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2004/8/8
イオンが株式分割すると、俺らが儲かる!?

日経平均の採用銘柄であるイオンが、2004年8月20日に1:2の株式分割を行います。実際の権利付き最終売買日は、来週の月曜日(2004年8月16日)です。

日経平均採用のインデックスファンドは、実際の日経平均に合わせるため、今所持しているイオンの株を、8月16日に半分売る必要があります。それと同時に、同じ日に、半分売ったお金の分だけ、他の日経平均銘柄を購入する必要があります。

このイベントを狙うことによって、我々が儲けを出す方法を考えて見たいと思います。

まずは、日経平均のインデックスファンドによって、どれくらいの買い需要が見込めるか、確かめて見ます。

昨年秋に日経平均の入れ替えによって、日揮とコナミが新規採用となりました。この時の、入れ替え前日に購入された「株数」が、ほぼ、インデックスファンドによって、所持されている株数と考えて良いと思います。

9月25日採用の日揮(1963)の場合
銘柄名 日付 始値 高値 安値 終値 出来高
日揮 2003年9月24日 948 980 940 974 12,640,000

10月1日採用のコナミ(9766)の場合
銘柄名 日付 始値 高値 安値 終値 出来高
コナミ 2003年9月30日 3,180 3,570 3,140 3,570 11,360,800

ほぼ、両方とも似たような出来高ですね。ここから、インデックスファンド全体では、約1千万株を所持していると推定できます。ということは、日経平均の銘柄が 1:2 の株式分割する場合、約500万株を売る必要があります。

今回のイオン株の分割も、約500万株を売る必要があります。イオンの1日の出来高は、大体100万株ですので、約5日分の売りが出ます。

この5日分の「売り」がどれほど影響があるかは、想像しにくいですが、「引け値保証」の関係上、間違いなく、引け間際に売りが殺到するでしょう。

それを狙って、もう勘の鋭い人は、イオン株の「信用売り」をしているはずです。そして8月16日の引け間際の下げに合わせて「買い戻す」ことを考えているはずです。実際、先週の信用売り残は、150万株も増加しました。

結論1
・8月16日にイオン500万株の売りを狙って、事前に「信用売り」を行い、引け間際の下げに合わせて「信用買い」を行い、利益を得ることが可能である。ただし、「信用売り」残高には気をつけること。500万株を超えると、需要と供給の関係から、当日の下げが難しくなる。

(8/9 追記)
8月9日に、「信用売り」返済が100万株もありました。先週の「信用売り残」の増加は、公募割引率による、利ざや稼ぎだったようです(事前に「信用売り」し、その後公募株を「現渡」することで、利ざやを得ます)。ということは、当日の引け間際の下げが狙えそうです。



さて、今までは、イオン株の「売り」のみ注目してみましたが、逆に、この売り換金によってもたらされる、その他の株の「買い」について考えて見ましょう。

まずはイオン株は、日経平均全体の、どれくらいの割合を占めている(日経平均寄与度)のか、計算してみます。下の表は、2004年8月6日の終値段階での寄与度を表しています。

証 券 銘柄名 社名 株価 みなし比率 みなし株価 寄与度
6971 京セラ 京セラ(株) 7940 1 7940 3.12%
6762 TDK TDK(株) 7260 1 7260 2.86%
6857 アドテスト (株)アドバンテスト 6720 1 6720 2.64%
6954 ファナック ファナック(株) 6240 1 6240 2.46%
8035 東エレク 東京エレクトロン(株) 5530 1 5530 2.18%
9433 KDDI KDDI(株) 534000 0.01 5340 2.10%
4502 武田 武田薬品工業(株) 5230 1 5230 2.06%
7751 キヤノン キヤノン(株) 5190 1 5190 2.04%
7267 ホンダ 本田技研工業(株) 5190 1 5190 2.04%
9737 CSK (株)CSK 4500 1 4500 1.77%
4704 トレンド トレンドマイクロ(株) 4410 1 4410 1.74%
9735 セコム セコム(株) 4300 1 4300 1.69%
7203 トヨタ トヨタ自動車(株) 4160 1 4160 1.64%
8264 イトヨーカ (株)イトーヨーカ堂 3990 1 3990 1.57%
4503 山之内 山之内製薬(株) 3830 1 3830 1.51%
6758 ソニー ソニー(株) 3750 1 3750 1.48%
4063 信越化 信越化学工業(株) 3740 1 3740 1.47%
8267 イオン イオン(株) 3620 1 3620 1.42%

