2010/8/12
「寄り付き前の外資系証券経由の注文状況」
を利用する!
毎朝8:00過ぎに市場ニュースとして流れる
「寄り付き前の外資系証券経由の注文状況」
。非公式な情報とはいえ、当日の相場の強さを推測するために参考としている投資家も多いのではないでしょうか。
それならいっそこのと「寄り付き前の外資系証券経由の注文状況」を利用して何か新しい投資法が発見できないのかを検証してみました(日本証券新聞8/12日号のコラムにも掲載したものです)。
最初に行ったのは「寄り付き前の外資系証券経由の注文状況」と「その日の日経平均先物との値動き」の関連です。具体的には、
寄り付き前の外資系証券経由の注文状況について、買い越し枚数、売り越し枚数 の割合と、始値で購入し、後場の大引けで売却した場合の利益率(当日上昇率)について、散布図に表わしました。
対象期間は2001年〜2010年7月末までの約10年間です。
横軸: (買い越し枚数-売り越し枚数)/(買い越し枚数+売り越し枚数)
縦軸: (終値-始値)/始値。
結果は決定係数(※)R^2の値が0.07%で一次曲線が若干上向きであるため「順張り」すると効果ありそうな感じです。しかし、R^2の値が 0.07%。毎日投資機会があるとはいえ、最低でも1%近くまで欲しい所です。
(※決定係数 - 対象にどれだけ説明力(影響力)があるのかの値。上記のグラフであれば寄り付き前の外国証券経由の注文状況が、1日の株価変動にどれだけ説明力(影響力)があるかの値となる。値はエクセルが自動的に計算してくれる! 便利!)
気を取り直して、一次曲線の傾きに沿って、単純に「寄り付き前の外資系証券経由の注文状況」が買い越しであれば、前場寄付で日経平均先物を買って後場の大引けで売り決済し、売り越しであれば、その逆のポジションを取る(前場寄付で日経平均先物を売り、後場大引けで買い決済)
「1日順張り投資」
を実行した場合の結果を見てみます。
おおおお、なんとなく右肩上がり。これはいけそうですね。早速実践したいと思われましたか? でもちょっと待って下さいね。
グラフは超ロングスパンのものであり、所どころ利益の伸びが停滞しているのが分かります。特に2004年〜2008年の間は元に戻すまで4年近くかかっています。
また、1回の利益率は平均して0.049%、約5円分に相当します。1円分くらいは往復の手数料で取られるため毎日4円分の利益。ラージなら4000円程度。1年250日続けたら約100万円/年
。ラージであれば1日で10万円くらいの損得は平気で動くでしょうから、それに比較して利益は少ないです。やれなくはないけれど正直かなりツライでしょう。
(8/13追記)
「寄り付き前の外資系証券経由の注文状況」と「日経平均先物の当日上昇率」の関係について、意味があるかどうか(有意差)検定してみました。そうしたらP値は0.196となり、有意水準は20%近く。一般的には棄却域にあり2つの関係に「意味はない」との結論です。
そこでもう少し効率を上げる方法がないものかと、大きく買い越しした場合や大きく売り越しした場合のみ仕掛けるケースもいろいろと検証したのですが、残念ながらどれも安定しませんでした。
それなら投資期間を変更してみようということで「1日」ではなく「前場」の場合について、同じく散布図に表わしました。対象期間はデータ取得できる範囲の関係上、2006年9月過ぎ〜2010年7月末までの約4年間です。
結果はR^2の値が 0.41%と向上し、一次曲線が若干下向きであるため「逆張り」すると効果ありそうな感じです。
この一次曲線に沿って、単純に「寄り付き前の外資系証券経由の注文状況」が-4%以下の買い越し(4%以上の売り越し)であれば、前場の寄付で日経平均先物を買って前場の引けで売って決済し、逆であれば、その逆のポジションを取る
「前場逆張り投資」
を実行した場合の結果を見てみます。
注: 単純に買い越しなら売り、売り越しなら買いの逆張りグラフ(0%を境)も作ってみましたが、結果は-4%の境にしたものよりも悪化しました。
すごい不安定なグラフですね。大きく傾向が変わったのはリーマンショック以降です。それでも利益を出せた期間は短く、とても使えそうにありません。
