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2004/10/17
MSCBの先回り売りをする

上場企業が資金繰りに困った時、最後の手段といわれるMSCB(ムービング・ストライク転換社債)をご存知でしょうか。

このMSCBを上手に利用する企業も存在しますが、多くは困ったときのMSCB頼みとして発行されます。三菱自動車も最近、利用しました。

難しい話を抜きにして、誤解を恐れずに言えば、困ったときのMSCB発行は、「既存株主」のお金を、「発行企業」と「MSCB受け手のヘッジファンド」が山分けにする仕組みです。

その方法として、「発行企業」は、社債発行額全部が株式転換されることで、資金を得ることができます。一方、「ヘッジファンド」は、空売りによって株価を下げ、下がった株価を基準にした転換株式を受け取り、現渡しすることで利益を得ます。

つまり、「ヘッジファンド」は、割引価格で買える株式を約束されているも同然なのです。そのため、高い値段で空売りをすれば儲かる仕組みです。

このような方法で、既存株主からむしりとったお金を「ヘッジファンド」だけに儲けさせることはありません。これを我々のような先回り個人投資家が、分け前を得る方法を考えて見ましょう。

とりあえず、最近MSCBを発行した企業の例を見てみましょう。

最初に兼松(8020)です。2004/5/28日にMSCBを発行することを公表し、9/14日に全部株式に転換されたとの発表がありました。そこで、5/28日を100とした場合の株価の推移を見てみます。



コード 企業 発表日 払い込み日 金額 転換価額の修正 当初 下限 最終修正額
8020 兼松 5月28日 6月14日 100億 毎月第3金曜日(当日を含む)の3連続取引日の終値の平均値の92%に相当する金額 184 92 147.2

発表日以降、最初の転換価格の修正時に(6/18日近辺)に上昇局面がありますが、それ以降は一貫して株価が下がり続け、結局は発表日の価格を下回っています

次に長谷工(1808)です。2004/7/8日にMSCBを発行することを公表し、今も転換の最中です。



コード 企業 発表日 払い込み日 金額 転換価額の修正 当初 下限 現在の修正額
1808 長谷工 7月2日 7月20日 300億 毎月第4金曜日の5連続取引日の終値の平均値の90%に相当する金額 310 155 189

長谷工も発表日以降に上昇局面がありますが、それ以降は一貫して株価が下がり続け、結局は発表日の価格を下回っています

ここで取り上げたのは、たった2例ですが、過去も三菱自動車、プライムシステムなどの例も合わせて考えると、MSCBの性質上、以下のような結論を述べても良いのではないかと思います。

結論1
・毎月転換価額が修正されるようなMSCBの発行を発表する企業があったら、迷わずその銘柄を「信用売り」すべし。


単純な方法ですが、確実に分け前を得ることができる方法だと思います。

「どのタイミングで信用売りすれば良いか」、また、「どれくらい下がった時に買い戻せば良いのか」については、まだ結論を出せませんが、今後も追加調査を行い、発表できればと思っています。

では、長谷工や兼松以外に、毎月転換価額が変わるようなMSCBを発行している企業はないのでしょうか?

ちょっと調べてみたら、ザクザク出てきました。9月、10月だけで、MSCBを発行すると宣言した企業は 20社もありました。そのうち、毎月転換価額が変わるのは、その約半数の9社です。

