2007/6/10
会社四季報の影響力を確かめる
いよいよ今週の金曜日、6/15日に会社四季報の発売があります。発行部数は約70万部もあり、書店にはいつも山積みで並べられます。この人気の象徴ともなっている竹田和平さんの「四季報が間違えたら、私も間違います」は、とても有名な言葉です。
ここまで多くの人に参考にされているのであれば、発売日以降に株価へ影響を与えているのではないでしょうか。
早速調べてみたいと思います。
四季報の特色として注目されるのは「業績記事」「材料記事」と「業績予想」の欄
でしょう。その中でも会社の状態をピンポイントで表している
「業績記事」
の見出しは、さらに注目される部分です。四季報のオフィシャルブックの
株で成功するための「会社四季報」徹底活用法
でも下記のような記載があります。
「業績記事で一番重要なのは【増益】【順調】などのように冒頭で掲げられる見出しです。その会社の短期的な「成績」を言い表した要点中の要点です」
この見出し用語は、ある程度標準化されています。そこで今回は、ここで使われている用語が株価にどれだけ影響を与えるのかを調べてみることにしました。
今回対象とする用語はプラスイメージ側として、最高を表す
「絶好調」
、四季報前号から更に伸びたことを示す
「増額」
、反転期待の
「底入れ」
です。マイナスイメージ側として、これらと全く正反対の意味となる
「赤字拡大」「減額」「反落」
です。
これらの用語が使われた銘柄をグループ化し、それぞれについて株価の平均推移を見てみます。対象期間は2007年春号の発売日近辺から先週金曜日までの約3ヶ月間です。用語のすぐ後のカッコ内数値は銘柄数を表しています。
また、市場の影響を排除するため、発売日前日の終値を基準として、東証一部、大証一部銘柄はTOPIXで、それ以外の市場はJASDAQ平均で差分調整します。また、流動性が低い「制度信用対象外」銘柄を除外しています。更に史上に残る暴落を演じたオー・エイチ・ティー(6726)も異常値として除外しています(【増額】の見出し)。
やはり影響力は甚大ですね。プラスイメージの「絶好調」「増額」銘柄は四季報発売前あたりから右肩上がりで
「絶好調」は約2ヶ月間、「増額」銘柄は約1ヶ月間
、影響力を保持し続けます。
またマイナスイメージの
「赤字拡大」「減額」
については、
影響がかなり短期的で、約2週間程度がんがん売られます。「底入れ」や「反落」はあまり影響が出ていません
。
「赤字拡大」については、途中からプラス側に推移していますが、このグループは4銘柄しかなく、そのうち
不動テトラ(1813)
が株価倍以上になったための影響が出ています。不動テトラ以外の3銘柄は株価が下落しています。
もう少し細分化してみましょう。ここ最近は伝統市場銘柄と新興市場銘柄について2極化の傾向が出ています。そこで
「伝統市場(東1、大1)銘柄のみ」「新興市場銘柄のみ」の2つに分けて
グラフ化してみます。「絶好調」の用語が使われたのは東証一部の銘柄だけですので、新興市場のグラフには出てきません。
伝統市場でも新興市場でも、そう大きく傾向は変わりません。伝統市場の「増額」銘柄と新興の「底入れ」銘柄が途中から反落しているのが多少目に付きます。「赤字拡大」は銘柄数が少ないため、あまり参考にはなりません。
最後に
、マイナスイメージの用語を使われた「減額」「反落」について、空売り戦略が可能か
どうか調べて見ましょう。「貸借銘柄」のみを対象に、グラフ化してみます。
結構いけそうですね。特に「減額」については、急激な値下がり傾向にあります。
ここで全体をまとめてみましょう。わずか四季報1回分のサンプルだけですので、少々心細いですが、とりあえず言い切ってしまいます。
結論
:
会社四季報の影響は絶大である。プラスイメージが大きい用語を使われた銘柄は、発売から約1ヶ月間、影響が保持される。またマイナスイメージが大きい用語を使われた銘柄についても、発売から約1-2週間、影響が保持される。
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参考図書:
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編集後記(From the Editor)
今回の調査は手作業が多く結構手間がかかりました。結果が出るかどうか分からなかったので不安一杯だったのですが、結果が分かった時には「ああ、やっぱり調査してみてよかった」と、しばらくひとりで悦に入っていました(笑)。
以前に夕凪通信で「絶好調」と表記された銘柄についての急騰をお知らせしたのですが、その後も全体的に順調に伸び続けました(但し、
住友チタニウム(5726)
はかなり下げました)。短期でも長期でもおいしい銘柄ですね。
因みに今回の調査は、四季報CD-ROMの検索機能を利用しました。四季報CD-ROMは予約購読すれば発売前日に宅配されます。うまくすればザラ場時間中に手に入れることができます。四季報を書店で購入しようとした時点で、他者より一歩遅れを取っていることを知っておいてくださいね。
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くれぐれも、自己責任の上で判断してくださいね!
GOOD LUCK!
(参考)2007年春号で「絶好調」と掲載された銘柄と、
発売日前日終値からの株価水準(TOPIX調整済み)
コード
銘柄
株価水準(6/8)
3405
クラレ
102.02%
4617
中国塗料
133.14%
6141
森精機製作所
126.71%
6767
ミツミ電機
98.24%
7974
任天堂
123.59%
5726
住友チタニウム
80.98%