この時点で調査やりつくし感があり、更なる効率化についてはあきらめかけていました。しかしふとある事に気がつきました。1日なら「順張り」、前場なら「逆張り」がいいのであれば、後場だけ「順張り」すれば、もっと効率が上がるのではないでしょうか。早速チャレンジです。
そこで散布図に表わしてみました。対象期間はデータ取得できる範囲の関係上、2006年9月過ぎ〜2010年7月末までの約4年間です。
結果はR^2の値が 0.74%と向上し、一次曲線が若干上向きであるため、想定通り順張りに効果がありそうな感じです。それでもR^2の値が0.74%。1%は超えて欲しいところなのですが。まあ、やってみましょう。
(8/13追記)
「寄り付き前の外資系証券経由の注文状況」と「日経平均先物の後場上昇率」の関係について、意味があるかどうか(有意差)検定してみました。そうしたらP値は0.008となり、2つの関係に「意味はなくはない(=意味はある)」との結論です。
前場は黙って見送り、「寄り付き前の外資系証券経由の注文状況」が買い越しであれば、後場の寄付で日経平均先物を買って後場の大引けで売り決済し、売り越しであれば、その逆のポジションを取る(後場の寄付で日経平均先物を売って後場の大引けで買い決済)
「後場順張り投資」
を実行した場合の結果を見てみます。
ようやく面白いグラフが出てきました。理由が分からないのですが、リーマンショック以降に効果てきめんです。偶然なのか、それとも理由があるのか...。理由が分かればもう少し自信持って投資できるのですが。
1回の平均利益率は0.09%。約9円分に相当します。1円分くらいは往復の手数料で取られるため毎日8円分の利益。ラージ1枚なら8000円程度。
1年250日続けたら約200万円/年の利益。ラージ10枚なら約2000万円/年の利益(笑)。やれなくはないけれど、まだそれでもかなりツライですね...。
結論
:
「寄り付き前の外資系証券経由の注文状況」について「後場順張り投資」によって利益を出す事ができる。しかしながら、利益率が低く停滞時期もあるため、投資する場合はそれを覚悟して臨むべし
(8/13追記)
結論から「1日順張り投資」の記述について除きました(有意差検定で棄却域にあったため=関係は意味がない可能性が高い)。
流動性が高いのでポジション枚数を増やしても自己インパクトが少ないのがメリットとしてはあります。ただ利益の割にボラが大きいので、他の先物投資手法と混ぜて使う方がよいのではないでしょうか。
Special Thanks:
・マネーヘッタ・チャンさん
・山下さん
・
トレーダーズ・ウェブ
・
株価データダウンロードサイト
・
カワサキトレスタ!
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編集後記(From the Editor)
約1年ぶりに投資戦略を更新しました。最近まで、ここで公表している投資戦略をベースにした投資手法で結構利益が出ていたのですが、最近はちょっと停滞気味でした(笑)。それじゃあいけないということで、いくつかまた新しい投資手法を発掘していきたいと考えております。
復活初回は、利益がビミョーな投資手法(汗)。気が向いた時にもう少し掘り下げてみたいと思ってはいます。例えば、「
米国相場逆張り法
」と方向性があった時だけ投資を行うとか、為替も考慮してとか。ご興味がありましたら皆様もチャレンジしてみてください!
しかし、もし前場と後場の区別なくなってしまう改革が実行されたら、この投資手法も終わりを迎えます。少々寂しいですが、その時はまた新しい投資手法を探すと言う事で。
そういえば、自分で昔に「
寄り付き前の外資系証券の売買動向を利用する
」と全く同じ観点で投資戦略を作っていたことに今気がつきました(笑)。昔と随分と解析方法が違っています。あの頃は手当たり次第に確率統計の知識なしにやっていました。今はちょっとはましになったかな??
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くれぐれも、自己責任の上で判断してくださいね!
GOOD LUCK!
おまけ。今年に入ってからの「後場順張り」結果グラフを掲載します(8/12)。
いい感じですね(1%は約100円分に相当します。最高で1400円分程度です)。ただ7月以降は停滞気味。それでも続ける気力が出るかどうか...。