2005/11/27
MSCI Small 定期入れ替えは狙えるか?
(+MSCI KOKUNAI, RNプライム)
11月末は、あまり有名ではないですが、そこそこ注目に値するインデックスの定期銘柄入れ替えの季節です。それらインデックスは、
「MSCI Small, MSCI KOKUNAI, RNプライム」
の3つです。
この3つのインデックスのうち、
MSCI Small
だけは、国際的なインデックスとして運用されています。また、今回の入れ替え時の日本のウエイトが 19.06% と、アメリカの 45.33% に次ぐ2番目の大きさを誇り、重要な位置を占めていることが分かります。
そこで、今回は MSCI Small を重点的に取り扱い、定期入れ替えに伴う11月末日の「インデックス買い」が期待できるか、調査してみたいと思います。
まずは MSCI Small そのものについてですが、その名の通り、時価総額が小さめの銘柄を組み入れています。具体的には、
時価総額で $200mil - $1,500mil の銘柄であり、かつ浮動株調整後の時価総額が $100mil を超えるものを対象にしています。
参考までに、一般的に良く利用される MSCI Standard は、浮動株調整後の株価で $900mil が最低ラインです(日本の場合)。従って、MSCI Standard と MSCI Small の両方を兼ねる銘柄も一部出てきます。
また、
MSCI Small は、半期に1度、大きく銘柄の定期入れ替えをします。
ということは、「インデックス買い」が期待できるかどうかは、半年前の入れ替え時が参考になるはずです。早速その時の株価の値動きをチェックしてみましょう。
半年前の入れ替え時の調査を進めてみると、なんと88銘柄もの新規採用がありました。そのうちの約半分の48銘柄が東証一部で、それ以外は大証2部、東証2部も含めた新興市場銘柄です。
それでは、全88銘柄の平均について、入れ替え発表日(5/12日)をベースとして、入れ替え日も含めた株価の終値の推移を見てみましょう。
市場の影響を排除するため、東証1部銘柄はTOPIXで、それ以外の銘柄は JASDAQ指数で差分調整しています。
インデックス買い日となる 5/31日は前日比で随分と伸びています。これはインデックス買いがあると見て良さそうです.... と言いたい所なのですが、グラフを見てもお分かりのように、上下動が激しく、たまたま 5/31日が上昇しただけかも知れません。
そこで、インデックス買い日の特色である、「高値引け(終値がその日の高値と一緒)」と「出来高の急増」が存在したのか確認してみます。ちょっと多いですが、全88銘柄をここで見てみます。
コード
銘柄名
前日比
上昇率
当日比
上昇率
高値引け
出来高比率
6423
アビリット
100.47%
100.95%
○
28%
8872
エイブル
100.00%
100.00%
○
151%
8798
アドバンスクリエイト
100.29%
101.17%
○
64%
9627
アインファーマシーズ
104.86%
103.19%
100%
3434
アルファ
100.25%
99.75%
78%
5017
AOCホールディングス
102.84%
102.84%
○
166%
8889
アパマンショップネットワーク
99.21%
98.43%
43%
3727
アプリックス
103.37%
103.37%
○
126%
8914
エリアリンク
103.72%
102.63%
○
110%
7747
朝日インテック
101.20%
101.20%
○
33%
2337
アセット・マネジャーズ
103.94%
103.53%
○
61%
8399
琉球銀行
101.21%
101.21%
○
120%
8014
蝶理
103.32%
102.83%
○
66%
5566
中央電気工業
102.42%
102.42%
○
18%
2309
シミック
100.57%
99.43%
62%
8888
クリード
100.00%
100.00%
○
53%
4751
サイバーエージェント
102.20%
102.20%
○
77%
8806
ダイビル
102.30%
101.27%
○
128%
9132
第一中央汽船
101.80%
101.80%
○
104%
8853
ダイヤモンドシティ
103.23%
101.91%
○
75%
2379
ディップ
102.23%
103.38%
○
32%
7483
ドウシシャ
101.93%
101.37%
○
108%
8901
ダイナシティ
106.44%
105.05%
55%
9427
