2005/8/21
新株権利処理を味方にする!
毎月毎月、様々な銘柄が株式分割を行っています。この株式分割時に、該当銘柄を現物で所持しているか、信用買いで所持しているかによって、その後の扱いが全く変わります。
現物所持の場合は、約2ヶ月後に新株が補充されます。信用買い所持の場合は、新株を受け取る権利はなく、
新株権利をオークションにかけられて、落札された分の額が補充されます。これを「権利処理」
と言われています。
この権利処理により、オークションで獲得した株は、通常はすぐに売却できず、新株の交付日まで待つ必要があります。このため、時間的な価値とリスク分を考慮し、新株権利は割安な価格で落札されることが多くなります。
信用買いで保持していた場合、新株権利の割安な価格分を負担する必要があります。しかしながらこの割安分を負担してでも、旧株が値上がりすれば、利益を得ることができます。実際、分割後は需給がひっ迫し、値上がりしやすい傾向にあります。
そこで今回は、株式分割時に信用買いで所持していても、利益を得ることが可能かどうか検証してみたいと思います。今回の調査対象は、今年の4月から7月まで、権利売り入札が行われた全34銘柄についてです。
ここで実際にグラフ化する前に、信用買いで所持し、株式分割を迎えた場合は、どのような影響を受けるかですが、以下の数式で表されます。
●新ポジション = 権利日終値価格/分割比 + 権利処理価格 + 配当(あれば)
もし権利日終値価格によって「信用買い」をした場合、上記数式によって、対象34銘柄がどんな影響を受けたか一覧にしてみます。
コード
銘柄名
配当
分割比
権利処理価格
権利日終値
権利処理後価値
増減率
2420
CHINTAI
1950
2
150100
296000
300050
101.4%
4800
オリコン
0
2
180353
375000
367853
98.1%
9444
トーシン
2000
3
196461
300000
298461
99.5%
9699
西尾レントオール
0
1.2
255.81
1520
1522
100.2%
1810
松井建設
0
1.1
49.6
558
557
99.8%
2775
日本レストランシステム
10
2
3143.19
6510
6408
98.4%
2794
クリエイトエス・ディー
50
2
2784
5860
5764
98.4%
4312
サイバネットシステム
0
3
242785
363000
363785
100.2%
7844
マーベラスエンターテイメント
0
2
238425
480000
478425
99.7%
8703
カブドットコム証券
0
3
307865
462000
461865
100.0%
8914
エリアリンク
0
2
184020
396000
382020
96.5%
2437
シンワアートオークション
18000
3
1821206
2880000
2799206
97.2%
2667
イメージワン
0
2
164625
346000
337625
97.6%
8704
トレイダーズ証券
0
2
174110
359000
353610
98.5%
2385
総合医科学研究所
400
2
369775
762000
751175
98.6%
2392
セキュアードキャピタルJ
0
3
522360
820000
795693
97.0%
6866
日置電機
10
1.1
230.5
2690
2686
99.8%
6883
日本電産コパル電子
0
4
3044.93
4130
4077
98.7%
8877
日本エスリード
0
1.2
481.76
2960
2948
99.6%
7747
朝日インテック
30
2
2408.06
4990
4933
98.9%
2360
ウィーヴ
0
2
216660
442000
437660
99.0%
2389
オプト
0
4
1319130
1750000
1756630
100.4%
7740
タムロン
25
2
1803.04
3800
3728
98.1%
9756
ASKPLANNING
5
2
537
1071
1078
100.6%
2440
ぐるなび
0
5
1976033
2630000
2502033
95.1%
7641
フォー・ユー
0
3
191957
305000
293624
96.3%
9374
軽貨急配
0
5
601.87
815
765
93.8%
7483
ドウシシャ
0
1.5
1248.48