また、アイ・シー・エフ(4797)は、いつでも(1回だけですが)転換価額を変更OKの超びっくり条項です。

コード 企業 発表日 払い込み日 金額 転換価額の修正 当初 下限
4837 シダックス 9月13日 9月29日 30億 毎月第3金曜日を含む5連続営業日の終値平均 140700 70350
4088 エアー・ウォーター 10月13日 11月1日 175億 2007 年6 月1日まで(当日を含む)の30 連続取引日の終値平均。 890 712
2768 双日HD 9月29日 10月29日 100億 平成16 年11月4 日から平成18 年10 月4 日までの間、毎月4日の(当日を含む)の5 連続取引日のVWAPの93% 454 未決(11月4日までの当日を含むVWAPの50%)
6490 日本ピラー 9月14日 10月4日 2300万スイスフラン 2005年9月16日及び2006年9月15日まで(当日を含む。)の、各5連続取引日の終値の平均値 820 株式増加が1.22を超えない
3726 SDHD 9月9日 2004年9月27日 71億 毎月第2金曜日の翌取引日以降の5連続取引日。毎日の終値の平均値の90%に相当する金額 215000 129000
5913 松尾橋梁 9月24日 平成16 年10 月12 日 10億 毎月第3金曜日の(当日を含む)の5連続取引日。毎日の終値の平均値の90%に相当する金額 268? 134
3003 昭栄 9月15日 10月1日 100億 平成18 年10 月2 日まで(当日を含む)の終値がある5連続取引日の当該終値の平均値 1620 1296
6893 タイテック 9月15日 10月6日 17億 2005年10月7日及び2006年10月6日の価格直前各決定日を含む5連続取引日 1028 657.92
6501 日立 9月21日 2004 年10 月19 日 500億 2005 年10 月9 日及び2007 年10 月9 日、各30連続取引日(当日を含む)の95% 1009 645.76
6501 日立 9月21日 2004 年10 月19 日 500億 2006 年4 月9 日及び2008 年4 月9 日で、上に同じ 1009 645.76
2369 メディビック 9月17日 2004 年10 月4 日 14億 2004年10月より3か月毎の最終取引日までの各3連続取引日の終値の平均値 131000 91000
4461 第一工業 9月7日 9月27日 2200万スイスフラン H17.9.16, H18.9.15 5連続取引(当日含む) 終値平均。 324 株式増加が1.22を超えない
5711 三菱マテリアル 9月14日 10月4日 200億 平成18 年10 月6 日まで(当日を含む)の20 連続取引日の終値の平均値 345 276
5711 三菱マテリアル 9月14日 10月4日 200億 平成18 年10 月6 日及び平成21 年4 月17 日で、上記の条件 333 213.12
3736 コネクトテクノロジーズ 9月14日 9月30日 50億 平成16年10月より各月最終取引日までの各3連続取引日(修正日当日を含む)の終値の平均値の99% 902000 270000
1880 スルガコーポ 9月9日 9月27日 15億 毎月第3金曜日(同日を含む)の5連続取引日の終値の平均値の90%に相当する金額 22800 16000
4797 アイ・シー・エフ 9月7日 9月24日 10億 各行使請求の効力発生日まで(同日を含まない)の3連続取引日の終値の平均値の90%に相当する金額(いつでもOK!) 718000 359000
4815 ジャパンデジタルコンテンツ 9月1日 9月21日 18億 2005 年9 月22 日及び2006 年9 月22 日までの当日含む終値の5連続平均値 103000 50470
8562 福島銀行 9月6日 9月22日 20億 毎月第4金曜日(同日を含む)の5連続取引日の終値の平均値の90%に相当する金額 180 100
6908 イリソ電子 9月2日 9月21日 25億 2005 年9 月7 日及び2006 年9 月7 日の各10 連続取引日の最終価格の平均値 1896 1213.44
9310 日本トランスシティ 9月2日 9月21日 15億 2005.9.9, 2006.9.11 30日連続の終値平均 410 262.4
4700 アクセス 9月1日 9月17日 15億 第4金曜日までの5連続取引の終値の90% 1428000 714000
2355 シーフォーテクノロジーズ 8月26日 9月13日 10億 第3金曜日5連続終値平均の90% 331800 99540

上記銘柄の中での狙い目は、これから始まる双日HDでしょうね。額も大きいし、転換価額の最低価格がこれから決まります。11/4日に向け、ヘッジファンドは株価を下げ誘導してくるのではないでしょうか。

また、地味な所では、福島銀行(8562)でしょうか。明日から転換価額の修正がスタートです。アクセス(4700)も明日からスタートなのですが、通常では「信用売り」ができない銘柄です。残念です。

上記表は、公表資料を正確に反映したつもりですが、最終的な確認は各自でお願い致します。ライブドアのサイトで検索すると、簡単に探し出せます。

くれぐれも、自己責任の上で判断してくださいね!

GOOD LUCK!


ライン

2004/11/7
MSCB銘柄は売りサイン

10/29日に、MSCB(ムービング・ストライク転換社債)に関する、ある象徴的なニュースが流れました。それは、毎月転換額が変わるMSCBの発行企業として、吉野家が加わったことです。

アメリカの狂牛病による輸入ストップが長く続き、苦しい状況であることは理解しますが、既存株主を犠牲にするMSCBを発行するとは思いもしませんでした。今まで吉野家社長の言動には好感を持っていたのですが、がっかりです。

もしかしたら、割り当て先の野村證券が吉野家の経営支援し、立て直す予定で資金を入れたのかもしれません。しかし、普通の転換社債ではなく、MSCBなので、それは違う気がします。

本来であれば、既存株主の犠牲の上に成り立つMSCBの発行を、法的に禁止すべきだと思います。しかし、禁止されない今、このMSCBを上手に利用し、投資戦略に結びつけることにしましょう。

前置きが長くなりましたが、毎月転換額が変わるMSCBを発行している企業と、その発表日以降の株価の上昇率(11/5現在)を見てみましょう。この表は、8月以降に、毎月転換価額が調整されるようなMSCBを発行している銘柄の一覧です。

