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立会外分売

2005/5/29
立会外分売は貸借銘柄を狙え!

立会外分売は増加の一途です。今年で既に90回を数え、長期の連休前後を除き、ほぼ毎日行われている感じがします。そんな中、6月号のZAIおよび日経マネー誌にて「立会外分売で購入し、分売日の翌日朝一番で売ると、平均1.7%の利益が得られる」という内容の記述がありました。

更に読み進めると「大抵は取引単位分しか当選せず、平均6-7,000円の利益と計算される」という内容の記載がありました。ただし、売買手数料を考慮すると、利益は更に薄くなります。

そこで今回は、ダントツ投資として、この数値の再検証を行うと同時に、更にもう一歩進めて、もっと利益を上げることができる投資戦略が存在しないか、確かめてみたいと思います。

まずは、素直に「立会外分売」で取引単位分購入し、「翌日朝一番」で売却した場合、どれくらいの利益が出るのか確かめてみます(分売日当日ではないことがミソです。当日は9:30あたりから売却可能になるため、朝一番では売れません)。

調査範囲は、今年「松井証券」で立会外分売が行われた全90銘柄を対象にしています。また、雑誌で公表された日(4/21)以降も同じ方法が通じるかどうか確かめるため、5月以降の成績についても見てみます。(注:4/22日分売分の「マルイチ産商」について、分売日翌日の取引成立しなかったため、全部で89銘柄の平均とします)

分売日翌日始値利回り 利益額(円)
1-5月(89銘柄) 1.37% 5066
5月のみ(12銘柄) 1.08% 1017


平均利回り 1.37%、5,066円の利益です。インパクトは大きくありませんが、単純な取引で、良好な結果がでました。ただし、5月以降は取引単価が低かった理由もあり、平均利回りは 1.08%、1,017円の利益です。5月以降は、手数料を考えると、手元には殆ど残りません。

もしかして、雑誌で公表してしまったため、もう使えない投資戦略なのでしょうか? そしてこれよりも、もっと効率が良い方法はないのでしょうか?

これらの疑問に答えるため、手元にある数字をじっくり再検討してみました。そうすると、大きく利益を上げた銘柄に、ある特徴があることに気が付きました。それは「貸借銘柄」であることです。

そこで、分売した銘柄を、「貸借銘柄」「信用銘柄」「信用外銘柄」の3つのカテゴリに分けて、平均利回りと、利益額を計算して見てみましょう。

1-5月の立会外分売成績
分売日翌日始値利回り 利益額(円)
貸借(18銘柄) 3.37% 14278
信用(30銘柄) 1.98% 6262
信用外(41銘柄) 0.04% 146

5月のみの立会外分売成績
分売日翌日始値利回り 利益額(円)
貸借(3銘柄) 3.39% 5000
信用(3銘柄) 1.28% 1067
信用外(6銘柄) -0.18% -1000


「貸借銘柄」は素晴らしい成績です。平均利回り 3.37%、14,273円の利益です。これは、立会外分売のディスカウント率、ほぼそのまま利益に結びついています。今月に入っても、平均利回り 3.39%、5,000円の利益です。

その反対に、「信用外銘柄」はさっぱりです。平均利回り 0.04%, 146円の利益です。手数料を考えれば、参加するだけ、お金を失います。

事実:
立会外分売で好成績なのは「貸借銘柄」である。次いで「信用銘柄」がそこそこの成績を残す。しかしながら、「信用外銘柄」は全く振るわない。

なぜこんな結果になるのでしょうか。

いくつかの貸借銘柄について、分売日近辺の「信用残」の推移を追った所、「信用売り」残が増加傾向であり、分売日を過ぎると、減っていることが分かりました。

ここからは仮定なのですが、貸借銘柄については、分売日近辺の株価下落を狙って、もしくは分売による購入で現渡することを狙って「信用売り」を仕掛けるのではないでしょうか。そうして、分売日以降、下落を狙った人の買戻し、および分売が外れた人の買戻しが入り、株価の買い支えになっているのではないでしょうか。

