2006/8/6
落ちてくるナイフは計画的につかみ取れ!
投資の格言に
「落ちてくるナイフをつかもうとするな」
といったものがあります。株価急落時に買いに出かけると、大きな怪我を負う可能性が高いという意味です。経験的に納得できそうにも思えますが、
本当にそうなのでしょうか?
というのも、
夕凪通信
にて
6/22日
にご紹介しました「日経平均3%急落後は、その後上昇する可能性が高い」、そして
7/16日、7/17日
にご紹介しました
「株 勝率80%の逆張りシステムトレード術」
を見ても、
急落は実は絶好のチャンスではないのか?
と思うようになりました。
そこで今回は「株 勝率80%の逆張りシステムトレード術」の手法(今後 斉藤方式と呼びます)を日経平均に当てはめてみて、落ちてくるナイフが本当に危険かどうなのかを検証してみたいと思います。
「早速検証」と行きたいところですが、実はそのままでは日経平均には当てはめられません。買いの条件のひとつの「25日平均移動線からの乖離率-25%以上」といのが、全く出現しないためです。もうひとつの買い条件「5日平均移動線からの乖離率-10%以上」も、数年に1度あるかないかです。
そこで日経平均用に乖離率の値を修正します。買い条件は「5日平均移動線からの乖離率-3%以上」のみとします。また、買い増し条件も「初回購入時から-3%以上値下がり」として、売り条件も「買増していない場合は買値から、買増していた場合は買増値から3%以上値上がり」とします。
買い条件:
・終値で5日平均移動線からの乖離率-3%以上ならば、翌日の朝一番で成行買い
買増条件:
・買値よりも終値で -3%以上下落した場合、翌日の朝一番で成行買い。但し買い増しは1回のみ
売り条件:
・買増していない場合は買値から、買増していた場合は買増値から、終値で3%以上上昇した場合、翌日の朝一番で全株成行売り
・「最後の買い日」より、土日も含め2ヶ月間経過した場合は、翌日の朝一番で全株成行売り
買い条件が成立し、売り条件に到達する前に、再度買い条件が成立しても、その回は無視することにします。
それでは早速結果を見てみましょう。私の手元にある日経平均のデータの中で、「始値」と「終値」を別に表示をはじめた 1986年10月以降について調べてみました。ここでの「勝ち」は売却時にプラス、「負け」は売却時にマイナスの取引を示しています。
年
投資回数
平均利益
平均保持日数
年利回り
勝ち回数
負け回数
合計利益
1986
2
3.36%
4
797%
2
0
6.72%
1987
4
-1.43%
34
451%
3
1
-5.74%
1988
1
7.37%
3
897%
1
0
7.37%
1989
0
0.00%
0
0%
0
0
0.00%
1990
10
4.72%
8
2589%
10
0
47.24%
1991
3
4.18%
7
1014%
3
0
12.55%
1992
6
0.62%
36
287%
5
1
3.75%
1993
0
0.00%
0
0%
0
0
0.00%
1994
2
2.75%
38
130%
2
0
5.50%
1995
3
5.90%
30
349%
3
0
17.69%
1996
0
0.00%
0
0%
0
0
0.00%
1997
4
-1.84%
38
392%
3
1
-7.35%
1998
3
2.91%
15
340%
3
0
8.73%
1999
2
4.17%
22
331%
2
0
8.34%
2000
3
-4.36%
32
82%
2
1
-13.09%
2001
5
0.93%
23
926%
4
1
4.63%
2002
5
3.99%
9
859%
5
0
19.93%
2003
6
3.64%
14
629%
6
0
21.85%
2004
1
4.81%
10
135%
1
0
4.81%
2005
1
3.63%
59
22%
1
0
3.63%
2006
3
3.30%
9
528%
3
0
9.90%
合計
64
2.50%
21
10759%
59
5
156.46%
まず見て驚くのはその勝率です。64回中59回勝ちを収め、
勝率約92%、つまり10回のうち9回はプラスの取引で終えます。
もうひとつ驚くのは
、たった5回の負けのマイナスの影響が、非常に大きいこと
です。この5回の利益率を見てみましょう。
負け取引(5回)の詳細
年
利益率
1987
-8.89%
1992
-9.32%
1997
-11.23%
2000
-9.33%
2001
-7.09%
平均
-9.17%
平均で -9% の負けを覚悟する必要があります。
これは「買増分」を加味した損益ですから、ダブルのダメージを負います。しかしながらトータルで見れば、
20年で合計利益156%
にもなりますので十分通用する手法です。
でも、20年でこの数値は少々物足りないような気もします(因みに日経平均はここ20年、変わっていません)。しかし年の利回りに直すと、とんでもない好成績になります。数日で、利益を着実に積み重さねているためです。
もちろん、この利回りに対するデメリットは、
年に平均3回程度しか投資機会が訪れない
ことです。これだけを投資手法とするのは待ち時間が多すぎるので、他の投資手法を並行に使いながら、暴落がやってきたら「チャンス到来」として投資するのがいいのでしょうね。
結論
:
落ちてきたナイフは絶好のチャンス。高確率で勝ちトレードに結びつく。しかしながら、年に3度ほどしかチャンスがないことと、まれに負けた場合、損失が大きくなる覚悟をもつ必要がある。
ちょっと注意が必要なのは、この投資戦略を実行するときには日経平均先物を利用することになるとは思います。その場合、寄付時に日経平均と日経平均先物の値段に乖離がある場合が存在します。日経平均は寄付の気配値で始値を算出してしまうためです。
