毎朝8:30分頃に発表される「寄り付き前の外資系証券経由の売買動向」は、市場関係者の注目の的です。ここ1年間の株価上昇は、外国人投資家が大きく貢献したため、その動向は気になる所です。
ここで発表される数値は、毎朝の株式市場ニュースにも取り上げられます。この数値が買い越しか、売り越しかによって、その日の相場の雰囲気が決まってしまうと思えるほどです。
そこでこの数値をうまく利用して、市場から利益を得る方法はないのでしょうか。
最近気になったのは、買い越しであれば、その日の「始値」より「終値」が高くなり(陽線)、売り越しであれば、その逆になる(陰線)ことが、感覚的に多いように思えたのです。単なる私の勘違いかも知れません。
しかし、もしこれが本当であれば、日計り取引のデイトレードに非常に有効です。
買い越しであれば、「寄り付きで株を買って、大引け間際で株を売る」
売り越しであれば、「寄り付きで株を空売りして、大引け間際で株を買い戻す」
を繰り返すだけで、利益が出ることになります。
また、株式の購入または売却を予定している場合、寄り付きで売買すべきか、それとも大引け間際で売買すべきかの指針にもなります。
それでは早速、ここ100日間(2004/1/9〜2004/6/4)の動向について調べてみましょう。まずは、ここ100日間の、外資系証券経由の寄り付き前「買い越し日数と売り越し日数」について調べてみます。
最近は 54対46 と、ほぼ拮抗していることがわかります。
次に、寄り付き前「買い越し日は寄り付き買い、大引け売り」、「売り越し日は寄り付き空売り、大引け買戻し」を、毎日実行した場合の利益率を見てみましょう。
「買い越し日は寄り付き買い」、「売り越し日は寄り付き空売り」の利益率(1)
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日経平均 |
TOPIX |
店頭指数 |
100日総利益 |
24.63% |
27.88% |
38.66% |
1日あたりの利益 |
0.25% |
0.28% |
0.39% |
利益が出た日数 |
60 |
64 |
56 |
損失が出た日数 |
40 |
36 |
44 |
なんともすばらしい成果です。損失が出る日も多いですが、それも含めた 100日通算での利益ですので、年率に換算すれば、この数値の2.5倍程の利益が生まれます。日経平均であれば、年率75%程、店頭指数であれば100%に近い利益です。
手数料と信用代金を別途払うとしても、年率75%は、他に何もしなくても、十分寝て暮らせる数値です。
でもちょっと待ってください。日経平均などの指数値は「気配値」でも算出してしまいます。要するに寄り付き時の誤差が大きく、実際の取引には使えない場合も多いのです。
そこで、本当に使える数値として、「日経225先物」「TOPIX先物」「楽天の株価(店頭指数先物が存在しないため)」を利用してみることにします。
「買い越し日は寄り付き買い」、「売り越し日は寄り付き空売り」の利益率(2)
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日経225先物 |
TOPIX先物 |
楽天株価 |
100日総利益 |
13.79% |
17.97% |
30.30% |
1日あたりの利益 |
0.14% |
0.18% |
0.30% |
利益が出た日数 |
51 |
54 |
53 |
損失が出た日数 |
49 |
46 |
47 |
(1日の平均変動率) |
0.78% |
0.75% |
2.21% |
多少利益が減少してしまいましたが、それでも素晴らしい数値です。日経225先物では、年率換算
34.5%, 楽天であれば、70% の利益です。
表中、一番下の数値を見ると、1日の平均変動率は、日経225先物で 0.78% ですので、100日での総利益13.79%
は、1-2日で利益が吹き飛ぶことはない、確実な利益のように思えます。思わず先物を始めてみようかと思える数値です。
では毎日の利益率をグラフにしてみてみます。

なんと、よく見ると、グラフ中の丸印で囲んでいるあたり(4月末から5月末の株価が乱高下した期間)の利益率が非常に良いのがわかります。調べてみると、TOPIX先物も、楽天株価も同じような傾向を表していることが分かりました。
そこで、株価の乱高下が激しかった最近の25日を除いた、75日間(2004/1/6〜2004/4/26)と、その後の25日間(2004/4/27〜2004/6/4)での利益率はどうなのでしょうか。表にしてみます。
「買い越し日は寄り付き買い」、「売り越し日は寄り付き空売り」の利益率(3)
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日経225先物 |
TOPIX先物 |
楽天株価 |
75日総利益 |
-1.44% |
2.91% |
11.17% |
1日あたりの利益 |
-0.02% |
0.04% |
0.15% |
残念ながら、当初の75日間は全然利益になっていません。日経255先物であれば、損失が出てしまっています。TOPIX先物も、年率換算で7.5%
と、とても納得できない数値です。
「買い越し日は寄り付き買い」、「売り越し日は寄り付き空売り」の利益率(4)
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日経225先物 |
TOPIX先物 |
楽天株価 |
25日総利益 |
15.23% |
15.06% |
19.14% |
1日あたりの利益 |
0.61% |
0.60% |
0.77% |
一方で、最近の25日間では素晴らしい成績です。日経255先物、TOPIX先物であれは、年率換算で150%の利益になります。
結論:
・株価が乱高下しない時期には、寄り付き前の外資系証券経由の売買動向では、当日の市場状況の予想ができず、利益を得ることはできない。
・株価が乱高下する時期には、寄り付き前の外資系証券経由の売買動向に合わせて売買すると、年率150%ほどの大きな利益を得ることができる。
なぜこのような現象が起きるのでしょうか? 理由を考えると、「株価が乱高下する場合には、市場の勢いで当日の動きが一方方向になりやすく、その方向が、外資系証券経由の売買動向に表れる」ということでしょうか。
株価が乱高下する時期には、「寄り付き前の外資系証券経由の売買動向」を気にかけるべきですが、それ以外は無視してしまうのがよさそうです。

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