イオンは、255銘柄中18位の1.42%と、かなり大きめの割合です。この1.42%が、株式分割によって、論理上 0.71% まで下がります。

減った 0.71% 分は、イオンを含めた255社の株購入に当てられます。実際には、全ての銘柄に対して、約7万株(みなし額面50円換算)の買い需要が発生します。

計算式:
1銘柄あたりの購入株数=イオン500万株の売却代金/(日経平均*除数
)

ここで注目するべき点は、出来高が少ない日経平均銘柄は、この購入によって影響を受けることです。2004年8月6日の出来高から、1日の出来高が少ない銘柄を探してみると、以下のようになります。

証 券 銘柄名 みなし株価 寄与度 出来高 買い需要(日数分)
2801 キッコマン 936 0.37% 136000 0.523802803
1721 コムシスHD 771 0.30% 167000 0.426569948
2536 メルシャン 287 0.11% 190000 0.374932533
7102 日車両 297 0.12% 195000 0.365318878
2201 森永 242 0.10% 201000 0.354413837
2602 日清オイリオ 467 0.18% 207000 0.344140972
9605 東映 417 0.16% 227000 0.313820182
4272 日化薬 599 0.24% 229000 0.311079394
2002 日清粉G 1085 0.43% 237000 0.300578824
6674 GSユアサ 267 0.11% 257000 0.277187476

買い需要トップはキッコーマンで、約0.5日分発生します。正直、あまり影響がないようにも思えますが、注目度が低いがために、引け間際の上昇を狙うには、なかなか面白いのではないかと思っています。

過去の例として、昨年度の日経平均銘柄入れ替え時のキッコーマンの2003年9月30日の株価の推移です。この時は、日経平均寄与度が大きい「コナミ」を購入するために、逆に「売り」需要(コナミを買って、他の254銘柄を売る)が発生しました。

銘柄名 日付 始値 高値 安値 終値 出来高
キッコマン 2003年9月30日 730 734 726 726 655,000

安値と終値が一致し、引け間際で売られたことが分かります。とはいえ、出来高も多く、その日は 1-2% 程度の下げで終わりましたので、お買い得度は今一歩という所でしょうか。

結論2
・株式分割に伴い、日経平均銘柄の買い需要が7万株発生するため、出来高が少ない銘柄の上昇を狙うのも良い方法である。但し、それほど上昇は期待しない方が良い。


8月16日に向けて、株価の変動のよる日経平均への寄与度の上下や、お盆時期による出来高の変動によっては、今後状況が変わるかも知れません。8月15日(日)に、最新情報をお届けしたいと思っています。

ライン

2004/8/15
イオンが株式分割すると、俺らが儲かる!?(2)

さていよいよ明日、2004年8月16日(月) は、イオン(8267)の 1:2 株式分割の、権利付き最終売買日です。

この株式分割による「インデックスファンドの売り」について、どこでも、ほとんど話題として取り上げられていません。日経平均採用銘柄が株式分割した例がほとんどないので、その影響について推測するのが難しいためでしょうか?

では早速、先週お約束したイオンの日経平均への寄与度と、他の日経平均採用銘柄への影響について、最新情報をお伝えします。

まずは、2004年8月13日(金)の終値段階での寄与度を見てみましょう。

証 券 銘柄名 株価 みなし比率 みなし株価 寄与度
6971 京セラ 7530 1 7530 3.02%
6762 TDK 6850 1 6850 2.75%
6857 アドテスト 6620 1 6620 2.66%
6954 ファナック 5950 1 5950 2.39%
8035 東エレク 5450 1 5450 2.19%
9433 KDDI 531000 0.01 5310 2.13%
7267 ホンダ 5110 1 5110 2.05%
4502 武田 5070 1 5070 2.04%
7751 キヤノン 4950 1 4950 1.99%
9737 CSK 4480 1 4480 1.80%
4704 トレンド 4430 1 4430 1.78%
9735 セコム 4180 1 4180 1.68%
7203 トヨタ 4140 1 4140 1.66%
8264 イトヨーカ 3880 1 3880 1.56%
4503 山之内 3700 1 3700 1.49%
4063 信越化 3660 1 3660 1.47%
6758 ソニー 3600 1 3600 1.45%
8267 イオン 3550 1 3550 1.43%

先週と変わらず、255銘柄中、第18番目です。寄与度も先週から +0.1% と、ほぼ変わっていません。

次に、イオン株売却による、他の日経平均銘柄の購入株数については、前回ご紹介した計算式に従い、以下のようになります。

(5000000*3550)/(23.156*10757.20) = 71,258 (株)

従って、全ての日経平均全銘柄について、月曜日に7万株余りの購入需要が想定できます。

この7万株の購入による買いインパクトについて、木曜日時点での、1日の出来高が少ない日経平均銘柄を取り上げて見ます(金曜日はSQ算出日による出来高が増えていたため、除外します)。