今回の調査データに、日経平均先物の値で算出したかったのですが、私の手元には長年信用のおけるデータがなかったので、日経平均で代用しました。それでも、この投資戦略は基本的に使えると思います。しかしながら今回の調査結果と多少違う可能性がありますので、その点はご留意下さい。
(8/13日追記)
booboowambo
さんのご協力により、1997年以降の日経平均先物のデータを取得できました。ありがとうございます。これを利用して、1997年8月以降の先物の成績を掲載します。
実際にやってみると、先物の方が多少成績が良くなり、利益率のマイナスもプラスも、大きくなる傾向にあります
(注意: 利益率は、買増があった場合に、取得株価単純平均の 2倍で計算しています)
。
購入日
買増日
清算日
購入価格
買増価格
清算価格
利益率
1997/8/12
1997/9/1
1997/11/4
18950
18200
16570
-21.59%
1997/11/10
1997/11/17
1997/11/18
15690
15260
16160
8.85%
1997/12/22
1997/12/24
1997/12/26
15180
14750
15300
4.48%
1998/4/3
1998/4/9
15850
16440
3.72%
1998/8/28
1998/9/8
13840
14870
7.44%
1998/9/14
1998/10/1
1998/10/8
13920
13350
13690
0.81%
1998/12/15
1999/1/5
1999/1/21
14070
13390
14040
4.52%
1999/9/27
1999/10/1
16960
17430
2.77%
2000/4/18
2000/4/24
2000/6/26
19240
18670
16900
-21.68%
2000/7/31
2000/8/16
15500
16320
5.29%
2000/12/20
2000/12/22
2000/12/27
13920
13470
13910
3.14%
2001/3/5
2001/3/7
12280
12850
4.64%
2001/3/13
2001/3/22
11850
12940
9.20%
2001/3/30
2001/4/11
2001/4/12
13190
12860
13250
3.45%
2001/7/24
2001/8/2
11570
12170
5.19%
2001/8/10
2001/8/21
2001/10/23
11800
11310
10720
-14.45%
2002/6/18
2002/6/24
2002/7/1
10860
10200
10620
1.71%
2002/7/29
2002/7/31
9710
9980
2.78%
2002/9/4
2002/9/12
9090
9320
2.53%
2002/10/8
2002/10/11
2002/10/16
8690
8590
8990
8.10%
2002/11/12
2002/11/22
8380
8800
5.01%
2003/1/30
2003/2/13
8370
8630
3.11%
2003/3/11
2003/3/25
7950
8290
4.28%
2003/4/1
2003/4/8
7890
8190
3.80%
2003/9/24
2003/10/15
10520
11020
4.75%
2003/10/24
2003/10/30
10400
10680
2.69%
2003/11/12
2003/11/18
2003/11/27
10250
9790
10140
2.40%
2004/5/11
2004/5/18
2004/5/20
10820
10550
10920
4.40%
2005/4/19
2005/6/16
11010
11420
3.72%
2006/1/19
2006/1/27
15450
16270
5.31%
2006/6/9
2006/6/23
14680
14990
2.11%
2006/7/19
2006/7/21
14,500
14,850
2.41%
平均
2.03%
合計
64.89%
参考:
この時期の日経平均の数値を利用した場合の利益率は、平均 1.89%、合計 60.36% でした。
--
編集後記(From the Editor)
今回の投資戦略は、掲示板における線香さんからの「5日平均移動線からの乖離と株価の関係」についてご指摘があったことからもヒントを得ました。ありがとうございます。
今週は時間切れで、日経平均しか扱いませんでしたが、
JASDAQ や ダウ、S&P500 にも利用できるのではないか
と、ワクワクしています。いつか検証してみたいと思います。
また、調査していて気が付いたのですが、買増ルール、2ヶ月経過よる損切りルールは絶妙で、いろいろと数値をずらして検証してみたのですが、私がチェックした限り、
これより良い条件は見つかりませんでした。
斉藤方式恐るべしです。
最後に、もう一度書籍をご紹介します。恐らく私が紹介した7/17日頃、すぐに購入し、即実行した人は、新興市場が復活したタイミングと重なった幸運にも助けられ、その効果に驚いたのではないでしょうか。
でも、気をつけてくださいね。「ほとんど勝ち」ですが、負ける時は大きく大きく負けます。資金配分には、くれぐれも、くれぐれも、お気をつけ下さいませ!
今回の調査結果をエクセルにしてデータを公開します。私が利用しているそのままのエクセルシートです。ダウンロード後、「はじめに」をお読み下さいませ。内容について万全を期していますが、保証の限りではありません。それをご考慮の上でご利用願います。
落ちてくるナイフは計画的につかみ取れ - 日経平均調査結果
--
くれぐれも、自己責任の上で判断してくださいね!
GOOD LUCK!