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自己株式取得

2005/4/17
ToSTNet-2の自己株式取得はいい感じ?

自己株式取得は基本的に良いニュースです。売り圧力が緩和することで、需給環境が良くなり、株価が上昇しやすくなります。更に株式を消却すれば1株あたりの PER, PBR などの指標が良くなります。となれば、自己株式取得した銘柄を狙えば、その後の上昇が期待しても良さそうです。

自己株式の取得の方法としては、ザラバ取引中に購入するパターンと、ToSTNet のような、市場外取引を利用するパターンがあります。

ザラバ取引中に自己株式を購入するパターンでは、ある期間中に株式を買うことを宣言し、購入を進めます。しかしながら、通常、この期間が長く、かつ、本当に購入しているかどうかわかりません。最終的に何も買われていなかったことが発表されることもよくあります。

一方で、ToSTNet-2 による終値購入を実施する場合、購入日前日に「購入株数」および「値段」を指定し、翌日の早朝の時間外取引で購入しますので、すぐ結果が分かります。従って今回は、分かり易さから、ToSTNet-2 による自己株式取得後の株価を追い、投資戦略を練ってみることにしましょう。

ToSTNet-2 の詳細については、東証の解説ページに任せるとして、ざっくりといえば、「機関投資家が利用する、取引値段が固定された時間外市場」と言えるでしょう。東証の解説ページでは、「ToSTNet-2 は個人投資家向け」と記載ありますが、それが可能なインターネット証券を私は知りません。

因みに、ライブドアがニッポン放送株を買い集めたのは、自由に価格が決められる ToSTNet-1 の方です。

それでは早速、3月中に ToSTNet-2 または、それに該当するような市場外取引(ジャスダックも似た仕組みがあります)で、自己株式を取得した32銘柄について、取引の前日を1とした場合の株価終値の推移を見てみます。

市場の影響を排除するため、東証1部、大証1部の銘柄は、伝統市場銘柄として、TOPIXで差分調整しています。それ以外の銘柄は、新興市場銘柄として、JASDAQ平均で差分調整しています。



新興市場が、一日だけ急騰した日がありますが、これは福岡証券取引所の才田組(1999)が「いってこい」を演じた日です。それ以外については、上下2%以内に収まっており、一体いつがToSTNet-2 の買い日なのか分からないくらいです。

事実1:
ToSNet-2 などを用いた終値による市場外取引を実施した前後で、株価の変動は特に見当たらない。

ではもう少し個別に見ることにしましょう。

ToSTNet-2 の取引は、前日の終値で購入するため、売却する人が現れない限り、予定株数の購入に失敗する場合があります。ここに目をつけて、予定株数のどれくらいが購入できたか、その割合で区分けすることにしましょう。

つまり、予定全株数が消化できたとすれば、まだ売り圧力が残っているため、上昇しにくく、逆に予定全株数が消化できなければ、売却する人が存在せず、売り圧力がなくなり、上昇しやすくなるのではないかと思ったからです。


少しだけ傾向が出ています。当初の予想通りです。しかしながら、目立つほどではなく、2-3%程度の緩やかな上昇です。

次に今度は、買いインパクト日数別に区分けします。自己株式取得の買いインパクト日数が大きければ大きいほど、上昇余地が発生すると予想できるからです。


傾向が全く出ていませんね。買いインパクトだけで難しいようです。

次に、発行済み株式数の割合から区分けします。自己株式取得の株数が、発行済み株式数に対する割合から見て、大きければ大きいほど、需給環境が良化すると予想できるからです。


予想と全く逆に出ました。発行済み株式数に対する割合が多いと、株価が下落傾向です。しかしながら、上下 2% 程度に収まっていますので、あまり変化がないと思って良さそうです。

事実2:
市場外買付が予定数に満たなかった銘柄については、多少の値上がりが期待できる。ただしその幅は2-3%程度である。
買いインパクト日数の大きさは、その後の株価の変動と関連しない。
発行済み株数に対する割合も、その後の株価の変動と関連しない。

結論:
ToSTNet などを用いた市場外取引による自己株式の取得は、短期的にはほとんど株価に影響しない。市場とほぼ連動した推移となる。

どうしてこんなに「市場外取引による自己株式の取得」のインパクトがないのでしょうか? 想像する限りにおいて、ToSTNet-2 は機関投資家以外、なかなか参加できない市場であるため、個人投資家は手が出せません。

また、機関投資家が市場で売却する場合、値崩れを起こしてしまうため、市場外取引やクロス取引でしか売却できなかったものが、ToSTNet-2で、ちょうど売却できたと見ることができます。

そう考えると、つじつまが合いますが、本当の所はよくわかりません。結果、「株価は変動しない」ということが分かりました。

最後に、今回調査対象となった32銘柄をご紹介します。

取得発表日 コード 銘柄 市場
2005/3/1 10:00 4692 アルゴ21 1
2005/3/1 10:30 8332 横浜銀 1
2005/3/1 11:00 3881 特種紙 1
2005/3/4 11:00 8757 日新火 1
2005/3/4 14:05 8586 日立キャピ 1
2005/3/8 9:30 8616 東海東京 1
2005/3/8 10:30 6806 ヒロセ電 1
2005/3/8 10:30 2503 キリン 1
2005/3/9 10:30 7203 トヨタ自 1
2005/3/10 10:00 8091 ニチモウ 1
2005/3/11 11:00 5851 リョービ 1
2005/3/11 11:00 5195 バンドー化 1
2005/3/11 11:00 6326 クボタ 1
2005/3/14 11:00 1999 才田組 F
2005/3/15 9:16 4310 M−ドリームI M
2005/3/15 10:00 7956 ピジョン 1
2005/3/15 10:10 9068 丸全運 1
2005/3/16 11:00 4674 クレスコ 1
2005/3/16 12:08 8164 キャビン 1
2005/3/16 18:49 7419 ノジマ J
2005/3/17 9:30 7734 理計器 1
2005/3/18 10:00 7840 フラベッドH 1
2005/3/18 10:38 2351 M−ASJ M
2005/3/18 10:40 2209 井村屋菓 2
2005/3/22 10:00 1938 千歳電工 2
2005/3/23 9:35 4094 日化学産 2
2005/3/24 9:35 6413 理想科学 J
2005/3/24 10:00 9882 イエローハット 1
2005/3/24 10:00 1982 日比谷設 1
2005/3/24 11:00 4538 扶桑薬 1
2005/3/25 9:16 7860 エイベックス 1
2005/3/25 14:21 6943 開閉器 J

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編集後記(From the Editor)

今回の調査のアイデアについては、「tonsi 四十五」さんから頂きました。ありがとうございます。

実は以前に、「ザラバ取引」での自己株式取得した銘柄の株価を追っかけようとしたことがありました。その時は、いつ購入しているのか分からず、更に、「結局買いませんでした」というアナウンスもされることもよくあり、あまりにも煩雑で、やめました。

そこで今回は、ToSTNet-2 に絞って調査してみました。誰も注目しないような所なので、驚きの結果が出たらいいなと思っていたのですが、なかなか難しいですね。

ToSTNet-2 の自己株式取得をしても、過剰な期待はしない方がよさそうですね。
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くれぐれも、自己責任の上で判断してくださいね!

GOOD LUCK!

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