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2005/4/24
産業再生機構銘柄は買いか?

産業再生機構については、あまりにも有名であるため、詳しい説明は不要かもしれませんが、ざっくりと言ってしまえば、国の債務保証付きの企業再建ファンドのようなものです。今年の3/31日までで新規受付は終了しています。今後3年以内に債券等の売却を目指し、その後は姿を消します。

受付期間中、41件の支援決定を行いました。そのうち8件は株式を上場している企業です。最近のニュース等の報道によって、産業再生機構が支援した銘柄は株価が上昇していると聞きます。それならば、比較的最近に支援を発表した「ダイエー」や「ミサワHD」なども上昇期待が持てるのではないでしょうか。

そこで今回は、産業再生機構が支援した上場企業の株価の推移を追うことによって、何か投資戦略が生み出せないかを研究したいと思います。

ここで、投資戦略を考える上で、ポイントとなる箇所は2つあります。それは、産業再生機構による「支援決定」の発表時と「債権の買取額確定」発表時です。

「支援決定」の発表は、産業再生機構が「企業再生できる」と判断した場合に行われます。従ってこの時点で「会社が消える」事態は回避されます。そして次に「債権の買取額確定」することによって、金融機関と産業再生機構が、どれだけ支援を行うのかが決まります。

以上のことから「支援決定」時点を中心とした株価の推移と、「債権の買取額確定」時点を中心とした株価の推移の両方見ることにしましょう。

それではまず、「支援決定」発表日を1とした場合の、株価の終値の推移を見てみましょう。市場の影響を排除するため、東証2部の「ダイア建設」とジャスダック銘柄の「タイホー工業」はJASDAQ平均で、それ以外はTOPIXで差分調整しています。



結構バラバラですが、発表日を境に下落している傾向にあります。これは恐らく、発表日による材料出尽くしによるものではないかと思います。発表日以前に産業再生機構に支援を依頼していることは報道されています。

この傾向は投資戦略としてはもう使うことができません。なぜなら3/31日で産業再生機構による新規受付が終了しているからです。

では次に「債権の買取額確定」発表日を1とした場合の、株価の終値の推移を見てみましょう。市場の影響を排除するため、東証2部の「ダイア建設」とジャスダック銘柄の「タイホー工業」はJASDAQ平均で、それ以外はTOPIXで差分調整しています。途中で線が止まっている銘柄は、現在進行中のものです。


これもまた結構バラバラなのですが、時期を区切ると、ある程度の傾向が見えてきます。まず最初の2ヶ月間(40営業日)は、「迷走期」ともいえる時期です。会社の新規体制が確立しようとする時期です。その後は「安定期」に入り、株価の変動が一定しています。そして約1年近くになると「変革期」といえる株価の上昇傾向が出る銘柄が現れます。

カネボウはかなり変わった株価の推移をしていますが、これは日経平均採用銘柄であり、1:10 の株式併合を行ったことにより、株価が急上昇したためです。なぜ急上昇するかについては、以前に「日経平均イベント攻略法」にてご紹介しましたので、ご覧下さい。

参考までに、発表から40営業日後を1とした場合のグラフも見てみましょう。ダイア建設の「いってこい」の時期がありますが、概して安定しています。



変革期に上昇傾向が明らかなのは「三井鉱山」と「金門製作所」です。「タイホー工業」も悪くありません。これら銘柄に共通な点は何かあるのでしょうか。

そこでいろいろと調べているとある共通点が見つかりました。それは債券放棄を除く総金融支援のうち、産業再生機構の出資(債券買取)割合です。

単純に考えると、産業再生機構による出資割合を多くすれば、それだけリスクを負うことになります。逆に少なければ、リスクを抑えていることになります。裏返した言い方をすれば、出資割合が多い場合は、それだけ再建に自信があり、少ない場合は、あまり自信がないとも言えるのではないでしょうか。

また、ちょっと意地悪な言い方をすれば、出資割合が多ければ、国をバックにした政治的な関与が行いやすいとも言えます。

コード 銘柄 市場 買取決定日 総支援額(百万) 再生機構分(百万) 割合
8858 ダイア建設 T2 2003/9/30 193998 20283 10.5%
3315 三井鉱山 T1 2003/12/10 289400 198300 68.5%
7724 金門製作所 T1 2004/3/30 40737 15872 39.0%
4953 タイホー工業 JQ 2004/7/5 10203 4271 41.9%
3102 カネボウ T1 2004/7/30 555654 110819 19.9%
8840 大京 T1 2004/11/26 514300 87100 16.9%
8263 ダイエー T1 2005/2/28 1020562 394336 38.6%
1722 ミサワHD T1 2005/3/25 314152 48480 15.4%

「三井鉱山」は60%を超えており、他より群を抜いています。その自信の程が伺えます。その他では「タイホー工業」、「金門製作所」、「ダイエー」が30%を超えています。その他は20%を下回っています。

事実:
産業再生機構による「支援決定」発表日を境に、株価は下落傾向となる。
「債権の買取額確定」発表日以降、「迷走期」、「安定期」、「変革期」の段階を経る。
産業再生機構によって出資割合が1/3(33%)を超える銘柄は、「変革期」以降に調子を上げる銘柄が多い。

以上のことから結論を導き出してみましょう。

結論:
安定期に入りつつある「大京」、「ダイエー」、「ミサワHD」については、ここしばらく安定した株価の推移となると思われる。
産業再生機構による出資割合が多く、まだ上昇していない「タイホー工業」はこれからに期待が持てそうである。ダイエーについても、今から4ヵ月後の夏の終わり近辺からの上昇に期待が持てそうである。

産業再生機構による出資額も、出資割合も多いダイエーは、国の威信をかけた、再生の失敗ができない銘柄と言ってよさそうです。

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編集後記(From the Editor)

今回の投資アイデアについては SILENCE さんから頂いたものです。どうもありがとうございます。

最近騒がしいカネボウについて、上場廃止となれば、確かに産業再生機構にとって痛手でしょう。しかしながら倒産するわけでもありませんし、力を注いだ三井鉱山が大きく育っているため、トータルで見たら「まだ大丈夫」といえるような気がします。

従って、産業再生機構としては、カネボウは「一旦、上場廃止でもやむなし」と判断しているのではと思っています。よって東証からは、条件付ですぐ復活可能な「上場廃止処分」が下されるあたりで手打ちと思うのですが、どうでしょうかね。

話が変わりますが、投資アイデアについて随時募集していますので、いつでもリクエストして下さいませ(メールでも掲示板でもどちらでも結構です)。全てを調査できるかは保証の限りではありませんので、その点はご理解下さいませ。

次回の投資戦略は、ゴールデンウィーク明けの5/15を予定しています。
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くれぐれも、自己責任の上で判断してくださいね!

GOOD LUCK!

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