イー・アクセス
99.86%
99.86%
150%
2763
エフティコミュニケーションズ
105.26%
105.54%
○
72%
8437
ファイナンス・オール
101.56%
101.56%
99%
2330
フォーサイド・ドット・コム
107.79%
108.14%
180%
2411
ゲンダイエージェンシー
100.66%
100.44%
○
28%
5410
合同製鐵
101.49%
101.80%
○
58%
9037
ハマキョウレックス
102.44%
102.95%
108%
8907
フージャースコーポレーション
102.61%
102.61%
○
48%
6277
ホソカワミクロン
100.63%
100.84%
○
105%
8922
アイディーユー
101.18%
100.58%
○
55%
4757
インテリジェンス
102.55%
103.43%
240%
8173
上新電機
99.13%
98.06%
84%
9312
ケイヒン
105.85%
104.62%
○
156%
7251
ケーヒン
104.57%
102.72%
○
153%
2780
コメ兵
101.52%
101.52%
○
60%
1861
熊谷組
101.81%
100.71%
○
64%
7517
黒田電気
101.74%
101.35%
○
228%
1301
極洋
100.39%
100.39%
○
50%
2538
マルキン忠勇
97.39%
101.36%
120%
6316
丸山製作所
107.96%
105.29%
○
112%
2363
モック
110.52%
108.37%
○
70%
9792
ニチイ学館
98.52%
98.16%
62%
3341
日本調剤
107.95%
108.57%
○
48%
3338
九九プラス
102.68%
102.86%
○
40%
5302
日本カーボン
101.05%
101.05%
○
117%
5480
日本冶金工業
102.40%
101.91%
66%
2389
オプト
105.88%
105.26%
113%
4800
オリコン
101.56%
100.00%
64%
8902
パシフィックマネジメント
105.09%
104.56%
○
94%
7246
プレス工業
103.86%
102.64%
○
106%
6720
プリヴェチューリッヒ
103.41%
103.41%
161%
4022
ラサ工業
102.66%
102.06%
○
120%
8890
レーサムリサーチ
104.84%
105.41%
○
37%
8924
リサ・パートナーズ
98.85%
100.00%
28%
3745
サミーネットワークス
101.35%
100.67%
○
35%
6516
山洋電気
100.38%
100.38%
○
88%
7007
佐世保重工業
100.00%
100.00%
62%
4555
沢井製薬
100.33%
100.33%
○
41%
9653
SBIパートナーズ
101.67%
103.65%
77%
2392
セキュアード・キャピタル
102.03%
101.77%
○
62%
8268
西友
100.56%
100.00%
○
80%
4293
セプテーニ
103.25%
102.58%
○
73%
9110
新和海運
101.91%
101.91%
○
125%
3003
昭栄
101.96%
101.28%
○
161%
6143
ソディック
101.49%
102.50%
○
171%
2385
総合医科学研究所
103.49%
102.12%
○
75%
2413
ソネット・エムスリー
112.29%
111.03%
○
116%
4565
そーせい
105.11%
104.66%
96%
8043
スターゼン
100.90%
100.00%
○
79%
1503
住友石炭鉱業
100.00%
100.00%
79%
1821
三井住友建設
100.00%
101.16%
○
24%
1880
スルガコーポレーション
103.38%
102.80%
174%
1819
太平工業
104.01%
101.63%
○
75%
6621
高岳製作所
100.47%
101.41%
○
38%
1882
東亜道路工業
101.45%
101.16%
○
57%
8879
東急リバブル
101.86%
102.34%
○
76%
8003
トーメン
103.38%
102.00%
○
67%
1890
東洋建設
101.60%
102.42%
152%
9058
トランコム
100.24%
100.00%
172%
