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噂の真実

2005/12/18
「金(きん)」で、日経平均が下がった!?

「金(きん)価格の下落」「円高」「日経平均の下げ」。先週発生したこれら3つの事象について、それぞれの関連は薄そうに見えるのですが、実はドミノ倒し的に発生したのではないでしょうか? そう考えると、いろいろと納得できる点が多いのです。

金(きん)取引が過熱していると警戒した東京工業取引所は、12/12日の取引終了後に突然「金及び金オプションの臨時増証拠金」を決定しました。12/14日以降、既存建玉を含め、全限月に対して証拠金の「倍額」を要求したのです。

先物になじみのない方にはピンとこないかも知れませんが、これは信用取引にて「信用維持率を今の30% から 60% にする」と、突然言われたのと一緒です。つまり「買う」のであれば、「今までよりもたくさん頭金を差し入れないとダメ」ということです。

ここで投資家の選択肢は2つあります。「証拠金を入れる」か「既存建玉を解消」するかのどちらかです。お金に余裕があれば、証拠金を入れることもできるでしょうが、たった2日で追加資金を準備できる人は限られます。

また、金は上昇基調であり、証拠金ぎりぎりまで「買い」を入れていた人が多かったでしょうから、多くの人は「既存建玉」を売る選択をします。これによって日本市場の「金」の価格は12日を境に、暴落を始めます。(出典: ドットコモディティ株式会社)


この「金」は、日本の「金」でも、アメリカの「金」でも価値は一緒のはずです。その中で日本の「金」だけが暴落を始めると、待ってましたとばかり、ヘッジファンドが世界をまたにかけた裁定取引(アービトラージ)を開始します。つまり、高値のままのアメリカやイギリスの市場の金を売って、安値の日本市場の金を買う動きが発生するのです。

これによって思わぬ現象が発生します。それは「円高」です。日本市場で金を買うためのドル資金が円に交換されるため、「円高」方向に振れるのです。その現象が、金の暴落2日目の14日から顕著になり、急激に円高に突入します。

の余波を受けるのは、「外国為替保証金取引」を行っている人たちです。今までの順調な円安(ドル高)と、レバレッジ効果による日米間の金利差による利子によって「ドル買い」の人たちはダブルの恩恵を受けていました。

ところが予想外の円高に振れたことにより、レバレッジを効かせていた「ドル買い」の人に追加保証金が発生することになります。特に「外国為替保証金取引」は、元手資金の10倍以上ものレバレッジを効かせることができるため、そういった人には僅かな円高も大打撃です。

こうなると「ドル買い」のポジションを手仕舞う以外に道はありません。こうして「ドル売り」に勢いがつき、円高が加速します。またこれによって、再度追加保証金が発生します。「投げが投げを呼ぶ」展開となります。

更に、この時期のタイミングとして、アメリカの「本国投資法」が今年に期限切れを迎えることと、FOMCに利上げを押さえるような声明が出ました(注: 声明が出た13日中は円高にはなりませんでした)。こういった「円高への恐怖心」からも「ドルの投売り」に拍車をかけたと思います。(出典: MarketWatch, Inc)



こうして増幅された円高の流れは、株式相場にも影響が出ます。多くの外国人投資家は為替差益をヘッジするため、ドル資金を円に換えると同時に、同じ金額分、先物での「ドル買い」を行います。こうすることで為替の影響を抑えることができます。

「ドル買い」先物の特性として、「為替が変わらない」もしくは「円安(ドル高)」方向に振れる分にはなんの問題も生じませんが、「円高(ドル安)」方向になると、先物の損失となりますので、証拠金の追加が必要となります。

ここで多くの外国人投資家は、あまりにも急激な円高に振れたため、証拠金を積み増す代わりに、ドル買いの先物を解消し、同時にその額に見合った株式を売り、中立を保つ行動に出たと考えられます。

ドルベースで見れば、これで何も利益に変化はありません。単に株を売っただけのように見えます。このような操作を行うのは、外国人投資家に限られますから、値下がりするのは、彼らが所持する東証一部の大型銘柄や、日経平均、TOPIXの先物になります。(出典: MarketWatch, Inc)

TOPIX

従って、今回の円高や日経平均の下落を演じた引き金は、「金(きん)の証拠金の引き上げ」にあった。と考えると、かなりすっきりするのです。

では今後はどうなるのでしょうか? 最初の引き金となった「金の暴落」ですが、金曜日にようやく収まりつつあります。それが収まれば、とりあえずの円買い圧力が消えます。円高が収まれば「外国為替保証金取引」のドル投げ売りも止まります。一方で、アメリカと日本の金利差は、広がったままです。

「外国為替保証金取引」では、単なる為替差益の他に金利を受け取ることができます。アメリカと日本の金利差が4%であれば、「ドル買い」を保持していれば、年間4%の利子を受け取ることができます。逆に「円買い」であれば、4%の利子を払う必要があります。

この4%は「大したことがない」と思われるかもしれませんが、「外国為替保証金取引」はレバレッジを効かせることができます。1000万円で1億円分のドル買いも可能です。

となると、ドル買い額は1億円ですので、その4%の利子となれば、為替が動かなくても、年間400万円を受け取ることができます。元手は1000万円ですので、利子が年率40%にもなります。こういった状況が解消されない限り、ドル買い圧力は続きます。

長くなりましたが、金利差がある以上、円高方向へと振れにくく、円安方向へ再び移動するのではないかと思います。となれば、これ以上、「ドル買い」先物の証拠金を追加要求されることはないので、今回の株の下落も、まもなく止まるのではないかと思っています。

結論:
金の暴落がひと段落すれば、円高も止まり、株安も止まる。金利差がある以上、ドル高基調は変わらない。

では、株高になるか? と言われると、それは分かりません。最近は外国人の買いパワーも落ちてきています。私は日銀の政策変更がない限り、ペースは緩くなるものの、株高は続くのではないかと想定しています。

参考文献:

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編集後記(From the Editor)

今回のこのアイデアについては、「フィスコの岡崎さん」が、「円高の原因は金の証拠金増額にあるのではないか」、との発言を聞いたのがきっかけでした。なかなか説得力のあるものでしたので、ここで更に一歩踏み込んで、もしかして、今回の株価下落もそれと結合しているのではないか? と思ったのです。

本当に、ドミノ倒しで、この現象が起きたのかは分かりません。全て仮定にも基づいた推理ですので、どこかで的外れになっているのかも知れません。

しかしながら、これで説明がつくのであれば、今後の「円安」や「株高」に多めに賭けてみてもいいのかなと思っています。

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くれぐれも、自己責任の上で判断してくださいね!
GOOD LUCK!

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