3820
3795
99.3%
4743
アイティフォー
0
5
2454.8
3410
3137
92.0%
3744
テンアートニ
0
2
199675
419000
409175
97.7%
8942
シンプレクスインベストメント
0
5
4153146
5500000
5253146
95.5%
7618
ピーシーデポコーポ
0
4
253916
369000
346166
93.8%
8927
明豊エンタープライズ
0
2
1757.34
3740
3627
97.0%
2318
ビービーネット
0
2
31608
66800
65008
97.3%
合計
98.1%
これを見てお分かりのように。
「信用買い」で所持していると、権利処理によって、全体平均で約2%程、価値が減少します。
もちろん、旧株が分割日以降上昇し、その減少分を埋めることが出来れば、所持した甲斐があります。
前置きが随分と長くなりましたが、実際に信用買いで所持していた場合の損益推移をグラフにしてみます。権利日終値価格を基準として、市場の影響を排除するため、伝統市場銘柄(東証・大証一部)はTOPIXで、新興市場銘柄はJASDAQ平均で差分調整しています。
まずは 伝統市場銘柄、新興市場銘柄 別です。
残念ながら
最近の株式分割では、権利処理による減少分を埋めることが出来ていません。
株価は値下がり傾向にありますが、狭い範囲内に収まっています。
次に信用区分別です。「信用銘柄」と「貸借銘柄」では、なにかしらの違いが出てくるかも知れません。
ややはっきりと違いが出ました。
貸借銘柄の場合は値下がり傾向にあります。
これは貸借銘柄の場合、つなぎ売りが可能であるため、分割日前後で「信用売り」によるヘッジを行っているのではないでしょうか。実際にそういった傾向が、信用売り残高から確認できています。
次に分割比別です。分割比が大きくなれば大きくなるほど、需給がひっ迫し、株価が上昇する可能性があります。
分割比が大きい銘柄は、分割日以降の上昇を期待してか、買われる傾向がありますが、実際には思った通りにはなっていません。面白いことに、3分割した銘柄だけ分割日以降に上昇しています。この現象がなぜ出るのかについては、分かりません。
次に分割前株価別です。単位株を購入する株価が高ければ高いほど、需給がひっ迫し易いと考えられます。
サンプル数が少ないので、やや信頼度に欠けますが、予想した通りに、
100万円以上の場合は、利益が出る傾向
にあります。
事実
株式分割権利日に、信用買いで株式を所持していた場合、権利処理により約2%、価値が減少する。
全体平均で見れば、権利処理により減少した分を、旧株の値上がりによって埋めるまでは達していない。
貸借銘柄の場合、分割権利日前後で値下がり傾向にある。
株式分割比が4-5倍ある場合、期待により分割権利日直前に値上がり傾向だが、その後に上昇する傾向はない。
株式分割前の価格帯が100万円を超えると、権利処理による減少分を埋めるだけの上昇が出ている。
以上の事実から、結論を導き出しましょう。
結論
:
株式分割権利日に、「信用買い」で保持する場合、銘柄をしっかりと選択すべし。全体平均では、マイナスになる。
「信用買い」で保持しても良い銘柄は、理由は不明だが、3分割した銘柄もしくは、買いにくく、需給がひっ迫しやすい、購入単価が100万円を超える銘柄に絞るべし。
貸借銘柄であれば、「信用売り」するが良い。
正直、難易度がかなり高い投資戦略です。
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編集後記(From the Editor)
この投資戦略アイデアについては、山下さんから頂きました。どうもありがとうございます。
今まで株式分割時に信用で保持していたことがなかったので、「権利処理」について勉強する所から始めました。もし間違っている点等ございましたら、お知らせ頂けると嬉しいです。
株式分割前後の株価推移は、時期によって変わります。以前は分割即株価上昇だったのですが、それが落ち着きつつあります。今回の調査結果をベースに、その時々によって判断して頂けたらと思います。
近々、ここに今回利用したデータを掲載する予定です。今日はもう体力の限界なので、ここまでにします(笑)。
新株権利処理の損益
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くれぐれも、自己責任の上で判断してくださいね!
GOOD LUCK!