証 券 銘柄名 みなし株価 影響割合 出来高 買いインパクト
9301 三菱倉 1000 0.39% 191000 0.371092463
2002 日清粉G 1081 0.42% 200000 0.354393302
2201 森永 243 0.10% 207000 0.342408988
8803 平和不 381 0.15% 245500 0.288711448
2536 メルシャン 282 0.11% 251000 0.282385101
7102 日車両 295 0.12% 267000 0.265463148
1861 熊谷組 227 0.09% 275000 0.257740583
8232 東急百 160 0.06% 281000 0.252237226
4543 テルモ 2595 1.02% 282000 0.251342767
6508 明電舎 210 0.08% 298000 0.237847854

前回はキッコーマンがトップでしたが、今回は三菱倉庫がトップで、0.3日分の買いが想定されます。ちなみにキッコーマンは、この日は19番目の、0.2日分でした。

結論1
株式分割に伴い、日経平均全銘柄の買い需要が7万株発生する。これによる出来高が少ない銘柄の上昇を狙う方法もある。しかしながら、その日によって出来高は大きく変わり、買いインパクトも0.2-0.5日分と少ないため、成功するには、かなり難易度が高い。

次に月曜日の「インデックスファンドの売り」による、イオンの株価への影響を考えて見ることにしましょう。

最初に考慮すべき点として、このインデックスファンドの売りを見越した、先回り「信用売り」の存在です。先回りが多ければ、当日に「買戻し」を行うために、株価の下げが緩やかになります。

この先回りの「信用売り」の規模を確かめるために、日証金の「貸株残高」(信用売り残高)の推移を見てみます。

下記の表は、イオンの公募発行価格が決定した7月29日以降からの推移です。公募発行価格は3577円でした。

日付 始値 高値 安値 終値 前日比 出来高 貸株残高 融資残高
7/29 3,790 3,810 3,630 3,650 -180 2,093,700 421,700 338,600
7/30 3,650 3,830 3,640 3,820 170 4,034,800 1,213,500 186,300
8/2 3,840 3,850 3,750 3,850 30 2,102,000 1,472,000 185,200
8/3 3,870 3,880 3,750 3,770 -80 1,198,600 1,508,700 204,500
8/4 3,730 3,730 3,640 3,680 -90 1,272,000 1,578,200 205,500
8/5 3,700 3,710 3,640 3,640 -40 993,600 1,578,300 237,300
8/6 3,610 3,660 3,600 3,620 -20 1,722,400 1,769,200 215,700
8/9 3,600 3,670 3,560 3,670 50 2,770,100 587,800 285,400
8/10 3,620 3,660 3,610 3,660 -10 1,459,900 445,900 310,500
8/11 3,670 3,710 3,660 3,710 50 2,198,900 384,600 398,600
8/12 3,700 3,710 3,640 3,660 -50 1,421,800 256,400 442,600
8/13 3,660 3,660 3,540 3,550 -110 2,273,900 133,900 535,100

「貸株残高」の 7/30 から 8/6 までの推移に注目して下さい。公募が決定した翌日(7/30)に「貸株」が100万株も増え、受け渡し日(8/9)に100万株が解消されました。

この現象は、公募割引率分だけ儲ける方法を、かなりの人が実行したために起こったと思われます。その方法とは、割引の公募株の購入が確定した時点(株価 3650円)で「信用売り」し、公募発行額(3577円)で手に入れた株を、「現渡」することによって、その差額 (3650-3577 = 73円)を確実に儲ける方法です。

ところで、7/30に、100万株を超える強烈な「信用売り」が発生したにも関らず、株価が上昇しているのは不思議ですね。誰かが買い支えを行ったのでしょうか? 公募価格割れを防ごうとする幹事の野村證券の仕業でしょうか? 謎ですね。

さて、ここからが本題です。8/10 からは、株価が徐々に下落する一方で、貸株残高が減り、融資残高が増えています。つまり、現物売りが増えていることを示しています。また、出来高も結構あります。

ここから分かることは、
1. 先回り「信用売り」を実行している人はわずかである。従って、月曜日の強力な「買戻し」の勢力にはならない。
2. ここ最近、出来高が多く、現物売りがじわじわ増えている。これは月曜日に予定している500万株売りのうち、何割かをリスク回避のため、事前に売っているかもしれないし、 公募応募者の利益確定売りかも知れない。