コード 企業 発表日 割当先 金額(億) 条件 発表日以降の株価上昇率
9861 吉野家 10/29 野村證券 100 毎月第3金曜日5連続取引日毎日の終値の平均値の95% -4.76%
9880 イノテック 10/27 野村證券 5 毎月第3金曜日3連続取引日と最終価格の平均値90% -4.68%
3734 エム・ピー・テクノロジーズ 10/26 Lehman Brothers Commercial Corporation Asia Limited 50 各月最終取引日までの各3連続取引日の終値の平均値の97% -21.15%
4837 シダックス 9/13 ゴールドマン・サックス・インターナショナル 30 毎月第3金曜日を含む5連続営業日の終値平均 -37.09%
2768 双日HD 9/29 UBS AG London Branch 100 毎月4日の5 連続取引日のVWAPの93% 12.65%
3726 SDHD 9/9 New Value Partners 71 毎月第2金曜日の5連続取引の終値の平均値の90% -37.26%
5913 松尾橋梁 9/24 大和証券エスエムビーシー株式会社 10 毎月第3金曜日の5連続取引日。毎日の終値の平均値の90% -10.33%
2369 メディビック 9/17 Canyon Capital 14 2004年10月より3か月毎の最終取引日までの各3連続取引日の終値の平均値 1.65%
3736 コネクトテクノロジーズ 9/14 Lehman Brothers Commercial Corporation Asia Limited 50 各月最終取引日までの各3連続取引日の終値の平均値の99% -25.31%
1880 スルガコーポ 9/9 Merrill Lynch International 15 毎月第3金曜日の5連続取引日の終値の平均値の90% -20.18%
4797 アイ・シー・エフ 9/7 Merrill Lynch International 10 3連続取引日の終値の平均値の90%(いつでもOK!) -5.85%
8562 福島銀行 9/6 Merrill Lynch International 20 毎月第4金曜日の5連続取引日の終値の平均値の90% -2.81%
4700 アクセス 9/1 大和証券エスエムビーシー株式会社 15 毎月第4金曜日までの5連続取引の終値の90% -29.04%
2355 シーフォーテクノロジーズ 8/26 大和証券エスエムビーシー株式会社 10 毎月第3金曜日5連続終値平均の90% -43.99%
7535 グッドマン 8/30 日興シティグループ証券 20 毎月第3金曜日の5 連続取引日最終価格の平均値の90% -18.77%
6719 富士通コンポーネント 8/26 野村證券 30 毎月第2水曜日、3連続取引、終値平均の90% -32.00%
4359 ラック 8/23 Merrill Lynch International 10 3連続取引日の終値の平均値の90%(いつでもOK!) -18.55%
2342 トランスジェニック 8/23 大和証券エスエムビーシー株式会社 20 毎月第3金曜日の5連続取引日終値の平均値の90% -19.51%
9305 ヤマタネ 8/20 大和証券エスエムビーシー株式会社 20 毎月第3金曜日の5連続取引日終値の平均値の90% 11.03%
3714 アソシエント・テクノロジー 8/18 Lehman Brothers Commercial Corporation Asia Limited 15 各月最終取引日までの各3連続取引日の終値の平均値 -87.71%
3408 サカイオ−ベックス 8/11 野村證券 10 毎月第3金曜日の3連続取引日の終値の平均値の90% 0.00%
6440 JUKI 8/10 野村證券 50 毎月第3金曜日の5連続取引日の終値の平均値の90% 11.29%
4112 保土谷化学工業 8/10 みずほ証券株式会社 30 毎月第3金曜日の5連続取引日の終値の平均値の90% 2.79%
1893 五洋建設 7/20 野村證券 50 毎月第3金曜日の5連続取引日終値の平均値の90% -7.41%

全部で24社もあります。ひどく下降している銘柄が多いですね。このうち、ラックは全額転換が終了しています。アソシエント・テクノロジーは、粉飾会計疑惑の暴落余波で、全額買戻しを余儀なくされました。

また、割当先を見ると、野村證券、大和証券などの日系企業と、ヘッジファンドなのどの外資系企業があります。割当先別の上昇率の平均値は、以下のようになります。

割当先 上昇率
全体平均 -16.12%
外資系平均 -21.96%
日系平均 -11.18%

外資系が割当になると、容赦なく売り浴びせられていることが分かります。三菱自動車の場合も、外資系のJPモルガンによって売り浴びせられました。

日系企業が割当になると、企業との今後の関りもあるためか、控え目に売る傾向にあるようです。しかしながら、それでも、10%以上下落しています。

こられの銘柄は、どのように株価が下落していったのでしょうか。いくつかの銘柄の推移を見てみましょう。グラフは、MSCB発行の発表日の株価を100%とした場合の、その後の株価推移を表しています。赤い部分は、転換価額の調整日です。








見事な右肩下がりですね。双日HDおよび、メビデックは上昇していますが、結局、調整日近辺では値を下げています。そしてほぼ全ての銘柄が、第一回目の転換価額の調整期間中に、下落していることが分かります。

結論:
・MSCB発行を発表した銘柄を所持しているのなら、すぐに売るべし。いずれは値下がりする。
・「信用売り」可能な銘柄であるならば、発表直後か、第一回目の転換価額の調整日前あたりで「信用売り」すべし。
・外資系の企業が割当先であるならば、下落が激しく、「信用売り」の狙い目である。


私の当初の予想では、「転換価額の調整日後に、売り圧力が消えるだろうから、上昇する場合が多い」と思っていたのですが、グラフを見る限り、全くの間違いのようです。MSCB銘柄の明確な買いタイミングは存在しません。

吉野家も、この先が思いやられます。

くれぐれも、自己責任の上で判断してくださいね!

GOOD LUCK!

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