6101
ツガミ
99.27%
98.01%
166%
6728
アルバック
100.50%
100.34%
○
102%
6727
ワコム
101.96%
101.25%
○
91%
1888
若築建設
100.95%
100.95%
61%
8074
ユアサ商事
102.98%
102.37%
○
113%
9370
郵船航空サービス
100.25%
100.25%
○
53%
JASDAQ平均
101.52%
101.28%
○
TOPIX
100.23%
100.12%
高値引け銘柄が 88銘柄中、61銘柄とインデックス買いが存在した状況を示しています。しかしながらJASDAQ平均も実は高値引けで終えており、その影響も考えられますので、インデックス買いがあったと確実には言えません。
また、出来高についても、他の日よりも相対的に少ない(100%を割る)銘柄が多く、これもまた、インデックス買いが確実にあった状況を示していません。
インデックス買いがあったかどうか確かめる最後の手段として、5/31日の1日チャートをチェックすることで、引け際に出来高が集中し、その時に株価が伸びたかどうか確認することにしましょう。
まずはJASDAQ平均からです。
良く見ると、最後に「ぴょん」と跳ねています。これはJASDAQ全体が引けに買われたことを意味しています。
次に、当日の上昇率が高く、高値引で終了した中で、出来高が多い銘柄の代表として
ケイヒン(9312)
と、出来高が少ない銘柄の代表として
レーサムリサーチ(8890)
の両方の一日チャートを見てみましょう。
ケイヒン(9312)
レーサムリサーチ(8890)
出来高が少なかったレーサムリサーチには、はっきりと引け際に大量に買われたことが分かります。チャートの最終更新時間を見る限り、14:59 と、15:00ではないため、ザラバ引けで終わったようです。板がしっかりあれば、更に上昇してたかも知れません。
ケイヒンについてもわずかですが、引け際に上昇していることがチャートから分かります。
これはインデックス買いが起きた証拠と見ても良いのではないかと思います。
話を巻き戻して、JASDAQ平均が最後に上昇したのはなぜでしょうか? 実は MSCI Small インデックスに占める日本株のウエイトが、この時に 14.9% から 16.63% に引き上げられていました。
ということは、小型株を多く抱え、MSCI Small に採用されている銘柄が多いはずの JASDAQ銘柄について、それぞれが少しずつ買い進まれ、全体として、最後に上昇する形になったのではないでしょうか。
今回の入れ替え時も、
日本のウエイトが16.63% から 19.06% に引き上げられます。もしかしたら、またJASDAQ平均全体が上昇するかも知れません。
事実
:
MSCI Small の「インデックス買い」は、わずかであるが存在する。
ここまで分かったのであれば、あとは、上昇が期待できる、効率の良い銘柄探しです。これはどう調査すれば良いのでしょうか? 実はこの点について手がかりはほとんどありません。MSCI Small について、「今どんな銘柄があり、全体の時価総額はいくらか」、「組み入れ時の時価総額がどれくらいになるのか」が一般に公開されていないためです。
ここはもう、インデックス狙いの王道そのまま、
浮動株調整後の時価総額が比較的高いと思われる銘柄のうち、出来高が少ない銘柄を探して狙う
とうことになりそうです。
結論
:
浮動株調整後の時価総額が比較的高いと思われる銘柄のうち、出来高が少ない銘柄について、引け際の上昇を狙うべし。
しかしながら、MSCI Smallが引き起こすインデックス買いは僅かであるため、
あまりにも金額を賭けすぎると、または多くの人が狙うと、それ自体が重しになってしまい、結局儲からない
ということになる可能性があります。
さてと、ここまでは MSCI Small についての話題でしたが、
MSCI KOKUNAI
と
RNプライム
の定期入れ替え
について触れておきましょう。
MSCI KOKUNAI、RNプライム の2つの指数は、TOPIXの替わりともなりえる日本市場全体を表す指数です。TOPIX浮動化に伴い、これら指数に乗り換えた投資信託や年金基金が多くあっても不思議ではありません。
過去のデータを参考にしたい所ですが、両方ともTOPIX浮動化が始まって初めての大きな銘柄入れ替えですし、MSCI KOKUNAIは今年の春に設定されてから初めての半期の定期入れ替えです。 RNプライムも、大阪証券取引所に先物上場後の初めての年次入れ替えです。