また、「信用外銘柄」の成績が伸びないのはなぜでしょうか? それは出来高の「流動性」にあるのではないかと思っています。「貸借銘柄」「信用銘柄」については、ある程度、流動性がある銘柄が指定されます。

一方で「信用外銘柄」は流動性に乏しく、取引参加者が少ないのが現実です。せっかく「立会外分売」に当選しても、値段を下げない限り、買い手が現れないのではないでしょうか。

次に、もう少し長期的な株価推移をみてみましょう。ここでは1月-4月で分売された78銘柄について、分売日前後の株価の推移をグラフにします。市場の影響を排除するため、全ての銘柄をTOPIXで差分調整しています。取引が成立しなかった日は、前日の終値で代用しています。



見事に、それぞれに特徴が出ていますね。

事実:
「貸借銘柄」は、分売日が近づくにつれ、株価が急に値下がりし、分売日を境にじわじわ値上がりに転じる。
「信用銘柄」は、「貸借銘柄」ほどではないものの、分売日が近づくにつれ、株価が値下がりする。分売日当日も値下がりを起こすが、そこからじわじわ値上がりに転じる。
「信用外銘柄」は、分売日が近づくにつれ、なぜか株価が上昇し、分売日を境に急落。そのまま底這いする。

「貸借銘柄」「信用銘柄」が上昇傾向にあるのは、この1-4月期は、小型株の値上がりがあったため、分売による需給悪化も徐々にこなしつつ、上昇したのではないでしょうか。別の時期であれば、違う結果になるかもしれません。

「貸借銘柄」は、分売日前の値下がりを見る限り、分売日直前の「信用売り」が狙えるかもしれません。但し、いつ「分売日」になるのか当日まで特定できませんし、逆日歩がついている銘柄も散見されますので、少々難易度が高いように思えます。

同じく「貸借銘柄」について、分売を実施すると公表した日から「信用売り」を仕掛ける戦略も考えられます。しかしながら、公表日を全部調べきれなかったために追跡ができませんでした。

結論:
立会外分売では、貸借銘柄を狙うべし。「信用売り」方による買戻しも期待でき、利益額も大きい
立会外分売で、信用銘柄を狙っても良いが、利益額は期待しない方が良い。楽天証券のマーケットスピードの利用権獲得のような、ポイント稼ぎとして割り切って狙うべし。
立会外分売で、信用外銘柄は狙ってはいけない。応募するだけお金が逃げていく。長期保持が目的であれば、構わない。
立会外分売で、分売直前の貸借銘柄の「信用売り」を狙うのも良い。但し、逆日歩に気をつけるべし。少々難易度が高い。

とにかく、「貸借銘柄」だけにターゲットを絞り込むのが良いようです。

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編集後記(From the Editor)

今回の立会外分売の調査において、全面的に山下さんからの多大なるご協力、およびアドバイスを頂きました。どうもありがとうございます。

今回の戦略は、ものすごい単純な取引ですが、効果てきめんです。分売前の「信用売り」方の利益と、分売購入者の売却利益との、微妙なバランスの上に成り立っているためかとも思います。唯一難点は、単位株分しか買えないことがほとんどでしょうから、大きくポジションを形成できない所です。

もうすぐ、貸借銘柄の立会外分売では「アイフル(8515)」があります。適度に逆日歩がついているため、今回もいけそうな気がしますが、どうでしょうかね。

さてとお待ちかね?? 今回も立会外分売のデータを公開します。どこまでお役に立てるのか分かりませんが、各個別銘柄が、どんな値動きをしたのかを追うことが出来ます。よろしければ、ご利用下さい。

立会外分売の株価データ

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くれぐれも、自己責任の上で判断してくださいね!
GOOD LUCK!


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