
さていよいよ明日、2004年8月16日(月) は、イオン(8267)の 1:2 株式分割の、権利付き最終売買日です。
この株式分割による「インデックスファンドの売り」について、どこでも、ほとんど話題として取り上げられていません。日経平均採用銘柄が株式分割した例がほとんどないので、その影響について推測するのが難しいためでしょうか?
では早速、先週お約束したイオンの日経平均への寄与度と、他の日経平均採用銘柄への影響について、最新情報をお伝えします。
まずは、2004年8月13日(金)の終値段階での寄与度を見てみましょう。
証 券 |
銘柄名 |
株価 |
みなし比率 |
みなし株価 |
寄与度 |
6971 |
京セラ |
7530 |
1 |
7530 |
3.02% |
6762 |
TDK |
6850 |
1 |
6850 |
2.75% |
6857 |
アドテスト |
6620 |
1 |
6620 |
2.66% |
6954 |
ファナック |
5950 |
1 |
5950 |
2.39% |
8035 |
東エレク |
5450 |
1 |
5450 |
2.19% |
9433 |
KDDI |
531000 |
0.01 |
5310 |
2.13% |
7267 |
ホンダ |
5110 |
1 |
5110 |
2.05% |
4502 |
武田 |
5070 |
1 |
5070 |
2.04% |
7751 |
キヤノン |
4950 |
1 |
4950 |
1.99% |
9737 |
CSK |
4480 |
1 |
4480 |
1.80% |
4704 |
トレンド |
4430 |
1 |
4430 |
1.78% |
9735 |
セコム |
4180 |
1 |
4180 |
1.68% |
7203 |
トヨタ |
4140 |
1 |
4140 |
1.66% |
8264 |
イトヨーカ |
3880 |
1 |
3880 |
1.56% |
4503 |
山之内 |
3700 |
1 |
3700 |
1.49% |
4063 |
信越化 |
3660 |
1 |
3660 |
1.47% |
6758 |
ソニー |
3600 |
1 |
3600 |
1.45% |
8267 |
イオン |
3550 |
1 |
3550 |
1.43% |
先週と変わらず、255銘柄中、第18番目です。寄与度も先週から +0.1% と、ほぼ変わっていません。
次に、イオン株売却による、他の日経平均銘柄の購入株数については、前回ご紹介した計算式に従い、以下のようになります。
(5000000*3550)/(23.156*10757.20) = 71,258 (株)
従って、全ての日経平均全銘柄について、月曜日に7万株余りの購入需要が想定できます。
この7万株の購入による買いインパクトについて、木曜日時点での、1日の出来高が少ない日経平均銘柄を取り上げて見ます(金曜日はSQ算出日による出来高が増えていたため、除外します)。
証 券 |
銘柄名 |
みなし株価 |
影響割合 |
出来高 |
買いインパクト |
9301 |
三菱倉 |
1000 |
0.39% |
191000 |
0.371092463 |
2002 |
日清粉G |
1081 |
0.42% |
200000 |
0.354393302 |
2201 |
森永 |
243 |
0.10% |
207000 |
0.342408988 |
8803 |
平和不 |
381 |
0.15% |
245500 |
0.288711448 |
2536 |
メルシャン |
282 |
0.11% |
251000 |
0.282385101 |
7102 |
日車両 |
295 |
0.12% |
267000 |
0.265463148 |
1861 |
熊谷組 |
227 |
0.09% |
275000 |
0.257740583 |
8232 |
東急百 |
160 |
0.06% |
281000 |
0.252237226 |
4543 |
テルモ |
2595 |
1.02% |
282000 |
0.251342767 |
