2004/10/9
Jパワー(電源開発)は2度急上昇する!?(1)
2004/10/6日に、超大型新人のJパワー(9513)が株式新規上場(IPO)を果たしました。
この日の引け後に、MSCIは、MSCIスタンダードインデックス(Japan)に、10/21日から、
Jパワーを採用することを発表しました。
また、Jパワーは、東証一部直接上場ですので、11/9日から TOPIX に組み入れられることが確定しています。
以上のことから、
これから一ヶ月の間に2度、10/20日と11/8日にインデックス買いが発生することになります
。
このインデックス買い日に、Jパワーの株価は上昇するでしょうか?
その鍵を握るのは、採用銘柄の「時価総額」の大きさにあると考えています。
Jパワーの現在の時価総額は4,039億円と、8月にIPOを果たしたテレビ東京の5倍程度あります。時価総額が相対的に低いテレビ東京(735億円)は、TOPIX買い日は下落しましたが、時価総額が1兆円超の新生銀行のTOPIX買い日は、上昇しました。
テレビ東京はTOPIX買い日に下落
新生銀行はTOPIX買い日に上昇
また、最近では、9月の東証一部上昇銘柄のTOPIX買い日には、時価総額が一番大きいインボイスが大幅上昇し、日経平均採用銘柄入れ替えでは、株価が一番高いソフトバンクが一番の上昇を果たしました。
インボイスはTOPIX買い日に上昇
ソフトバンクは日経平均買い日に上昇
いずれの上昇銘柄も、先回りによる過剰買いと噂されていたのですが、それを見事撃破しました。
これらの現象に共通するのは、「
インデックスファンドの取り扱い金額が巨大な銘柄は上昇する
」ということです。何が何でも上昇させるように感じます。
では、Jパワーの時価総額 4,039億円は、「インデックスファンドの取り扱い金額が巨大」に該当するほどの大きさなのでしょうか。JパワーがMSCIスタンダードインデックスに採用される場合の、インデックス買いを考えて見ましょう。
でもちょっとその前に、そもそも、MSCIスタンダードインデックス とは何でしょうか?
ざっくりと言ってしまえば、国際標準の株価指数です。日本ではTOPIXや日経平均が一般的ですが、全世界的には、この MSCIスタンダードインデックスの方が一般的です。
詳しくは、「虎年の獅子座」さんのページをご覧下さい。
MSCI スタンダードインデックスの算出方法については、MSCIのホームページに英語で記載されています。日本語に要約されたものは、
意外にも財務省のページ
にあります。
要約すれば:
・浮動株調整による時価総額で算出される。
・浮動株比率は、戦略的株主持分(安定株主)か、外国人保有規制の少ない方を採用する
・浮動株比率が15%以上の銘柄は、5%刻みで切り上げた値を組み入れ率にする
Jパワーは、外国人保有規制はなく、全ての株式をIPO時に販売しましたので、戦略的株主持分は0%です。従って、時価総額がそのまま指数に組み入れられるはずです。
現在の MSCIスタンダードインデックスには、
全部で344銘柄が採用
されています。そのトップはトヨタです。ここで 4,039億円のJパワーを組み入れると、上位から133番目の 0.2% に相当します。
この 0.2% はどの程度の影響なのでしょうか。実は MSCI指数採用の先輩である新生銀行は、浮動株調整を行うと、3,608億円となり、Jパワーとほぼ似たような組み入れ率になります。
従って、新生銀行がMSCIに組み入れられた時の株価推移が、Jパワーにも起きると考えても良さそうです。
新生銀行のMSCIインデックス買い日は 2004/5/28日でした。このときの株価の推移は以下の通りです。
新生銀行はMSCI買い日に上昇
美しい上昇曲線ですね。こういった現象が Jパワーに起きるのではないかと想定しています(あまりにも MSCI買いが有名になると、素直な上昇ではなくなるでしょうが)。
因みにこの日は、新生銀行も合わせて、31銘柄の採用がありました(除外はなし)。このうち、現在も存続する29銘柄についても、当日の始値から終値がどれくらい上昇したのかを見てみます。
コード
銘柄
当日上昇率
MSCI時価
総額(億円)
出来高率
2768
双日ホールディングス
102.44%
1140
3.82%
2784
アルフレッサ ホールディングス
100.95%
1079
1.56%
4205
日本ゼオン
101.64%
1270
2.30%
4613
関西ペイント
102.69%
1327
1.93%
4689
ヤフー
105.45%
10939
2.61%
4723
グッドウィル・グループ
101.36%
994
1.67%
4755
楽天
104.53%
3920
4.73%
5406
神戸製鋼所
103.87%
3833
2.50%
5407
日新製鋼
102.29%
1663
2.12%
5701
日本軽金属
103.16%
1064
1.38%
5929
三和シヤッター工業
100.53%
968
2.15%
5947
リンナイ
101.20%
1218
1.66%
6305
日立建機
99.02%
1288
3.26%
6707
サンケン電気
102.11%
1456
1.98%
6723
NECエレクトロニクス
100.87%
2579
3.61%
6815
ユニデン
98.68%
1162