従って、今回はこれら2つの指数については、下記に、MSCI Small と一緒に、新規採用銘柄を紹介することに留めます。これらのインデックス新規採用銘柄の値動きは、そのインデックスの影響度を見る絶好の機会です。
コード
銘柄名
MSCI Small
MSCI KOKUNAI
RNプライム
1491
中外鉱業
○
1880
スルガコーポレーション
○
2109
三井製糖
○
2337
アセット・マネジャーズ
○
2385
総合医科学研究所
○
2420
CHINTAI
○
2432
ディー・エヌ・エー
○
○
2433
博報堂DYホールディングス
○
2440
ぐるなび
○
2759
テレウェイヴ
○
2792
ハニーズ
○
2799
ネクサス
○
3001
片倉工業
○
3433
トーカロ
○
3514
日本バイリーン
○
3587
アイ ビー ダイワ
○
○
3716
アーティストハウス
○
3769
GMOペイメントゲートウェイ
○
3882
紀州製紙
○
4310
ドリームインキュベータ
○
4314
ダヴィンチ・アドバイザーズ
○
4714
リソー教育
○
4788
サイバー・コミュニケーションズ
○
4823
サイバード
○
4848
フルキャスト
○
4849
エン・ジャパン
○
○
4924
ドクターシーラボ
○
4974
タカラバイオ
○
5008
東亜石油
○
5352
黒崎播磨
○
5479
日本金属工業
○
5631
日本製鋼所
○
5632
三菱製鋼
○
○
5721
エス・サイエンス
○
○
5726
住友チタニウム
○
5809
タツタ電線
○
5856
東理ホールディングス
○
6103
オークマ ホールデイングス
○
6205
OKK
○
6269
三井海洋開発
○
6390
加藤製作所
○
6423
アビリット
○
6436
アマノ
○
6461
日本ピストンリング
○
6463
帝国ピストンリング
○
6670
MCJ
○
6675
田村大興ホールディングス
○
6728
アルバック
○
6751
日本無線
○
6766
宮越商事
○
6793
山水電気
○
6835
アライドテレシス
○
7238
曙ブレーキ工業
○
7245
大同メタル工業
○
7278
エクセディ
○
7421
カッパ・クリエイト
○
7429
セイジョー
○
7545
西松屋チェーン
○
7602
ジャック・ホールディングス
○
7606
ユナイデッドアローズ
○
7638
シーマ
○
7717
ブイ・テクノロジー
○
7732
トプコン
○
7739
キヤノン電子
○
7956
ピジョン
○
8051
山善
○
8074
ユアサ商事
○
8173
上新電機
○
8192
シグマ・ゲイン
○
8206
アポロ・インベストメント
○
○
8235
松坂屋
○
8237
松屋
○
8291
東日カーライフグループ
○
8325
北越銀行
○
8337
千葉興業銀行
○
8338
関東つくば銀行
○
○
8349
東北銀行
○
8374
三重銀行
○
8424
芙蓉総合リース
○
8550
栃木銀行
○
8563
大東銀行
○
8611
コスモ証券
○
8697
大阪証券取引所
○
8699
エイチ・エス証券
○
8701
イー・トレード証券
○
8703
カブドットコム証券
○
8821
立飛企業
○
8834
藤和不動産
○
8840
大京
○
8844
リクルートコスモス
○
○
8879
東急リバブル
○
8882
ゼファー
○
8888
クリード
○
8902
パシフィックマネジメント
○
8914
エリアリンク
○
8922
アイディーユー
○
8936
リプラス
○
9303
住友倉庫
○
9305
ヤマタネ
○
9474
ゼンリン
○
9543
静岡瓦斯
○
9633
東京テアトル
○
○
9653
SBIパートナーズ
○
9671
よみうりランド
○
9672
東京都競馬
○
9722
藤田観光
○
9898
サハダイヤモンド
○
9948
アークス
○
9956
バロー
○
○
--
編集後記(From the Editor)
今回のネタは掲示板で kiki さんから提供頂きました。どうもありがとうございます。本当はもうちょっと軽く調べて結果が出るはずだったのですが、かなり"はまって"しまいました。
MSCIは、新規採用銘柄の株式コードを発表せず、英語表記であるため、対象銘柄を特定するのは結構大変でした。
その中で、ケーヒン(7251)とケイヒン(9312)は、英語表記が全く一緒で面食らいました。もし、ニュースで話題になった場合、銘柄を勘違いして買いそうです(笑)。
--
くれぐれも、自己責任の上で判断してくださいね!
GOOD LUCK!