6508 |
明電舎 |
210 |
0.08% |
298000 |
0.237847854 |
前回はキッコーマンがトップでしたが、今回は三菱倉庫がトップで、0.3日分の買いが想定されます。ちなみにキッコーマンは、この日は19番目の、0.2日分でした。
結論1
株式分割に伴い、日経平均全銘柄の買い需要が7万株発生する。これによる出来高が少ない銘柄の上昇を狙う方法もある。しかしながら、その日によって出来高は大きく変わり、買いインパクトも0.2-0.5日分と少ないため、成功するには、かなり難易度が高い。
次に月曜日の「インデックスファンドの売り」による、イオンの株価への影響を考えて見ることにしましょう。
最初に考慮すべき点として、この
インデックスファンドの売りを見越した、先回り「信用売り」の存在です。先回りが多ければ、当日に「買戻し」を行うために、株価の下げが緩やかになります。
この先回りの「信用売り」の規模を確かめるために、日証金の「貸株残高」(信用売り残高)の推移を見てみます。
下記の表は、イオンの公募発行価格が決定した7月29日以降からの推移です。公募発行価格は3577円でした。
日付 |
始値 |
高値 |
安値 |
終値 |
前日比 |
出来高 |
貸株残高 |
融資残高 |
7/29 |
3,790 |
3,810 |
3,630 |
3,650 |
-180 |
2,093,700 |
421,700 |
338,600 |
7/30 |
3,650 |
3,830 |
3,640 |
3,820 |
170 |
4,034,800 |
1,213,500 |
186,300 |
8/2 |
3,840 |
3,850 |
3,750 |
3,850 |
30 |
2,102,000 |
1,472,000 |
185,200 |
8/3 |
3,870 |
3,880 |
3,750 |
3,770 |
-80 |
1,198,600 |
1,508,700 |
204,500 |
8/4 |
3,730 |
3,730 |
3,640 |
3,680 |
-90 |
1,272,000 |
1,578,200 |
205,500 |
8/5 |
3,700 |
3,710 |
3,640 |
3,640 |
-40 |
993,600 |
1,578,300 |
237,300 |
8/6 |
3,610 |
3,660 |
3,600 |
3,620 |
-20 |
1,722,400 |
1,769,200 |
215,700 |
8/9 |
3,600 |
3,670 |
3,560 |
3,670 |
50 |
2,770,100 |
587,800 |
285,400 |
8/10 |
3,620 |
3,660 |
3,610 |
3,660 |
-10 |
1,459,900 |
445,900 |
310,500 |
8/11 |
3,670 |
3,710 |
3,660 |
3,710 |
50 |
2,198,900 |
384,600 |
398,600 |
8/12 |
3,700 |
3,710 |
3,640 |
3,660 |
-50 |
1,421,800 |
256,400 |
442,600 |
8/13 |
3,660 |
3,660 |
3,540 |
3,550 |
-110 |
2,273,900 |
133,900 |
535,100 |
「貸株残高」の 7/30 から 8/6 までの推移に注目して下さい。公募が決定した翌日(7/30)に「貸株」が100万株も増え、受け渡し日(8/9)に100万株が解消されました。
この現象は、公募割引率分だけ儲ける方法を、かなりの人が実行したために起こったと思われます。その方法とは、割引の公募株の購入が確定した時点(株価
3650円)で「信用売り」し、公募発行額(3577円)で手に入れた株を、「現渡」することによって、その差額
(3650-3577 = 73円)を確実に儲ける方法です。
ところで、7/30に、100万株を超える強烈な「信用売り」が発生したにも関らず、株価が上昇しているのは不思議ですね。誰かが買い支えを行ったのでしょうか?