3.65%
7240
NOK
106.18%
3761
3.12%
7259
アイシン精機
102.50%
3322
2.27%
7453
良品計画
98.26%
1142
2.01%
7459
メディセオホールディングス
105.35%
1522
3.35%
8303
新生銀行
107.03%
4054
3.97%
8586
日立キャピタル
101.92%
1026
1.81%
8815
東急不動産
102.99%
1105
2.48%
8848
レオパレス21
104.76%
2210
2.21%
8953
日本リテールファンド投資法人投資証券
100.41%
1305
1.46%
9007
小田急電鉄
103.54%
3872
1.54%
9509
北海道電力
101.10%
3243
1.94%
9749
富士ソフトエービーシ
101.08%
1120
1.42%
9843
ニトリ
103.48%
1158
1.95%
平均
102.39%
2.43%
MSCI採用当時の浮動株調整後の時価総額が 3,500億円を超える銘柄については、もれなく 103.5%以上の上昇率が発生しました。一方で、100% を割った銘柄は、いずれも 1,300億円以下であることがわかります。
また、最終日の出来高は、平均で浮動株調整後の株数の 2.4% 程度と、TOPIX買いの4%(最近は3%程度に落ちてきました)より低いようです。
結論1:
・Jパワーは、MSCI買い日(10/20日)に上昇する。その上昇率は、当日の始値の103.5%程度と考えられる。
因みに、
MSCI Stand Index Series Methodology (Aug 04)
には、MSCIスタンダードインデックス採用の浮動株調整後の最低ラインが $750ミリオン(日本の場合) と記載があります。従って、
約825億円を超えると、採用候補になり、これ以下になると、除外されることになります
。
(11/17 追記
こちらに記載しました通り
、このガイドラインは、5月に行われる年に一度の入れ替え時期の話です。その他の 2, 8, 11月の四半期には、別のルールが適用されます)
このことから、浮動株調整後の時価総額が最低のカプコンを筆頭に、現在採用されているうちの下位20銘柄程度は、このラインを下回っています。次回の定期入れ替え時には、除外される公算が高いです。
また、上記の表から、
MSCIスタンダードインデックスには、浮動株調整後の時価総額が、1000億を超えると、ほぼ漏れなく採用される
ようです。次回のMSCI定期入れ替え時に覚えておくと良い数値ですね(それを調査するのは大変ですが...)。
さらに、
虎年の獅子座さんのページ
にも記載がありますが、浮動株調整後の時価総額が $3,000ミリオンを超えるIPOがあると、定期入れ替えを待たずに、採用発表(初日の取引日以降、3日目の取引日以前)と記載があります。Jパワーの採用発表は、この項目に該当しました。ということは、
大型IPOの場合、浮動株調整後の時価総額は要チェック
ですね。
話を元に戻して、これら29銘柄について、MSCI採用発表日から採用日(MSCI買い日の翌日)までの株価の推移を見てみます。
インデックス買いによく見られる「
M字カーブ
」がここでも発生しています。過去のサンプルが少ないため確実性に欠けますが、以下のように考えても良さそうです。
結論2:
・Jパワーを買うのであれば、衝動買い期間を避け、狼狽売り期間を狙うべし。ちょうど発表日の終値まで戻したあたりがベスト。
・MSCI買い日の始値から 103.5% あたりまでの上昇を狙って売るべし。
・MSCI買い日の翌日には下落するので、確実に売り切るべし。
くれぐれも、自己責任の上で判断してくださいね!
JパワーがTOPIX買い日に上昇するかについては、近日中に取り上げる予定です。
GOOD LUCK!
--
(10/20 追記)
j本日がMSCI買い日でした。まずは今日の一日チャートをみてみましょう。
予想では、始値より終値が上げて(陽線)終わるはずでしたが、残念ながら下げ(陰線)て終了しましまた。上記で紹介した、テレビ東京のTOPIX買い日に形がそっくりです。
いつもであれば、残り2分あたりから、買い手の仕掛けによる上昇に入るのですが、今日はいつもと違って売りばかり。時折、買い手は散発的な抵抗をしていましたが、あっと言う間に飲み込まれていました。売り手は機関投資家としか思えない万株単位。
個人投資家がMSCI買いを狙うならまだしも、
「機関投資家よ、お前もか!」
と叫んでしまいました。いくらなんでもそれでは上昇しようがない。そんな状態でも、良く下げ止まりました。恐らく機関投資家も、かなりの損失だったのではないでしょうか。
また、ここで、MSCI発表日から、今日までの株価の推移を見てみましょう。
MSCI の発表日からの「衝動買い」上昇時期には購入していけない
ことは、ここでも良く分かります。「狼狽売り」期間が短かったですが、ここで買うことができれば(難しいですが)、今日の損失も抑えることができました。
まあこれで、機関投資家は懲りて、TOIPIX買い日(11/8)には参加せず、最後に株価が上昇するかなと淡い期待を持ったりもするのですが、そこは狐と狸の化かし合いですね。もう少し効率良い方法を考える必要がありそうです。
GOOD LUCK!