041
日本曹達(株)
414
414
414
5301
東海カーボン(株)
402
402
402
5707
東邦亜鉛(株)
361
360
360.5
ここでは
「三菱製紙(3864)」
を除外候補として上げます。
次に、やはり除外される可能性が高い
運輸・公共セクター
です。同じように、下位を見てみましょう。
コード
銘柄
売買代金順位
価格変動率順位
総合順位
9001
東武鉄道(株)
410
413
411.5
9008
京王電鉄(株)
396
396
396
9007
小田急電鉄(株)
369
370
369.5
9301
三菱倉庫(株)
356
357
356.5
9202
全日本空輸(株)
272
274
273
最下位は
東武鉄道(9001)
です。総合順位が高めのため、除外されるかどうかは難しい面もありますが、それでもやはり、
「東武鉄道(9001)」
を除外候補とします。
次に、
新規採用銘柄について調査します。
まずは
消費セクター
です。今度は上位銘柄を見てみましょう。
コード
銘柄
売買代金順位
価格変動率順位
総合順位
7974
任天堂(株)
55
55
55
9831
(株)ヤマダ電機
119
119
119
8268
(株)西友
161
157
159
4716
日本オラクル(株)
165
165
165
9751
TIS(株)
208
208
208
任天堂(7949)
が圧倒的に優位なのですが、ネックとなるのは、他の日経平均銘柄との値段の乖離です。今の段階で日経平均採用銘柄の最高株価が9000円程度ですが、任天堂は11880円と、更に高い株価です。
その次の候補の
ヤマダ電機(9831)
はここ1-2年で大きく勢力を伸ばした銘柄なので、候補から除外します。また、
西友(8268)
についても、「再建中」イメージが強いため、候補から除外します。
消去法なのですが、残った
「日本オラクル(4716)」
をここで新規採用銘柄とします。
次に
技術セクター
です。
コード
銘柄
売買代金順位
価格変動率順位
総合順位
7741
HOYA(株)
34
34
34
4062
イビデン(株)
66
66
66
6988
日東電工(株)
69
70
69.5
6981
(株)村田製作所
89
90
89.5
6963
ローム(株)
92
92
92
結構なタレント揃いです。なんといっても
HOYA(7741)
なのですが、任天堂同様に、株価が高いのです。しかしながらこの9月で株式を 1:2 に分割するため、ひょっとするかもしれません。
イビデン(4062)
については、ここ1年での株価急騰銘柄であるため除きます。したがって、ここでは
「日東電工(6988)」
を新規採用候補とします。
最後に
金融セクター
です。このセクターでは2銘柄が新規採用候補です。
コード
銘柄
売買代金順位
価格変動率順位
総合順位
8591
オリックス(株)
47
48
47.5
8564
(株)武富士
67
68
67.5
8628
松井証券(株)
78
78
78
8515
アイフル(株)
97
97
97
8574
プロミス(株)
102
102
102
8473
SBIホールディングス(株)
126
126
126
8585
(株)オリエントコーポレーション
132
132
132
8795
(株)T&Dホールディングス
138
137
137.5
8572
アコム(株)
169
170
169.5
8595
(株)ジャフコ
189
190
189.5
オリックス(8591)
が優位なのですが、やはり他と比べて、株価が高すぎるため、採用しないと思います。3位の
松井証券(8628)
と6位の
SBI(8473)
は、最近の銘柄のため、除外します。
さて、問題は消費者金融をどう扱うかです。
武富士(8564)
がトップなのですが、スキャンダル絡みの話題があります。また、消費者金融自体をダーティな目で見ることも多いので、素直には組み入れづらい所があります。まずは
「アイフル(8515)」
だけを採用候補とします。
そして、これらを除いた上位にある
「オリエントコーポレーション(8585)」
を2つめの採用候補とします。
「あれ、色々な所で有力視されている
新生銀行(8303)
はどうしたの?」と思われる方も多いと思います。実は新生銀行は日経500に選ばれていません。上場してからの期間が短いためだと思います。
日経500にも選ばれていない、そして上場間もない新生銀行が、日経平均に採用される確率は低いのではないかと思っています。
結論
:
日経平均除外銘柄は、セクターバランスから「三菱製紙(3864)」と「東武鉄道(9001)」が有力である。
日経平均新規採用銘柄は、セクターバランスと統廃合の補充から、「日本オラクル(4716)」、「日東電工(6988)」、「アイフル(8515)」、「オリエントコーポレーション(8585)」が有力である。
はっきり言って、
この結論には自信がありません(笑)
。各証券会社やシンクタンクが威信をかけた調査に比較すると、やはりパワー不足は否めません。
ところで、
日経平均の定期入れ替え発表日はいつ
あるのでしょうか? この件については、
以前の投資戦略でご紹介した法則
に従い、
第一候補日: 9/6日、第二候補日: 9/9日
と予想しています。
--
編集後記(From the Editor)
この9月は日経平均目白押しです。夕凪通信に記載したことの繰り返しになりますが、ここにも掲載しておきます。これだけ分散すると、どれを狙うか迷う程です。
日付
イベント
コメント
9月6日
日経平均入れ替え発表候補日
9月21日
三共(4501) 第一製薬(4505)上場廃止
売り圧力
9月26日
UFJホールディングス(8307) 上場廃止
売り圧力
9月26日
ヤフー(4689) 1:2 分割権利日
売り圧力
9月26日
日清製粉グループ本社(2002) 1:1.1 分割権利日
売り圧力
9月26日
三菱化学(4010) 2:1 株式併合権利日
買い圧力
日経平均の入れ替えに伴う株価の乱高下について、「参加せずにじっと見守る」というのもあるでしょうが、年に一度の、株価を大きく動かすパワーがある、インデックス指数を知る
「お祭り」
だと思って、参加してみてはいかがでしょうか。楽しいですよー!
今回利用した順位データを公開します。あまり参考にならないかも知れませんが、ご利用下さい。
2005年日経平均定期入れ替え候補順位データ
--
くれぐれも、自己責任の上で判断してくださいね!
GOOD LUCK!