2005/7/10
景気ウォッチャー調査と株価の関係
速報性のある経済動向指数として
「景気ウォッチャー調査」
があります。その始まりは 2000年1月からと、歴史は浅いのですが、現場の生の声がダイレクトに分かるということで、新聞にも注目記事として掲載されます。
しかしながら、各種ある指数の中で、この「景気ウォッチャー調査」と株価の関係について掲載された記事を見たことがありません。もしかしたら、意外な関係があり、投資戦略に結びつく可能性もあるのではないかと思い、調査することにしました。
それでは早速、「景気ウォッチャー調査」のメインとなる「景気の現状判断」と、TOPIXおよびJASDAQ平均の推移を見てみましょう
(TOPIX および JASDAQ平均 の値については、山と谷の時期が分かり易くするように調整しています)
。
ほぼ山と谷の時期が一致していますね。2002年は「景気の現状判断」の方が1ヶ月ほど株価に先行している場面もありますが、最近は、株価の後を追うようになっています。これでは株価の判断材料としては使えません。
しかしながら、「景気ウォッチャー調査」には、別の指標である3ヵ月後の「先行き判断」の予想についても同時に調査し、掲載しています。もしかしたらこちらの数値の方が使えるかもしれません。
この「先行き判断」と、TOPIXやJASDAQ指数との比較をする前に、「景気の現状判断」と「先行き判断」の関係をみてみましょう。「先行き判断」の予想が当たっているとすれば、「景気の現状判断」は、「先行き判断」の3ヶ月後を後追いする(3ヶ月分山と谷がずれる)はずです。
予想に反して、ほとんど「景気の現状判断」と「先行き判断」の山谷が一致しています。つまり「先行き判断」は「景気の現状判断」となんら変わらず、3ヶ月後の予想としては全く機能していないのが現実です。
事実
:
「景気の現状判断」について、株価指数の山谷とほぼ一致している。株価の将来的な予測としての利用は困難である。
「景気の現状判断」と「先行き判断」の山谷はほぼ一致している。「先行き判断」を、株価の将来的な予測としての利用は困難である
ここまでは、長期的(1ヶ月単位)な予測として、利用が困難であることは分かりました。でも、もしかしたら、新聞紙上で多く取り上げられている関係上、発表日の翌日の株価に影響を与えている可能性があるかも知れません。
そこで発表日の翌日の株価を追って見ます。もし多少なりに影響があるのであれば、発表日の翌日の始値は「景気ウォッチャー調査」の強弱に影響を受けるはずです。つまり弱い数値であれば、株価は下落し、強い数値であれば株価は上昇するはずです
(本当であれば、強弱は、予想値との乖離で判断するのですが、正式な予想値を誰もしていないようですので、前月発表値との差分を強弱とすることにします)
。
下記グラフ中、「翌日始値」欄の数値は、「発表日当日の終値」と「発表日の翌営業日の始値」の株価の比率です。値がプラスであるのは、「発表日の翌営業日の始値」の株価が「発表日当日の終値」よりも高いことを表しています。
発表日の終値の株価と、翌営業日の始値の関係
発表日
現状判断
前月比
TOPIX
翌日始値
JASDAQ
翌日始値
TOPIX
強弱一致?
JASDAQ
強弱一致?
02/11/11
38.1
▲ 4.3
-0.77%
-0.25%
○
○
02/12/9
36.7
▲ 1.4
-0.65%
-0.28%
○
○
03/1/16
36.6
▲ 0.1
-0.41%
0.10%
○
×
03/2/10
35.5
▲ 1.1
0.50%
0.05%
×
×
03/3/10
38.3
2.8
-0.73%
-0.30%
×
×
03/4/8
41.3
3.0
-0.17%
-0.05%
×
×
03/5/13
38.7
▲ 2.6
0.09%
0.34%
×
×
03/6/9
38.4
▲ 0.3
-0.77%
-0.02%
○
○
03/7/8
42.1
3.7
-0.03%
-0.15%
×
×
03/8/8
44.9
2.8
0.35%
0.06%
○
○
03/9/8
46.4
1.5
0.78%
0.36%
○
○
03/10/8
48.6
2.2
0.19%
0.35%
○
○
03/11/11
50.8
2.2
0.35%
-0.06%
○
×
03/12/8
48.3
▲ 2.5
0.34%
0.12%
×
×
04/1/15
49.1
0.8
0.40%
0.11%
○
○
04/2/9
48.6
▲ 0.5
0.16%
0.17%
×
×
04/3/8
50.1
1.5
-0.35%
-0.04%
×
×
04/4/8
53.7
3.6
-0.78%
-0.30%
×
×
04/5/14
55.7
2.0
-0.50%
-0.22%
×
×
04/6/8
52.8
▲ 2.9
0.01%
0.06%
×
×
04/7/8
51.4
▲ 1.4
-0.02%
-0.16%
○
○
04/8/9
54.3
2.9
-0.54%
0.14%
×
○
04/9/8
50.7
▲ 3.6
-0.13%
-0.03%
○
○
04/10/8
47.3
▲ 3.4
-0.38%
-0.01%
○
○
04/11/9
46.4
▲ 0.9
0.04%
0.09%
×
×
04/12/8
45.3
▲ 1.1
0.00%
0.18%
×
×
05/1/14
44.2
▲ 1.1
0.24%
0.30%
×
×
05/2/8
45.0
0.8
0.29%
0.13%
○
○
05/3/8
45.6
0.6
-0.10%
-0.06%
×
×
05/4/8
49.5
3.9
-0.30%
-0.16%
×
×
05/5/13
49.8
0.3
-0.10%
0.03%
×
○
05/6/8
50.3
0.5
0.08%
-0.12%
○
×
一致回数
14
13
不一致回数
18
19
株価は発表の影響を全く受けていませんね。現状判断について、前月比がプラスであろうが、マイナスであろうが、翌日の始値は、お構いなしで動いています。
結論
:
「景気の現状判断」を株価の将来予測として利用することはできない。「先行き判断」も、同様である。
「景気の現状判断」の値について、翌日の株価にも影響を与えず、短期的にも利用することはできない。
見事に今の所は、株価の将来と、景気ウォッチャー調査の数値について「関係がない」ことが分かりました。残念ながら、これでは投資戦略は生まれませんね。
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編集後記(From the Editor)
今まで、株式投資系の雑誌で、「景気ウォッチャー調査」と「株価」の関係について、取り上げた記事を見たことがなかったので、「もしかしたら、何も出ないかも知れない」と思いつつ、いろいろな角度から突っついてみたのですが、私が調べた限り、本当になにも出ませんでした。
分かったことは、「総合的な株価の予測には使えそうにない」とうことです。エジソンのフィラメントの発見ではありませんが、「使えそうにない」ということが分かったことも「発見である」....と言い訳を。
誤解して頂きたくないのは、「総合的な株価の予測に使えそうにない」とうことだけで、この調査自体を否定するものではありません。
「景気の現状に対する判断理由等」
のコメントはなかなか面白く、こちら側を見て個別株の売買の参考にする方が良い気がします。
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くれぐれも、自己責任の上で判断してくださいね!
GOOD LUCK!