2005/9/11
FTSE買いはやってくるか?
2005/8/31日に、突然
「FTSE全世界指数(FTSE All-World)」
の
定期入れ替え
が話題となりました。意外性のある銘柄として、
東急建設(1720)
が新規採用になるとのことで、突然と株価が上昇し始めたからです。
そこで今回は、この「FTSE全世界指数」とは何かを知った上で、日経平均やMSCIのように、入れ替え日前日(今年は9/16日)に、FTSEインデックス買い(FTSE買い)がやってくるのかを検証してみたいと思います。
まずは「FTSE全世界指数」について調べてみることにしましょう。こちらの日本語のページに
概要記載
があります。さらに
日本語での詳細な文章
も存在します。
FTSE運営ルール(ざっくり版):
時価総額ベースの指数である
時価総額で90-95%をカバーする (9/9終了現在-日本は476銘柄)
浮動株調整を行う
年に一度定期入れ替えを行う(日本は9月)
四半期に一度見直しも行う
時価総額の大きい銘柄は早期採用もありうる
時価総額により、Large と Midium と Small の分類があり、Large と Midium がFTSE全世界指数に算入される。
ほぼ MSCI と似たような仕組みを持っていることが分かります。
ではこの FTSEをベンチマークとしているのような投資運営会社は多いのでしょうか? ベンチマークとする所が多ければ多いほど、FTSE買いが大きくなります。
今から約3年半前に記載された、
大証で公開されている文書
では、
「世界で2兆5千億米ドルもの資金がFTSEをベンチマークとして運用されているといわれている。FTSEは伝統的に欧州において高いシェアを誇っているが、米国やアジアにおいてもユーザが増加しつつある。例えば、米国のカリフォルニア州公務員年金基金(CalPERS)は外国株式ベンチマークとしてFTSEを昨年採用した」
とあります。また、欧州の証券会社に勤められている
小鬼さんのBLOG
にはこう記載されています。
「ヨーロッパ株の世界においてはFTはかなり重要なのだと思いますが、ワールドワイドな視点から見ますとやはり中心はダウでありナスダックであり、そしてMSCI、つまり米系なんだなぁ、と思うことが良くあります」
と、立場的には多少MSCIよりも弱いかな? という感じがあります。
なにはともあれ、実際に昨年の「FTSE買い日」の動きを参考にすれば、その影響度を測ることができると思います。そこで、昨年の「FTSE買い日」近辺の株価の動きをみて見ます。
昨年は、
48銘柄の新規採用
がありました。これら全体の株価の終値の推移を見てみます。定期入れ替え銘柄発表日を基準として、市場の影響を排除するため、TOPIXで差分調整してみます。
発表直後には、多少の上昇が見られます。そこから1-2%内での狭い範囲内での値幅で推移し、
「FTSE買い日」の前日にまでは堅調ですが、「FTSE買い日」は値下がりし、その後も続落していることが分かります。
もう少し詳しく分類することにしましょう。FTSE全世界指数の採用され方には、3種類あります。
Large に直接採用される
Medium に直接採用される
Small から Medium に昇格される
1. は最もインパクトがありそうです。FTSE全世界指数のうち、Large だけを採用するといった所もあるかもしれません。そして 2, 3 になるにつれ、インパクトが少なくなる可能性が出てきます。グラフ上から確認してみましょう。
残念ながら、全ての分類において、FTSE買い日は株価が下落しています。「FTSE買い」を、あまり期待しすぎると、痛い目に遭いそうな予感がします。
次に出来高をみてみましょう。「FTSE買い日」に、出来高がどれくらいあるかによって、その影響度を測ることができます。
分類
浮動株に対する出来高割合
採用全銘柄平均(48)
1.09%
L直接採用(1)
2.22%
M直接採用(11)
1.70%
昇格M(36)
0.87%
全体平均を取ると「浮動株調整後」の1%程度です。現在、TOPIXの場合は「全株式の」3%程度です。MSCI の場合は「浮動株調整後」の2.4%程度です。単純には比較できませんが、買いインパクトは MSCI の半分以下と認識するのが良いと思います。
参考として、FTSE買い日の一日チャートをいくつか見てみましょう。Largeに直接採用された、
NECエレクトロニクス(6723)
です。(出典: Yahoo Japan Corporation.)
最後の伸びはいまいちだったものの、多少の買い物が入っていることが分かります。次に、Medium に直接採用された、
オービック(4684)
です。
最後に売り物に負け、安値引けになったことが分かります。時価総額が低くなれば低くなるほど、買いが集まらないは、TOPIXやMSCIと共通のようです。
事実
:
昨年のFTSE買い日には、全体的に株価が値下がりする傾向にあった。
FTSE買い日の出来高は、浮動株数に対して、おおよそ 1% 程度と、MSCI買いの半分以下である。
浮動株調整後の時価総額が、高けれ高いほど、買いが入る傾向にある。
以上の事実から、結論を導いてみましょう。
結論
:
FTSE買いは存在するが、その規模は小さいため、最後の引けの上昇を期待してはいけない。それまでに売り切るべし。
もし、FTSE買いを期待するのであれば、浮動株調整後の時価総額が大きい銘柄を選択するべし。
因みに今年新規採用される銘柄について、FTSE定期入れ替え発表日前後の値動きを見てみましょう。
すごく綺麗に上昇しています。「FTSE買い」を「期待した買い」を狙って、これから購入する手もあるでしょうが、昨年の例と、FTSE買いの薄さから、最終日の大引けまでは持っていない方が良いと思います。
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編集後記(From the Editor)
私はFTSEの名前は、「英国市場を代表する指数」ということで知ってはいましたが、恥ずかしながら、「FTSE全世界指数」なるものが存在しているとは知りませんでした。
これでまた9月の楽しいイベントが追加されました。本当に9月はいろいろとありますね。株主優待も待ち構えているし、資金配分と戦略の選択に迷ってしまいます。
それではいつものように、今回利用したデータを公開します。 今回は、私の勉強を兼ねて調査しました。ほとんど一夜漬け状態で学習しましたので、どこか勘違いしている点があるかもしれません。ご指摘頂けると嬉しいです。
FTSE買い調査結果
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くれぐれも、自己責任の上で判断してくださいね!
GOOD LUCK!