以上のことから、月曜日の展開を想像してみましょう。

結論2
積極的な「買い手」が不在のため、朝一番から株価はゆっくりと切り下がる。出来高が500万株に近づくにつれ動きが止まり、引け際に一気に株価が下がる。もしかしたらストップ安近辺まで下がるかも知れない。


いわゆる「先買いがあまり存在しないTOPIX買い」の逆の展開と予想しました。先に「信用売り」し、引け間際に「買戻し」を行えば、がっぽり儲けられそうです。

しかしながら、私の予想はよく外れます。気をつけてくださいね。

今回の株式分割の例は、歴史上に名を残す大事件となるのでしょうか。それとも何事もなく終わるのでしょうか。楽しみです。

--
(8/16 結果追記)
イオンの株価について、結局は前日比 -190円安(-5.35%)の 3360円で引けました。出来高もなんと 767万株も発生しました。

今日の日証金の「貸し株残高」を見ると、150万株ほど増えています。インデックスファンドの「現物売り」と、市場参加者の「信用売り」の両方が発生したために、出来高が膨れ上がったようです。

それではイオンの一日チャートをご覧下さい。



今日は、MarketSpeed でずっと株価を追っていました。引け間際の怒涛の下げは予想通りでしたが、最後の3分前までは、全くその前兆を感じませんでした。

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14:56分:
じわじわと株価が上昇し、このまま寄り付きの 3500 円近辺まで戻すような勢い。誰しもが「買い方」の勝利を信じて疑わないような展開。

14:57分:
3480円近辺で、売り板と買い板の株数が突然増え始める。10万株単位の板が並び、バトルの予感が走る。そして間もなく「売り方」の 3470円の 99,900株の売りを合図に、「売り方」と「買い方」が、万株単位の売買で、激しい食い合いを始める。

14:58分:
しばらくは、3460-70円間の食い合いのバトルが繰り広げられる。3450円を突破されたあたりから、明らかに「売り方」優勢。「買い方」は10万株単位の板をずらり並べ、防御を図るが、次々と食われ、10秒単位で確実に値段が切り下がる。間もなく3400円を切り、一体どこまで下がるのか、全くわからなくなる展開。

14:59分:
「買い方」が動きを止めるために、3360-80円近辺で必死に10-30万株の板を並べるも、次々と食われる状況。しかしながら、ここで値段が下げ止る。あまりにも売買の動きが激しいために、どこの値段で成立したか、板状況では全く分からない状態。

15:00分直前:
3360円近辺で、一瞬売買および値動きが止まる。嵐の前の静けさのよう。このまま終了かと思った次の瞬間、引けで100万株超の大激突。結局は 3360 円で引ける。
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一方で、日中は意外と下落しませんでした。買い手不在かと思われていたのですが、下落しそうな雰囲気になると、要所要所で10万株規模の巨大な買いが入り、日中の株価を支えました。

こんな大型の買いが可能なのは、証券会社か機関投資家あたりでしょうか。ひとつ考えられるのは、野村証券のAO(オーバーアロットメント)の買戻しです。公募時に割り当てられた243万株まで買い戻し可能です。

今日、大半の買戻しを実行したのではないでしょうか。手口が公開されていれば確認可能なのですが、残念ながら真実はわかりません。

今日の VWAP は、3423.8355円でした。終値が 3360円ですので、引け値保証の場合の証券会社の儲けは、(3423.8355-3360) * 500万株 = 3億2000万円 程度。ナイスな数値ですね。

いずれにせよ、日経平均銘柄の株式分割の場合は、事前に「信用売り」 を行い、引け間際で、「買い戻し」すると、もれなく当たりが出るようです。

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(8/17 結果追記 Part2)

上記「結論1」にあったような、インデックスファンドによる全日経平均銘柄の「7万株の買い需要」が実際起きたかどうかは結局、よく分かりませんでした。また、インデックスファンドは、日経平均銘柄の株を買う以外に、「日経225先物を買う」選択肢もあったようです。

そこで、インデックスファンドの「日経225先物の買い」が実際にあったのかチェックするために、8/16日の「日経225先物」の値動き(最初の図)と出来高(2枚目の図)について、期近(04-09) の5分間チャートを見てみます。(Market Speed からの抜粋です)





確かに 15:00 丁度に多少の動きはありましたが、出来高が突出しているわけではないので、はっきりとインデックスファンドからの「買いがあった」とは断言できません。

この時間の値幅はかなり小さく、しかも陰線が出ていて、下落基調だったことが分かります。もしかしたら、買い需要より多くの人が、イオン株売却に伴う、先物買いにあわせて、「先回り買い」をして、15:00 に「売る」戦法を取っていて、空振りしたのかも知れません。

いずれにせよ、買い需要で儲けるのは、厳しいようです。

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