公募価格割れを防ごうとする幹事の野村證券の仕業でしょうか? 謎ですね。
さて、ここからが本題です。8/10 からは、株価が徐々に下落する一方で、貸株残高が減り、融資残高が増えています。つまり、現物売りが増えていることを示しています。また、出来高も結構あります。
ここから分かることは、
1. 先回り「信用売り」を実行している人はわずかである。従って、月曜日の強力な「買戻し」の勢力にはならない。
2. ここ最近、出来高が多く、現物売りがじわじわ増えている。これは月曜日に予定している500万株売りのうち、何割かをリスク回避のため、事前に売っているかもしれないし、
公募応募者の利益確定売りかも知れない。
以上のことから、月曜日の展開を想像してみましょう。
結論2
積極的な「買い手」が不在のため、朝一番から株価はゆっくりと切り下がる。出来高が500万株に近づくにつれ動きが止まり、引け際に一気に株価が下がる。もしかしたらストップ安近辺まで下がるかも知れない。
いわゆる「先買いがあまり存在しないTOPIX買い」の逆の展開と予想しました。先に「信用売り」し、引け間際に「買戻し」を行えば、がっぽり儲けられそうです。
しかしながら、私の予想はよく外れます。気をつけてくださいね。
今回の株式分割の例は、歴史上に名を残す大事件となるのでしょうか。それとも何事もなく終わるのでしょうか。楽しみです。
--
(8/16 結果追記)
イオンの株価について、結局は前日比 -190円安(-5.35%)の 3360円で引けました。出来高もなんと
767万株も発生しました。
今日の日証金の「貸し株残高」を見ると、150万株ほど増えています。インデックスファンドの「現物売り」と、市場参加者の「信用売り」の両方が発生したために、出来高が膨れ上がったようです。
それではイオンの一日チャートをご覧下さい。

今日は、MarketSpeed でずっと株価を追っていました。引け間際の怒涛の下げは予想通りでしたが、最後の3分前までは、全くその前兆を感じませんでした。
--
14:56分:
じわじわと株価が上昇し、このまま寄り付きの 3500 円近辺まで戻すような勢い。誰しもが「買い方」の勝利を信じて疑わないような展開。
14:57分:
3480円近辺で、売り板と買い板の株数が突然増え始める。10万株単位の板が並び、バトルの予感が走る。そして間もなく「売り方」の
3470円の 99,900株の売りを合図に、「売り方」と「買い方」が、万株単位の売買で、激しい食い合いを始める。
14:58分:
しばらくは、3460-70円間の食い合いのバトルが繰り広げられる。3450円を突破されたあたりから、明らかに「売り方」優勢。「買い方」は10万株単位の板をずらり並べ、防御を図るが、次々と食われ、10秒単位で確実に値段が切り下がる。間もなく3400円を切り、一体どこまで下がるのか、全くわからなくなる展開。
14:59分:
「買い方」が動きを止めるために、3360-80円近辺で必死に10-30万株の板を並べるも、次々と食われる状況。しかしながら、ここで値段が下げ止る。あまりにも売買の動きが激しいために、どこの値段で成立したか、板状況では全く分からない状態。
15:00分直前:
3360円近辺で、一瞬売買および値動きが止まる。嵐の前の静けさのよう。このまま終了かと思った次の瞬間、引けで100万株超の大激突。結局は
3360 円で引ける。
--
一方で、日中は意外と下落しませんでした。買い手不在かと思われていたのですが、下落しそうな雰囲気になると、要所要所で10万株規模の巨大な買いが入り、日中の株価を支えました。
こんな大型の買いが可能なのは、証券会社か機関投資家あたりでしょうか。ひとつ考えられるのは、野村証券のAO(オーバーアロットメント)の買戻しです。公募時に割り当てられた243万株まで買い戻し可能です。
今日、大半の買戻しを実行したのではないでしょうか。手口が公開されていれば確認可能なのですが、残念ながら真実はわかりません。
今日の VWAP は、3423.8355円でした。終値が 3360円ですので、引け値保証の場合の証券会社の儲けは、(3423.8355-3360)
* 500万株 = 3億2000万円 程度。ナイスな数値ですね。
いずれにせよ、
日経平均銘柄の株式分割の場合は、事前に「信用売り」 を行い、引け間際で、「買い戻し」すると、もれなく当たりが出るようです。
--
(8/17 結果追記 Part2)
上記「結論1」にあったような、インデックスファンドによる全日経平均銘柄の「7万株の買い需要」が実際起きたかどうかは結局、よく分かりませんでした。また、インデックスファンドは、日経平均銘柄の株を買う以外に、「日経225先物を買う」選択肢もあったようです。
そこで、インデックスファンドの「日経225先物の買い」が実際にあったのかチェックするために、8/16日の「日経225先物」の値動き(最初の図)と出来高(2枚目の図)について、期近(04-09)
の5分間チャートを見てみます。(Market Speed からの抜粋です)


確かに 15:00 丁度に多少の動きはありましたが、出来高が突出しているわけではないので、はっきりとインデックスファンドからの「買いがあった」とは断言できません。
この時間の値幅はかなり小さく、しかも陰線が出ていて、下落基調だったことが分かります。もしかしたら、買い需要より多くの人が、イオン株売却に伴う、先物買いにあわせて、「先回り買い」をして、15:00
に「売る」戦法を取っていて、空振りしたのかも知れません。
いずれにせよ、買い需要で儲けるのは、厳しいようです。